著者
柴田 博仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.
著者
熊谷 修 渡辺 修一郎 柴田 博 天野 秀紀 藤原 佳典 新開 省二 吉田 英世 鈴木 隆雄 湯川 晴美 安村 誠司 芳賀 博
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1117-1124, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
35

目的 地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能の自立度低下の関連を分析する。対象と方法 対象は,秋田県南外村に在住する65歳以上の地域高齢者である。ベーライン調査は1992年,追跡調査は1997年に行われた。ベースライン調査には748人が参加し,追跡時に生存し調査に参加した男性235人,女性373人,計608人(平均年齢:71.5歳)を分析対象とした。調査方法は面接聞き取り調査法を採用した。高次生活機能の自立度は,老研式活動能力指標により測定した。食品摂取の多様性は,肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,海草類,果物,芋類,および油脂類の10食品群を選び,1 週間の食品摂取頻度で把握した。各食品群について「ほぼ毎日食べる」に 1 点,「2日 1 回食べる」,「週に 1, 2 回食べる」,および「ほとんど食べない」の摂取頻度は 0 点とし,合計点数を求め食品摂取の多様性得点とした。解析は,1 点以上の老研式活動能力指標得点の低下の有無を従属変数(低下あり 1,なし 0),食品摂取の多様性得点を説明変数とする多重ロジスティック回帰分析によった。結果 分析対象のベースライン時の食品摂取の多様性得点の平均値は男性,6.5,女性6.7点であった。老研式活動能力指標総合点の平均点は11.4点であった。食品摂取の多様性得点の高い群で老研式活動能力指標の得点低下の危険度が低いことが認められた。老研式活動能力指標の得点低下の相対危険度[95%信頼区間]は,食品摂取の多様性得点が 3 点以下の群(10パーセンタイル(P)以下)を基準としたとき,4~8 点の群(10P 超90P 未満)および 9 点以上の群(90P 以上)では,手段的自立においては,それぞれ0.72[0.50-1.67], 0.61[0.34-1.48],知的能動性においては,それぞれ0.50[0.29-0.86], 0.40[0.20-0.77],社会的役割においては,それぞれ0.44[0.26-0.0.75], 0.43[0.20-0.82]であった。この関係は,性,年齢,学歴,およびベースラインの各下位尺度得点の影響を調整した後のものである。結論 多様な食品を摂取することが地域在宅高齢者の高次生活機能の自立性の低下を予防することが示唆された。
著者
柴田 博仁 高野 健太郎 田野 俊一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.2131-2141, 2016-09-15

本稿では,タッチ操作可能なタブレット端末での読みの評価をとおして,テキストをポインティングしたりなぞったりする行為(テキストタッチと呼ぶ)が,読みに与える影響を分析する.特に,文書内容を批判的に考察するアクティブリーディングにおけるテキストタッチの効果を検討する.最初の実験では,紙文書とタブレット端末での校正読みのパフォーマンスを比較する.結果として,タブレット端末よりも紙文書で読むほうが多くの誤りが検出された.ビデオ分析の結果,参加者は紙で読む際に頻繁にテキストタッチを行っており,テキストタッチの頻度と誤り検出率に正の相関が観察された.このことから,テキストタッチは校正読みを効果的に支援しており,タブレット端末ではテキストタッチが促進されないために誤り検出率が低下したことが考えられる.この仮説を検証するため,第2の実験では,紙文書へのインタラクションを制限して文書校正を行う実験を行った.結果として,文書に自由に触りながら読むことが許される条件に比べて,文書に触らずに読む条件で有意に誤り検出率が低下し,テキストタッチは読みのパフォーマンスに影響を与える重要な要因であることが分かった.この結果をふまえ,タッチ操作可能なタブレット端末でのアクティブリーディングの支援方法を議論する.
著者
柴田 博仁
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15
被引用文献数
3

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.The purpose of this paper is to quantitatively measure the efficiency of computer operations in several display environments that differ in the size and configuration of displays. The subjects were eight persons who engaged in intellectual property management activities. They replaced their display environments from single 17-inch displays (Small condition) to single 24-inch displays (Large condition) or dual 17-inch displays (Dual condition). We gathered their action logs for about two weeks before and after the change of their display environments. Based on the hypothesis that the efficiency for different display configurations can be explained as the time consumed for window operations, we compared the cost of window operations, that is, the total time required for activating, moving, and resizing of windows. As a result, in the small condition the subjects consumed much as 8.5% of the time for the window operations. This suggests the necessity of improvements in current window systems. Furthermore the cost of window operations was not reduced in the large condition in comparison with the small condition, but 13.5% of the cost reduction was observed in the dual condition. This suggests that dual display environments superior to single large display environments from the perspective of the cost of window operations.
著者
平野 修 河西 学 平川 南 大隅 清陽 武廣 亮平 原 正人 柴田 博子 高橋 千晶 杉本 良 君島 武史 田尾 誠敏 田中 広明 渡邊 理伊知 郷堀 英司 栗田 則久 佐々木 義則 早川 麗司 津野 仁 菅原 祥夫 保坂 康夫 原 明芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

奈良・平安時代において律令国家から、俘囚・夷俘と呼ばれたエミシたちの移配(強制移住)の研究は、これまで文献史学からのみ行われてきた。しかし近年の発掘調査成果により考古学から彼らの足跡をたどることが可能となり、本研究は考古学から古代の移配政策の実態を探るものである。今回検討を行った関東諸国では、馬匹生産や窯業生産などといった各国の手工業生産を担うエリアに強くその痕跡が認められたり、また国分僧尼寺などの官寺や官社の周辺といったある特定のエリアに送り込まれている状況が確認でき、エミシとの戦争により疲弊した各国の地域経済の建て直しや、地域開発の新たな労働力を確保するといった側面が強いことが判明した。
著者
柴田 博仁 大村 賢悟
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.274-282, 2016-06-10 (Released:2016-06-13)
参考文献数
35
被引用文献数
4

本稿では,業務で頻繁に生じる答えを探す読みにおいて,異なる文書メディア (紙の書籍,デスクトップPC,タブレット端末) を用いて作業スピードや作業の正確さを比較した実験を報告する.最初の実験では20名の実験参加者にテキストマニュアルから答えを探してもらった.結果として,参加者は紙の書籍で最も速く作業を行うことができた.別の実験では,24名の参加者に写真集から写真を探してもった.最初のうち紙の書籍はデスクトップPCに劣ったが,何度も検索を繰り返すうちに紙の書籍で作業するほうが速くなった.いずれの実験でも,紙の書籍では大胆で柔軟なページアクセスが行われ,これが紙の書籍での作業を効率的にしていた.また,いずれの実験でもタブレット端末では迅速なページアクセスが行えず,必要な情報を探し出すに時間がかかった.実験結果をふまえ,紙の書籍での迅速で柔軟なページアクセスに学び,電子書籍でのページアクセスを向上させるための改善策を考察する.
著者
柴田 博
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-20, 2015-04-30 (Released:2015-05-12)
参考文献数
44
被引用文献数
1 1

Thanatology(死生学)はgerontology(老年学)と共に1903年,免疫学者メチニコフにより創出された用語である。この2つの学問は,科学(自然,社会)および人文学(哲学,宗教,文学など)の双方の分野からなる学際的な学問である。人間の死の問題は生活の質(quality of life, QOL)の問題と統合的に把えなければならない。しかし,学問の進捗としては老年学の方が先行し,死生学は遅れたためそれは不十分にしか成されていない。1980年代まで死の問題を扱うことは宗教,哲学,生命倫理学以外の分野ではタブー視される傾向にあったのである。この四半世紀,老年学のQOLにanalogousにQOD(D)(quality of dying and/or death)の実証的な研究が北米を中心に盛んになっている。これらの研究は従属変数としてのQOD(D)を操作概念化し,提供されるケアとの関連で,終末期のQOLを評価しようとするものである。死の質を測定するための尺度の開発により,実証研究は今後も大きく進むものと考えられる。しかし,死の学問は終末期のきわめて短いスパンの問題に限局されてはならない。もっと長い人生のスパンにおけるQOLとの関連でも論じられなければならない。それは量的研究ではなく文学,病跡学にみられるようなnarrativeな方法を採ることになるであろう。本論文では,死生学にまつわるいくつかのトピックスについての,筆者の私見を述べた。死生学における位相的意義は明確にし得ないが。
著者
柴田 博仁 大村 賢悟
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.5, pp.1-8, 2011-01-14
被引用文献数
1

本稿は,オフィス業務で頻繁に観察される答えを探すための読みを対象に,紙の書籍と電子書籍端末 (iPad,Kindle),さらには PC のディスプレイとで,作業のスピードや正確さなどのパフォーマンスを比較するものである.答えを探すための読みとして,テキスト文書から答えを探す状況,画像を探す状況の 2 種類を想定し,2 つの実験を行った.最初の実験では,マニュアルから答えを探す実験を行った.紙の書籍は iPad に比べて 38.6%,Kindle に比べて 60.2% 高速であった.第 2 の実験では,写真集から指定する写真を探す実験を行った.PC は iPad よりも 27.1% 高速であった.紙の書籍は PC と iPad の中間に位置し,両者との間に有意差はなかった.実験結果は,答えを探す読みにおいて紙の書籍を利用するほうが電子書籍端末を利用する場合よりも効率的に作業できることを示している.これをもとに,現状の電子書籍端末がそのままの形でオフィス業務の広範な活動で紙を代替することはないと予想する.This paper compares the performance of reading such as reading speed and accuracy between a paper book, electronic books (iPad, Kindle), and a PC, in the task of reading to answer questions that is frequently observed in office work. We considered two situations of reading to search for answers, searching for answers in text documents and searching for images. We conducted two experiments according to the two situations. In the first experiment of searching answers in a text manual, subjects read 38.6% and 60.2% faster with the paper book than the cases of iPad and Kindle, respectively. In the second experiment of searching specified landscape photographs in a collection of photographs, subjects read 27.1% faster with PC than the case of iPad. These results show the superiority of paper books in comparison with current electronic books. We have a prospect that current electronic books do not replace paper in broad range of activities of office work as it is.
著者
柴田 博仁 大村 賢悟 土岐 一貴 藤木 武史
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.14-26, 2022 (Released:2022-03-15)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study aims to develop a valid and reliable questionnaire to evaluate the personal ability to use handwriting skills in everyday life and the workplace. The sample comprised 1,065 office workers who responded to a questionnaire, which was designed to understand how they use handwriting, how they understand the effect of handwriting, and how they select stationery to write. Factor analysis revealed the following seven factors: (1) communication through handwritten messages, (2) utilization of diagrams and illustrations, (3) affinity for pen and paper, (4) usage of various writing tools, (5) affinity for their own handwriting characters, (6) note-taking skills, and (7) understanding the value of handwriting skills. Based on the analysis, we developed a “handwriting ability scale,” which consists of the seven subscales. We also analyzed how the handwriting ability score differs according to gender, age, academic qualifications, and occupation. We believe this scale can be used to promote the use of handwriting and as a marketing tool for selling stationery products.
著者
柴田 博仁 大村 賢悟
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第25回 (2011)
巻号頁・発行日
pp.3H1OS62in, 2011 (Released:2018-07-30)

本稿では、作業で紙を利用する場合と電子メディアを利用する場合とでのCO2排出量を比較する。作業としては、文書を精読するシーン、会議で文書を共同閲覧するシーンを取り上げる。このような検討を積み重ねることで、状況に応じて環境にやさしいメディアを利用するための指針を提供することを目指す。
著者
柴田 博仁
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.204-211, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
40

本稿は読み書きでの紙と電子メディアの比較研究からわかったことを概観し,読み書きを支援するデジタル環境の構築に向けた示唆を示すものである.これまでの研究から,電子機器での読みが紙での読みに及ばない点は,「見やすさ」よりも「扱いやすさ」に起因するところが大きいことがわかってきた.また,キーボード入力は認知負荷が高く,電子的な描画ツールはデザイン問題の解決よりも描画結果の整形に走りがちであることが指摘されている.電子メディアのこうした問題点を克服するため,(1)見やすさよりも扱いやすさを追究すべきこと,(2)読み書き中の行為を認知負荷低くできるようにすること,(3)誤った思考モードを導かないようにすること,を設計示唆としてまとめる.
著者
柴田 博和
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.733-738, 1998-10-25 (Released:2018-04-01)
参考文献数
17

This study aims to make clear the characteristics and problems of urban design policy in Japan. So as a case study, I analyzed the dispute about high rise buildings (Kyoto hotel and JR Kyoto Station) in Kyoto, which is one of the most famous dispute about landscape in recent years in Japan. In this analysis, I paid attention to a point how administration coped with this dispute. And the result of this analysis shows that the problems of urban design policies in Kyoto, which were appeard through this dispute, connect with the problems of Japanese urban development process and systems for executing urban design policies.
著者
岡林 秀樹 杉澤 秀博 高梨 薫 中谷 陽明 柴田 博
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.486-493, 1999-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
32
被引用文献数
22 5

The purpose of this study was to extract the factor structure of coping strategies and to examine their direct and indirect effects on burnout. Eight hundred thirty four valid responses obtained from primary caregivers of impaired persons aged 65 years old and over living in the community were analyzed. The results of covariance structural analysis were as follows: Three second order factors, including “Approach”, “Avoidance, ” and “Support seeking, ” were extracted. Five factors, “Keeping their own pace, ” “Positive acceptance of caregiving role, ” “Diversion, ” “Informal support seeking, ” and “Formal support seeking, ” were extracted as first order factors. “Keeping their own pace, ” directly decreased burnout and “Diversion” indirectly decreased burnout through caregiving involvement. “Informal support seeking” directly increased burnout and “Positive acceptance of caregiving role” indirectly increased burnout through caregiving involvement.
著者
柴田 博仁 大村 賢悟
出版者
画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.975-981, 2011-11-25
参考文献数
31
著者
柴田 博仁
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 2004-01-01

本研究では,文章作成支援という問題を取り上げる.特に,論文や報告書,小説,エッセイなどの作成で見られるように,ある問題やテーマに対して関連する情報の収集と独自のアイディアが求められ,最終的には表現や構成を吟味したうえで文章としてまとめる活動を支援することを目的とする.このような文章作成は,問題が明確に定まらず,実践の中で問題を発見し,解決していくデザインプロセスの一種として考えることができる.また,その過程で生じる問題を解決するためには,これまでの概念空間から別の空間へとジャンプする創造的思考が求められる.本研究では,文章作成を「創造的デザイン」として捉え,これまでの創造的思考,デザインプロセス,文章作成に関する研究の成果をもとに,支援の方法論を探る.このような考えに基づき,文章作成に関わるさまざまな活動を一貫して支援する枠組みを提案し,統合的文章作成支援環境iWareを構築した.iWareは,おのおの独自の枠組みに基づいて構築した二つのサブシステムからなる.一つは文章の素材を集め,アイディアの生成を支援するiBox+であり,他方は収集,生成した素材やアイディアを整理し,文章にまとめあげることを支援するiWeaverである.実践的な利用の中で,本研究の枠組みは,日常的な情報収集活動と文章を構築する活動とをシームレスに支援し,文章の構造が定まらない試行錯誤的な状態から明確に構造化されるまでのスムーズな移行を可能とすることを示す.
著者
柴田 博 杉澤 秀博 杉原 陽子 黒澤 昌子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.既存のパネルデータの解析と公表生涯現役の意義と生涯現役の条件の解明という視点から、パネルデータを再解析した。具体的には、ボランティアや介護などの無償労働が高齢者に与える影響、無償労働の継続に関連する要因については杉原が、就労継続、中断、引退が高齢者の心身の健康、家庭生活、地域生活に与える影響については杉澤が分析した。2.第4回パネル調査の実施とデータベースの作成平成17年10月に第4回パネル調査を実施した。これまでの調査の中で強硬な拒否を示した人を除く対象者に対して調査を実施した。今回のパネル調査から、対象者の高齢化により健康上の理由で未回収になる可能性が高くなることを想定し、健康上の理由で調査に応じられない人に対しては、家族など対象者の状態をよく知っている人からの「代行調査」を実施した。さらに、回収率を維持するために、第4回パネル調査の未回収者のうち、不在・体調不良などの理由で未回収であった者に対しては、平成18年1月に追跡調査を実施した。以上の結果、本人回答による回収数は2,603、代行調査の回収数は65、代行調査を加えた回収数は2,668となった。回収率(代行をくわえた場合)は第1回パネル調査の完了者対比では67.1%であった。3.4回のパネルデータの解析(1)就労、ボランティア、家事・介護などのプロダクティブな活動が心身の健康に与える影響について、その因果メカニズムも含めて解析した。(2)ボランティア活動や奉仕活動の維持・促進要因を階層、地域、就労などとの関連で解明した。(3)就労に関しては、定年後の再就業の要因を、就労推進策、階層、職業観、経済、健康の面から多角的に検討するとともに、定年後の就業の質について定年前と比較することで解明した。(4)失業、定年退職が心身の健康に与える影響について解明した。