著者
黒田 友紀 杉山 二季 望月 一枝 玉城 久美子 船山 万里子 浅井 幸子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.317-325, 2010-03-10

The purpose of this paper is to examine how gender imbalance is constructed and what gender issues occur in teacher allocation at elementary schools. We conducted an interview survey to 10 male teachers in metropolitan areas to examine the actual conditions of male teacher allocation in elementary schools and analyze how gender imbalance occurs. Female teachers are prone to be allocated to lower grades and male teachers aren't much even if they want to. This imbalance results from gender biased consideration for female teachers, who carry out responsibility for care of their family and young children. Work of upper grades is so tough and hard that female teachers tend to avoid taking charge of upper grades. And then male teachers are often taken their workplaces in upper grades and they do busy and hard work. Male teachers are also expected masculine and controlling role to student behavior. Additionally work of upper grades is in a spotlight or central parts at schools, on the other hands, work of lower grades is regarded as shadow work. This gender imbalance works as sexual discrimination in elementary schools. Some experiences of male teachers suggest possibilities to change gender imbalance in teacher allocation. Changing balance of disproportionate work between lower grades and upper grades and sharing hard work will improve institution and structure in schools.
著者
浅井 幸子 玉城 久美子 望月 一枝
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-36, 2011-03

本稿の主題は、戦後日本の小中学校における女性教師の脱性別化の過程を解明し、その歴史的な意味を考察することにある。女性教師は1950年代まで女性的な特質と役割を付与されていたが、1970年代になるとそのような性別特性論に基づく性別役割分担は否定されるようになる。本稿では1960年代後半から70年代前半の「女教師問題」の議論に着目してその過程を記述し、母性が強調されなくなったこと、「婦人教師」を論じる、すなわち女性教師をその女性性において問題化することが躊躇されるようになったことを明らかにした。その女性教師の脱性別化は、一面では性差別の解消ではあるものの、もう一面では依然として存在する教師の性別役割分担を問う言葉の喪失である。また男性教師を標準とする「教師」への同一化である、すなわち女性教師の実質的な男性化であったという点でも問題をはらんでいる。
著者
石井 照久 菊池 友希子 立花 希一 望月 一枝
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教養基礎教育研究年報 (ISSN:13449311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-54, 2012-03-26
被引用文献数
3

日本語原作のマンガや文芸作品などでは.登場人物の性別が明かされずに物語が進み,途中で,性別が明かされることがある。この手法は,読み手の想像をかきたて物語を面白くする効果がある。それではそういった日本語原作のマンガや文芸作品が他の言語に翻訳された場合はどうなるのだろうか?英語や独語では,主語を省略することがほとんど不可能であるし性別が明白な代名詞を用いる。そこで本研究では,登場人物の本当の性別を伏せて物語が進む日本語作品が英語や独語に翻訳された場合に,どのように表現されたり,工夫されたりしているのかを解析した。その結果,日本語原作の直訳に近い翻訳例,逆に原作に忠実でない意訳された翻訳例が見出された。さらに原作よりも早く性別を明かしてしまっている翻訳例も見つかった。これらの翻訳は,翻訳者が日本人かどうかによって異なるようであった。本報告は,秋田大学教養基礎教育科目「総合ゼミ」の講座C「文化にみられる性」において、平成23年度I期の授業で展開された成果報告でもある。
著者
杉山 二季 黒田 友紀 望月 一枝 浅井 幸子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.281-299, 2005-03-10

The purpose of this paper is to examine how women elementary and junior high school principals construct their careers. We conducted an interview survey to 12 women teachers in 3 prefectures to consider their careers. We analyze their careers focusing on structural factors that determine personal experiences. Main findings are as follows. 1) Most women principals didn't depict clearly defined career plan. In promotion for principal or vice-principal, their principals played an important role as gatekeeper in the process. 2) In their promotion, some women principals changed their work place from junior high schools to elementary school because of occupation by male principals at junior high school. 3) Women principals carry out responsibility both of occupational and of family by asking their parents (in law) for care of their family and young children.
著者
石井 照久 川邉 聡子 今野 大樹 松本 勇紀 目黒 耕平 立花 希一 望月 一枝 ISHII Teruhisa KAWABE Satoko KONNO Hiroki MATSUMOTO Yuuki MEGURO Kouhei TACHIBANA Kiichi MOCHIZUKI Kazue
出版者
秋田大学教育推進総合センター
雑誌
秋田大学教養基礎教育研究年報 (ISSN:13449311)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-12, 2011-03-31

我々の身近に存在する「マンガ」を秋田大学生がどのように読んでいるのかをアンケート調査した。その結果,男子学生はほとんど少女マンガを読まないが,女子学生のほとんどが少年マンガを読んでいることが判明した。すなわちマンガ文化の接し方にジェンエンダーが存在することが判明した。その要因を考察するとともに,男子学生・女子学生それぞれに好かれているマンガの特徴色作品を解析することによって明らかにした。本報告は,秋田大学教養基礎教育科目「総合ゼミ」の講座EI文化にみられる性」において,平成22年度I期の授業で展開された成果報告でもある。
著者
浅井 幸子 黒田 友紀 金田 裕子 北田 佳子 柴田 万里子 申 智媛 玉城 久美子 望月 一枝
出版者
日本教師教育学会
雑誌
日本教師教育学会年報 (ISSN:13437186)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.110-121, 2018-09-29 (Released:2020-07-06)
参考文献数
33

This study introduces a case of school reform in a public elementary school, hereon named “A-school”, in the city of O, Japan, in which all teachers engaged in the challenge to share their responsibility for all students in the school. The study analyzes how the teacher-community at A-school developed through the school reform. It is noteworthy that the teacher-community at A-school was uniquely developed by teachers’ sharing about their “inabilities” rather than “abilities”. The study, then, focuses on this unique sharing culture to analyze how individual teachers in A-school had experienced their school reform by using a narrative inquiry approach. Considering A-school as a narrative community, we interviewed several teachers and school staff, and analyzed their narratives from three viewpoints; “personal story”, “community narrative”, and “dominant cultural narrative”. As a result, we found out the following: (1) The narrative based on the dominant culture in ordinary elementary schools tends to emphasize individual classroom teacher’s responsibility for students in his/her own class. Such narrative makes it difficult for ordinary elementary schools to achieve the goal “All teachers should be responsible for all students in a school.” (2) Counter to the dominant narrative emphasizing individual responsibility, teachers in A-school positively disclosed their “inability” to share their responsibility for their students. The principal took the initiative to disclose her own “inabilities”, which then provided veteran teachers in A-school a safety to share their own “inabilities”. Those principal’s and veterans’ narratives then encouraged young teachers in A-school to also disclose their “inabilities”. (3) The teachers in A-school realized that being aware of one’s own “inability” and asking for others’ help do not mean giving up one’s own responsibility. Instead, the teachers found that they pursued their own responsibility through continuous questioning of their “abilities” needed for their students’ education.
著者
石井 照久 菊池 友希子 立花 希一 望月 一枝 ISHII Teruhisa KIKUCHI Yukiko TACHIBANA Kiichi MOCHIZUKI Kazue
出版者
秋田大学教育推進総合センター
雑誌
秋田大学教養基礎教育研究年報 (ISSN:13449311)
巻号頁・発行日
no.14, pp.47-54, 2012-03-26

日本語原作のマンガや文芸作品などでは.登場人物の性別が明かされずに物語が進み,途中で,性別が明かされることがある。この手法は,読み手の想像をかきたて物語を面白くする効果がある。それではそういった日本語原作のマンガや文芸作品が他の言語に翻訳された場合はどうなるのだろうか?英語や独語では,主語を省略することがほとんど不可能であるし性別が明白な代名詞を用いる。そこで本研究では,登場人物の本当の性別を伏せて物語が進む日本語作品が英語や独語に翻訳された場合に,どのように表現されたり,工夫されたりしているのかを解析した。その結果,日本語原作の直訳に近い翻訳例,逆に原作に忠実でない意訳された翻訳例が見出された。さらに原作よりも早く性別を明かしてしまっている翻訳例も見つかった。これらの翻訳は,翻訳者が日本人かどうかによって異なるようであった。本報告は,秋田大学教養基礎教育科目「総合ゼミ」の講座C「文化にみられる性」において、平成23年度I期の授業で展開された成果報告でもある。
著者
西岡 里奈 阿部 睦子 金子 京子 倉持 清美 妹尾 理子 望月 一枝
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

<背景と目的><br> 学習指導要領の改訂により、平成29年3月に告示された小学校学習指導要領から、小学校家庭科でも「A 家族・家庭生活(3)家族や地域の人々との関わり」の中で幼児又は低学年の児童との関わりができるよう配慮することが求められている。中学校や高等学校では、幼児や小学校低学年児との関わりは行われている。しかし、小学校では特別活動などで異学年との交流は行われているものの、家庭科の授業では少ない。そこで、本研究では六年生と一年生でスイートポテトを作る交流調理実習を行うことで、新たに小学校低学年児との関わりを取り入れた授業を開発し、小学校家庭科で異なる世代の人々との関わりを学ぶことの効果を検討する。<br><br><br><br><方法><br><br>①対象: 東京都内国立小学校六年生全3クラスのうち、1クラス34名を対象とした。このクラスについて全7時間(一年生との交流は2時間)の授業を開発した。<br><br>②ナラティブ分析:交流調理実習後に六年生が交流を思い出してナラティブを作成した。書かせる際には「文章で書くこと。時間の流れに合わせて、始めから終わりまで書くこと。そのとき自分が思ったことや、相手の様子・思っていることを書くこと。」とした。 <br><br> 一クラス分のナラティブを6人で読みあい、児童によるナラティブの特徴と、授業の効果をカテゴリーのまとまりとして確認した。カテゴリーは、中学校で小学校低学年児と交流を行った論文(倉持ら,2009)を用い、他のカテゴリーが抽出できる場合は、その点について話し合った。<br><br><br><br><開発した授業><br><br> 六年生と一年生の交流を取り入れた学習として、以下のような授業を開発した。<br><br>第一次:一年生の特徴を考えると同時に、自分の成長を実感できる授業を設定した。一年生との縦割り班(特別活動の異学年交流)やお世話での経験をふまえて、自分たちと一年生の違いを考えると同時に、自分が一年生だった頃の写真を見て自分の成長を実感する場を設けた。<br><br>第二次:六年生だけで試し調理としてスイートポテト作りを行った。自分たちで試し調理を行うことで、一年生と一緒に行うときに気をつけることやどのように関わっていったらよいかを実際に調理を通して考えられるようにした。(2時間)<br><br>第三次:試し調理をふまえて、一年生を楽しませるために交流調理実習を行うときのポイントや関わり方を考える場を設定した。<br><br>第四次:一年生と一緒にスイートポテト作りを行った。(2時間)<br><br>第五次:ナラティブを記入し、一年生と交流調理実習をして、一年生の様子で気付いた点等や自分の関わり方についてまとめを行った。<br><br><br><br><授業の効果><br><br> 中学生のカテゴリーに当てはめて、六年生の記述を分類した結果、「問題解決」に関わる内容として、「接し方」「調理安全」「前次の学び」に細分化することができた。「接し方」とは、一年生との関わり方に言及したもので「待ち時間にあきてしまわないように、たくさん話しかけるようにした」などで、「調理安全」とは調理の際の安全に関わるもので、「前時の学び」とは「前回の授業で、一年生に楽しんでもらうために、調理器具の名前クイズをするとあったので、実際にやってみました」など既習事項を活用したものである。このことから、六年生が一年生との交流を通して様々な問題に直面したが、一年生に楽しんでもらうために自分達で課題に対して向き合い、解決していったことが分かった。