- 著者
-
浅井 幸子
玉城 久美子
望月 一枝
- 出版者
- 和光大学現代人間学部
- 雑誌
- 和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.21-36, 2011-03
本稿の主題は、戦後日本の小中学校における女性教師の脱性別化の過程を解明し、その歴史的な意味を考察することにある。女性教師は1950年代まで女性的な特質と役割を付与されていたが、1970年代になるとそのような性別特性論に基づく性別役割分担は否定されるようになる。本稿では1960年代後半から70年代前半の「女教師問題」の議論に着目してその過程を記述し、母性が強調されなくなったこと、「婦人教師」を論じる、すなわち女性教師をその女性性において問題化することが躊躇されるようになったことを明らかにした。その女性教師の脱性別化は、一面では性差別の解消ではあるものの、もう一面では依然として存在する教師の性別役割分担を問う言葉の喪失である。また男性教師を標準とする「教師」への同一化である、すなわち女性教師の実質的な男性化であったという点でも問題をはらんでいる。