著者
磯崎 篤則 大橋 たみえ 石津 恵津子 廣瀬 晃子 岩田 幸子 可児 瑞夫 可児 徳子 小出 雅彦 小澤 亨司 飯野 新太郎 徳本 龍弘 米永 哲朗 福井 正人 徳竹 宏保 佐久間 尚文 山田 小枝子 荒木 美穂 平井 直美 南方 千恵美 中嶋 さつき
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.89-98, 2004-11-20

我々は瑞穂市において1970年から歯科保健活動を開始し,活動の一環として1989年より成人式記念歯科健康診査を実施している.今回はこの結果を総体的に通観し,フッ化物洗口法を中心とした歯科保健プログラム終了後のう蝕予防効果の持続性を検討した.フッ化物洗口法を中心とした歯科保健プログラム実施群(以下F群)と歯科疾患実態調査(以下実調)との比較では,20歳のDMFT indexがF群男性4.81,女性6.04に対して,'87実調値は11.06, 10.33を示し,明らかにF群で低く,歯科保健プログラム終了後のう蝕予防効果の持続性を認めた。F群と歯学部学生との比較では,う蝕経験のない者(caries-free), DMF者率,DMFT index, DMFS index,歯種別DMFT率および経済効果のいずれにおいても明らかなう蝕予防効果の持続性を認めた。以上より小学校においてフッ化物洗口法を中心とした歯科保健プログラムを実施することにより,終了8年後においても高いう蝕予防効果の持続性を認めた.また,低濃度(100〜500ppm)のフッ化物溶液を用いた洗口法(週5回法)を小学校において実施することは有効であると考えられる.
著者
廣瀬 晃子 可児 徳子 新谷 裕久 大橋 たみえ 石津 恵津子 福井 正人 可児 瑞夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.274-280, 1997-07-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
18

フッ化物歯面塗布術式のうち,塗布後の洗口・飲食禁止時間を再検討する目的で,in situモデルを用いてAPF溶液(9,000 ppm F^-,pH3.6)4分作用アパタイトペレットの口腔内浸漬実験を行った。その結果,8時間浸漬後のペレット中の残留フッ素量は,すべての群でAPF溶液作用直後群の半量に減少していた。浸漬群間では洗口開始時間が早かった0分群,10分群は他の群に比較して残留フッ素量は少なかったが,一般にいわれている洗口・飲食禁止時間の30分群を基準に残留フッ素量を比較すると,0分群でも表層から内層に向かって一様に30分群の80%の割合でフッ素が確認された。各浸漬群の酸抵抗性試験では,すべての群で対照群に比べて耐酸性獲得が認められた。また脱灰時間が長くなると,洗口開始時間が早い群は遅い群に比べてカルシウム溶出が多く認められたが,それらの群もAPF作用直後群との間には差はみられなかった。以上のことから30分間の洗口・飲食禁止時間短縮の可能性が示唆された。
著者
桑原 洋子 新谷 裕久 小澤 亨司 上坂 弘文 可児 瑞夫 可児 徳子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.243-256, 1995
参考文献数
25
被引用文献数
8

病院歯科各診療室の気菌濃度の分布状態を把握することを目的として,1990年より2年間,朝日大学歯学部附属病院の中規模診療室(矯正歯科,小児歯科)と大規模診療室(保存科,補綴科)において,5ヵ所の測定点でSY法と落下法の併用により気菌濃度の測定を行った。分析は,測定点別気菌濃度分布の経時的推移と差異について二元配置分散分析法により検討し,さらにクラスター分析により気菌濃度の違いによる測定点の分類を行った。また,在室人員の動向と気菌濃度の分布との関係についても検討を行い,次のような結果を得た。1. 歯科診療室内の気菌濃度は,SY法0.02〜1.47CFU/l,落下法0.08〜6.83CFUであり,測定点別気菌濃度には季節変動が認められた。2. 二元配置分散分析により,気菌濃度に差の認められる測定点は,いずれの診療室にも認められたため,気菌濃度は複数カ所測定の必要性が示された。3. クラスクー分析により,気菌濃度の分布が把握できることが示され,気菌濃度測定を継続実施する場合の測定点の選択にクラスター分析が有効であることが示唆された。4.歯科診療室の在室人員の動向は,気菌濃度の分布と高い相関関係(p<0.01)が認められ,歯科用ユニットの使用分布を数量化することにより把握が可能であることが示された。
著者
廣瀬 晃子 可児 徳子 新谷 裕久 大橋 たみえ 石津 恵津子 福井 正人 可児 瑞夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.274-280, 1997
参考文献数
18
被引用文献数
1

フッ化物歯面塗布術式のうち,塗布後の洗口・飲食禁止時間を再検討する目的で,in situモデルを用いてAPF溶液(9,000 ppm F^-,pH3.6)4分作用アパタイトペレットの口腔内浸漬実験を行った。その結果,8時間浸漬後のペレット中の残留フッ素量は,すべての群でAPF溶液作用直後群の半量に減少していた。浸漬群間では洗口開始時間が早かった0分群,10分群は他の群に比較して残留フッ素量は少なかったが,一般にいわれている洗口・飲食禁止時間の30分群を基準に残留フッ素量を比較すると,0分群でも表層から内層に向かって一様に30分群の80%の割合でフッ素が確認された。各浸漬群の酸抵抗性試験では,すべての群で対照群に比べて耐酸性獲得が認められた。また脱灰時間が長くなると,洗口開始時間が早い群は遅い群に比べてカルシウム溶出が多く認められたが,それらの群もAPF作用直後群との間には差はみられなかった。以上のことから30分間の洗口・飲食禁止時間短縮の可能性が示唆された。
著者
石津 恵津子 大橋 たみえ 廣瀬 晃子 岩田 幸子 横井 憲二 横田 千鶴 可児 徳子 可児 瑞夫 磯崎 篤則
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.82-88, 2004-11-20
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では,100ppmF配合歯磨剤を給食後のブラッシングに用いた場合の効果を,フッ化物を配合していない歯磨剤を用いた場合,および効果が確立されているフッ化物洗口法を行った場合と比較した.学校歯科保健活動として,給食後にフッ化物濃度100ppmフッ化ナトリウム配合歯磨剤を用いてブラッシングを行った児童とフッ化物を配合していない歯磨剤を用いてブラッシングを行った児童,およびフッ化物濃度100ppmフッ化ナトリウム溶液を用いてフッ化物洗口を行った児童を対象に,1年生から5年生までの4年間,追跡できた者の第一大臼歯のう蝕発生について比較した.う蝕発生抑制効果は,Cox比例ハザードモデルを用いた生存分析によって評価した.その結果,F歯磨群の累積生存率は,上顎右側以外は対照群に比較して高く,F洗口群の半分程度であった.ハザード比は1以下を示したが,95%CIに1が含まれており,統計的有意性はなかった.しかし,本研究では自宅でのフッ化物配合歯磨剤の使用を規制しておらず,今回のF歯磨群のう蝕発生抑制効果は,学校給食後のブラッシングにフッ化物配合歯磨剤を使用する場合に限定される.よって,この結果は学校で給食後に歯磨きをする場合,フッ化物無配合の歯磨剤を使用するよりもフッ化物配合歯磨剤を使用するほうが,う蝕予防により効果的である可能性を示すものである.
著者
可児 瑞夫 可児 徳子 富松 早苗 新海 研志 山村 利貞
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.281-285, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

フッ化物洗口法による洗口時に口腔内に残留するフッ素量を調べることにより, フッ化物洗口法の安全性, う蝕予防効果の期待, さらに洗口方法そのものの再検討を目的として本研究を行った。某小学校児童80名 (3年生, 男子44名, 女子36名) を対象とし, 正確に秤取したフッ化物洗口液 (500 ppm F-, pH5.0, リン酸酸性フッ化ソーダ溶液) 10mlを用いて30秒間洗口をさせ, 次に蒸留水10mlで10秒間の洗口を2回行わせた。洗口カップに残したフッ素量, 吐き出した洗口液中のフッ素量および水による洗口で吐き出されたフッ素量をそれぞれ定量した。定量にはオリオン社製イオンメータ (801型) およびフッ素イオン電極を用いた。その結果, 男子では与えたフッ素量の93.79%, 女子では91.52%が洗口時に吐き出されることが認められた。すなわち, 現行のフッ化物洗口法による口腔内残留フッ素量は男子では0.31±0.12mg (6.21%), 女子では0.42±0.12mg (8.48%) であることが示された。児童80名中81.3%に相当する65名は残留量が0.5mg以下の値を示した。また, フッ化物洗口後に水で口すすぎを行うと残留フッ素量は男子で0.16±0.12mg (3.13%), 女子では0.27±0.12mg (5.46%) となることが示された。以上のことから, 現在行っているフッ化物洗口法における洗口液のフッ素濃度および液量は洗口方法を正しく実施すれば全く安全であり, フッ化物洗口法は効果的なう蝕予防法であることが再確認された。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.38-45, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
4

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行い, これら2種のフッ素濃度の異なるフッ化物についてX線回折法により比較検討を行った。フッ化物洗口液としてリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フッ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。X線回折には島津製自動記録式X線回折装置VD-1A型を用い, 結晶性の変化と反応生成物の同定を行った。結晶性については半価幅の測定からScherrerの式によ9求められる値をパラメターとし, 反応生成物についてはASTM cardによる同定, peak shiftおよび1ine profileの変化の観察ならびにHallの解析法に準ずるsinθとβcosθの関係図から検討を加えた。その結果, 洗口液作用群では経時的に結晶性が向上し, かなり結晶性の高いFluorapatiteが多量に生成することが認められた。しかし, CaF2の回折線は検出されなかった。一方, 塗布液作用群では初期の結晶性向上と結晶性の低い多量のCaF2の生成がみられ, 水洗をくり返すことによりこのCaF2は流出することが認められた。以上のことからエナメル質とフッ化物の反応では, フッ素濃度のみでなく作用方法も反応生成物に影響を与えることが明らかとなった。すなわち, フッ化物洗口法のように低濃度のフッ化物を長期間繰返し適用する方法はエナメル質を脱灰することなく, より結晶性の高いFluorapatiteを生成し, エナメル質apatiteに好結果をもたらすことが示唆された。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.93-99, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行った。フッ化物洗口液としてはリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フツ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。エナメル質粉末に取込まれたフッ素量と, 浸漬蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量の分析を行い, フッ素濃度の異なるこれら2種のフッ化物について比較検討を行った。フッ化物洗口液作用群では第1回の洗口液作用によってエナメル質粉末のフッ素量は約2000ppmを示し, 以後経時的に増加し, 8週では1.1%に達した。フッ化物塗布液作用群では作用直後のエナメル質粉末は12.76%のフッ素量を示し, 以後蒸留水交換を行うことにより流出し, 8週後には6000ppmとなった。蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量から算出したCa/Fモル比, Ca/Pモル比によると, 洗口群ではCaF2生成はごくわずかであり, 比較的安定した形でフッ化物が取込まれ, 経時的にエナメル質の溶解性の減少することが認められた。一方, 塗布群では多量のCaF2の生成と流出がみられたが, 取込まれたフッ素の一部は安定した形で残留することが示唆された。
著者
可児 瑞夫 可児 徳子 高橋 美次 磯崎 篤則 飯野 新太郎
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.150-159, 1980 (Released:2010-03-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

フッ素含有洗口液によるう蝕予防法の基礎的研究の一環として, 現在臨床で行われているフッ化物洗口法に準じてintact enamelを材料としてin vitroで実験を行い, X線マイクロアナライザによるエナメル質中のフッ素の分析ならびに微小焦点X線回折法によるX線緒晶学的検索を行った。新鮮抜去永久歯を材料とし, フッ素含有洗口液はリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (pH5.0, フッ棄濃度500ppm) を川いた。X線マイクロアナライザ分析は島津製 (EMX-SM型) を用い, フッ棄, カルシウムならびにリンの線分析を行った。X線結晶学的には微小焦点X線発生装置 (Microflex) および細束X線ヵメラ (Microfocus Laue Camera) を用いてエナメル質の微小部分のX線回折を行った。得られた回折像をMicrophotometer (MP-3型) にてチャート化し, 反応生成物の同定と結晶性の評価を行った。軸方向別の結晶性はhydroxyapatiteの (310), (002) 回折線の半価幅の実測値で表現した。その結果, X線マイクロアナライザによる線分析ではフッ素含有洗口液作用により, エナメル質表層のフッ素量の増加が認められた。内層へのフッ素の浸透も経時的に増加した。エナメル質平滑面のみならず裂溝部にもフッ素取込みのあることが示され, 特に表層下脱灰のある部分では非常に高い濃度のフッ素が認められた (Fig. 2)。X線回折法による検討の結果ではフッ素含有洗口液の影響でエナメル質表層の結晶性向上が認められた。反応生成物は検出されなかった。内層では軸方向の結晶性向上が示唆された (Fig. 3, 4, 5)。
著者
新谷 裕久 桑原 洋子 小澤 亨司 上坂 弘文 可児 瑞夫 可児 徳子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.428-439, 1995-07-30
被引用文献数
7

病院歯科診療室の気菌濃度の継続管理のために簡便で有用なKochの落下法について再検討することを目的として,朝日大学歯学部附属病院の5歯科診療室において3年間(1988,1990,1991) ,気候,環境ならびに気菌濃度の測定をSY式pin hole sampler 法(SY法)とKochの落下法により行った。分析点は次のとおりである。1:気候因子,環境因子と落下細菌濃度(落下法)因子による浮遊細菌濃度(SY法)の推定は重回帰式分析により行った。さらに,落下細菌濃度を加えることによる重回帰式の推定精度への影響について検討を行った。2:落下法とSY法との相関関係を検討し,SY法の浮遊細菌濃度の清浄閾値(0.2CFUμ)に相当する落下細菌濃度を予測区間推定した。次のような成績が得られた。1.重回帰分析による浮遊細菌濃度の推定は,落下細菌濃度因子を加えることにより,重回帰式の推定精度が向上(p<0.01)することが示された。落下法は空気汚染の簡便なモニタリングとして活用できることが示された。2.落下細菌濃度と浮遊細菌濃度は,r = 0.439〜0.606の高い相関関係(p<0.01)であった。浮遊細菌濃度の清浄闇値に相当する落下細菌濃度の予測値は0.755〜1.333CFUであり,信頼度95%の区間推定上限値は2.161〜4.116CFUであった。このことから,落下細菌濃度の空気清浄関値は約4.1CFUであることが示され,落下法は空気汚染の簡便なスクリーニングが可能であることが示された。以上の結果,継続的な気前濃度管理のために落下法の実施は有用であることが確認された。
著者
可児 徳子 新谷 裕久 上坂 弘文 小澤 亨司 廣瀬 晃子 可児 瑞夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.707-722, 1996-10-30
被引用文献数
15

病院歯科診療室の粉塵の粒度分布の把握と,粉塵濃度と気菌濃度ならびに気候環境因子との関連性を検討する目的で,4診療室と屋外において2年間にわたり測定を行った。分析項目は1.診療室の粉塵濃度の経時的推移と粒度分布および屋外粉塵との関係,2.粒度別粉塵濃度と気菌濃度の相関分析,3.粒度別粉塵と気候環境因子の偏相関分析,4.重回帰式による気菌濃度推定における粉塵因子の影響についてである。その結果,次のような成績が得られた。1.診療室の総粉塵濃度は屋外よりもやや高く,季節変動は屋外と類似し,時間変動は診療時間中に高くなる傾向が認められた。診療室と屋外の粉塵の粒度別割合は,いずれも0,3〜1.0μmの比較的小さな粒度範囲で98%以上を占めたが,5.0μm以上は診療室で高い割合を示した。2.浮遊細菌は2.0μm未満,落下細菌は2.0μm以上の粉塵と相関性の高い傾向を示した。3.粉塵濃度とエアコン稼働因子は,広い粒度範囲の粉塵と高い負の相関関係が認められ,粉塵対策におけるエアコン稼働の有用性が示唆された。4.気候環境因子に粉塵因子を加えた重回帰式による気菌濃度推定は,高い精度が得られ,粉塵因子は気菌濃度の即時推定において精度を向上させるのに有用であることが示された。
著者
米永 哲朗 新谷 裕久 小澤 亨司 福井 正人 徳竹 宏保 可児 徳子 可児 瑞夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.325-334, 1998-07-30
被引用文献数
1

病院内での快適な環境を構築するための改善の指針を得ることを目的として,外来患者に対し病院環境衛生に関するアンケート調査(診療室,待合室)を実施すると同時に,待合室の環境測定を行った。分析項目は,1.アンケート調査による快適性の検討,2.アンケート調査結果と環境測定値との関連性についてである。次のような結果が得られた。1.病院の環境衛生に不満を感じているものは少なく,総合評価で快適と感じているものの割合は診療室30.4%,待合室25.5%であった。快適と感じているものの割合の経時的推移は,月・時間により14.6〜38.2%の変動が認められ,7月,3月の午前に高く,5〜9月の午後に低いことが示された。2.数量化II類による快適性の判別的中率は高い精度(診療室93.3%,待合室91.6%)であり,快適性を弁別する因子は,診療室では高いほうから順に衛生状態,明るさ,騒音であり,待合室では明るさ,衛生状態,騒音の順位であった。3.待合室における環境測定値とアンケート回答には,温度,湿度,騒音ならびに明るさの因子については高い関連性が認められた。また患者の感覚に基づく快適な環境の推定値は,年間を通じて気温21.2〜25.0℃,気湿33.2〜41.5%,騒音58.9dB以下,照度750〜937 Lxであることが示唆された。4.待合室の快適性の判別分析による簡便なモニタリングに,照度ならびに騒音の環境測定値を用いることの有用性が示唆された。以上の結果,快適性の経時的推移,弁別因子ならびに数値目標が示され,より快適な病院環境を構築するうえでの指針が得られた。