- 著者
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芳賀 博
柴田 博
松崎 俊久
安村 誠司
- 出版者
- The Japanese Society of Health and Human Ecology
- 雑誌
- 民族衛生 (ISSN:03689395)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.5, pp.217-233, 1988
- 被引用文献数
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本研究は,初回調査時に比較的健常であった地域在宅老人の10年間の追跡的調査に基づいている.研究の目的は,加齢に伴うADLの変化を明らかにし,さらには,ADLの維持に関わる要因を初回調査時の身体,心理,社会的側面から検索することである. 対象は,昭和51年の初回調査に応じた69~71歳の東京都小金井市在住の男女422名である.このうち,10年後の追跡調査に応じた者は,250名であり,死亡者は102名であった. 得られた主な結果は次のとおりである. 1.10年間に死亡した者は,継続調査群に比べて初回調査時のADL総合点は低い傾向にあった. 2.10年後のADLは,歩行,食事,排泄,入浴,着脱衣のいずれにおいても低下を示し,とくに歩行の低下が最も大きかった. 3.10年後に5項目全てが「半介助」あるいは「介助」に属するいわゆる"寝たきり老人"は,男の3.7%,女の2.1%のみであった.このうち,脳卒中及び骨・関節疾患を有する者を除くと"寝たきり老人"はさらに少なかった(男2.3%,女0.8%). 4.ADLの低下は,女より男に大きい傾向であったが,その差は有意ではなかった. 5.10年後のいわゆる「老化」にともなうADL低下に有意に関連する身体的要因は,高血圧の既往「あり」(男),心電図所見「異常」(男),「肥満」(女)であった. 6.心理的要因では,ベントソ正確数が「低い」(男),身体についての悩み「あり」(女)で有意なADLの低下を認めた. 7.社会的要因では,社会活動性が「低い」ほど有意なADLの低下を示した(男女). 以上の日常生活動作能力の変化に関する予知因子の検討の結果,男女とも社会活動性が10年後のADLの転帰にもっとも関係していた.このことから,社会活動性を維持し,あるいは高めることが日常生活動作能力の保持に役立ち,余命の延長にもつながることが推測された.