著者
馬渕 浩司 瀬能 宏 武島 弘彦 中井 克樹 西田 睦
出版者
日本魚學振興會
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-12, 2010-04-26

琵琶湖に生息するコイの中には、ユーラシア大陸のコイとはミトコンドリア(mt)DNAの塩基配列で明瞭に異なる個体が存在することが、2005年に明らかにされた。これらの個体が保有するmtDNAは、当初は琵琶湖固有のハプロタイプと考えられたが、その後の研究で、近縁あるいは同じハプロタイプが国内の他の水域からも発見され、現在では、日本在来のハプロタイプ(在来型ハプロタイプ)の一つであると考えられている。在来型ハプロタイプの存在は、「日本のコイはすべて中国から移殖したものである」としたJordan and Fowlerへの強力な反証であり、古琵琶湖層からの咽頭歯化石の発見や、縄文遺跡からの咽頭歯の出土と併せて、日本には有史以前から在来のコイが分布し、現在もそれに由来するコイが生息することの明白な証拠となっている。本研究では、琵琶湖内における在来系統の分布状況を知る第一歩として、湖内の各所から採集された750個体以上のコイについてmtDNAの型判別を行い、各生息場所における在来型、導入型ハプロタイプの出現頻度を調べた。また、2004年に猛威をふるったKHVの在来系統への影響を評価するため、蔓延時に湖岸で斃死していた100個体を超えるコイのmtDNA型判別も行い、上の結果と比較した。

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