- 著者
-
村元 麻衣
- 出版者
- 名古屋市立大学
- 雑誌
- 人間文化研究 (ISSN:13480308)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.151-170, 2006-12-24
本論文でほまず1章で、日本語とドイツ語におけるオノマトペの定義を検討した上で、オノマトペの定義をさだめる。2章では、ドイツ語の3つの辞典上でのオノマトペの記述を比較考察した後、ドイツ語のオノマトペの動詞・名詞・副詞といった品詞による分類と、子音に着目した音韻形態の分析を行う。さらに音と意味との関係を考察し、ドイツ語のオノマトペの特徴を探る。3章では、日本の文学作品のオノマトペとそのドイツ語翻訳版との比較、ドイツの文学作品のオノマトペとその日本語翻訳版との比較をし、それぞれの現れ方からドイツ語のオノマトペの表現法と特徴を考察する。4章では、ドイツ語のオノマトペの変遷と発展にふれ、この研究のまとめとした。日本語のオノマトペは擬音語・擬態語を指すのに対し、ドイツ語のオノマトペは主に擬音語に焦点が当てられている。ただし、例えば日本語のオノマトペ「バタバタ」のように、鳥が羽ばたく際に出る音としての「バタバタ」と、鳥が羽ばたく様を描写した「バタバタ」のような、両者にまたがるものもあり、ドイツ語のオノマトペも同様に擬音語と擬態語との区別がつきにくいものがある。また日本語のオノマトペは副詞が多く、「バタバタ」のように同じ音が二回あるいは三回重複した形で構成されているものが多いため見分けがつきやすいが、ドイツ語のオノマトペは動詞が多く、ある音あるいは様態を模写する働きの擬音・擬態の部分、つまり「音の響き」が、「quatschen(ベチャベチャしゃべる)」のように語全体に溶け込み一語となっているため、オノマトペとしての区別が付きにくいのである。本論文ではこの相違を、それぞれの「オノマトペ性」とし、分析を試みた。