著者
松田 保 児玉 直子 秀野 啓子 小河原 緑 松崎 俊久 村上 元孝 山之内 博
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
血液と脈管 (ISSN:03869717)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.146-150, 1976

Apparent blood viscosity was measured on freshly shed blood from 127 healthy subjects, ages 21 to 88, and patients hospitalized in Tokyo Metropolitan Yoikuin Geriatrics Hospital, over age 60. Determination of blood viscosity was performed at 37&deg;C using rotational viscometer at shear rates between 0.07 and 4.6sec<sup>-1</sup>.<br>Mean blood viscosity in 43 healthy older subjects over age 60 (mean age: 74&plusmn;6) was 45&plusmn;25cp at 0.07sec<sup>-1</sup> and 8&plusmn;2cp at 4.6sec<sup>-1</sup>, respectively. Yield stress was calculated from Casson plot at very low shear rates (between 0.44 and 0.07sec<sup>-1</sup>) by the method of least squares. Mean value of yield stress in the healthy older subjects was 0.011 dynes/cm<sup>2</sup>. Blood viscosity in the healthy subjects was significantly correlated with hematocrit values. Yield stress in these subjects was also correlated with hematocrit values and blood viscosity at very low shear rates. In these healthy subjects, blood viscosity, yield stress and hematocrit values were highest in the group at age 30-39. Blood viscosity and yield stress showed a slight decline with age in the healthy older subjects.<br>In the hospitalized patients, blood viscosity was higher than 70cp at 0.07sec<sup>-1</sup>, and/or higher than 11cp at 4.6sec<sup>-1</sup> in 107 measurements (86 cases) out of 1443 determinations from December 1973 to October 1974. These patients with blood high viscosity included 12 cases of cancer (one of them was accompanied with disseminated intravascular coagulation (DIC); three of them developed DIC thereafter), 5 cases of acute myocardial infarction, 4 cases of acute cerebral infarction, 5 cases of angina pectoris, 6 cases of old myocardial infarction, 18 cases of old cerebrovascular diseases, 11 cases of diabetes mellitus, and 5 cases of stress polycythemia or polycythemia vera. In these cases, viscosity at 4.6sec<sup>-1</sup> was significantly correlated with hematocrit values, whereas viscosity at 0.07sec<sup>-1</sup> was not. All patients with blood high viscosity and relatively low hematocrit values suffered from cancer. In 6 cases of acute myocardial, cerebral of renal infarction, in whom changes in blood viscosity, yield stress and hematocrits were investigated before and after the development of infarction, changes in blood viscosity and yield stress were parallel with hematocrits.<br>From these results, it was concluded that high hematocrits caused blood high viscosity and were regarded as one of the risk factors in the pathogenesis of thrombosis, although the other factors than hematocrits might also influence blood viscosity at very low shear rates.
著者
七田 恵子 大場 京子 芳賀 博 上野 晴美 柴田 博 松崎 俊久 高橋 重郎 斉藤 紀仁
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.260-267, 1977-07-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24

東京都養育院老人ホームの老年者 (男子724名, 女子1,239名) 計1,963名を対象として血清コレステロール, トリグリセリドを測定し, 皮脂厚, 老人環, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 心電図所見との関連について検討した.1) 血清コレステロール分布はほぼ正規型を呈し, トリグリセリドはやや右方に偏った分布を描いたが対数変換を行うと幾分偏りが是正された.2) 5歳間隔の平均値で血清コレステロールの加齢変化を検討すると, 男子は横ばい, 女子は加齢とともに減少傾向を示した. トリグリセリドについても同じ傾向であった. すべての年齢層で性差を認め, 男子に比し女子は有意に高値であった.3) 各変量における単相関係数を求めると, 血清脂質と皮脂厚の間に男女いずれも有意な相関が示された (血清コレステロール: 男子r=0.215, 女子r=0.241, トリグリセリド: 男子r=0.254, 女子r=0.327, いずれもp>0.001). 血清脂質と老人環の関係は男子のトリグリセリドにおいてのみ低い正相関 (r=0.101, p>0.05) がえられた. 夜間排尿回数と女子のコレステロールおよび, 夜間排尿回数と男子のトリグリセリドの間に低い負の相関がえられた. 血清脂質と血圧の関係では, 女子においてコレステロールと収縮期血圧との関係を除いて低い正相関々係を示し, 男子ではトリグリセリドと拡張期血圧の間にのみ低い正相関を示した.4) 血清コレステロール. トリグリセリドに関し, 年齢, 皮脂厚・老人環, 夜間排尿回数, 収縮期血圧, 拡張期圧の6項目に対する偏相関係数を求めると血清脂質と肥満の指標である皮脂厚との関連は単相関と同様強いが, 皮脂厚などの要因を除外すると, 血清脂質と年齢および血圧との相関は低くなった. 男子において老人環および夜間排尿回数とトリグリセリドの間に有意な相関が認められた.5) 血清脂質レベルによる心電図所見出現率に関して, 高脂血群に有意に高率である所見は見出せず, 低脂質群に心房細動ならびに高電位出現率の高い傾向が認められた. 年齢変化を鋭敏に表わした異常Q, ST-T所見についても脂質レベルによる一定の関係はなかった.
著者
七田 恵子 大場 京子 芳賀 博 上野 晴美 柴田 博 松崎 俊久 高橋 重郎 斉藤 紀仁
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.38-43, 1977-01-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

都老人ホームに居住する65歳以上の男724名, 女1,239名, 計1,963名を対象として集団検診を行い, 諸種臨床検査成績における加齢変化を検討し, 次の如き結果を得た.1) 老人環: 老人環出現率は年齢が進むにつれ有意に増加し, 程度も増強し, 加齢変化を顕著に現わす指標と考えられた. また老人環と血清コレステロールとの関係は認められなかった.2) 夜間排尿回数: 就寝してから朝起床するまでの排尿回数は, 加齢とともに頻回となり, この傾向は男に比し女に強く認められた.3) 肥満度: 肥満について身長, 体重より算定した肥満度ならびに栄研式皮厚計を用いて計測した皮下脂肪厚の両面より加齢変化をみると, 女では加齢にともないるいそう傾向が認められた. この関係は肥満度に較べ皮下脂肪厚により強く表現された. しかし男では加齢による体格変動は一定の傾向を示さず横ばいであった.4) 血圧: 収縮期血圧は加齢とともに上昇し, 拡張期血圧は下降の傾向がみられるが, とくに女に顕著な変化が認められた.5) 心電図: 加齢にともなう心電図異常はST-T変化, 脚ブロック, PQ延長, 心房細動, 左軸偏位であり,とりわけST-T異常の出現が目立った.6) 血清脂質: コレステロールの平均値について男は概して横ばい, 女は加齢とともに明らかな低下を示す. 中性脂肪は男・女ともに平均値の減少化をみるが, 女により強い傾向が認められた.
著者
芳賀 博 柴田 博 松崎 俊久 安村 誠司
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.217-233, 1988
被引用文献数
41 9

本研究は,初回調査時に比較的健常であった地域在宅老人の10年間の追跡的調査に基づいている.研究の目的は,加齢に伴うADLの変化を明らかにし,さらには,ADLの維持に関わる要因を初回調査時の身体,心理,社会的側面から検索することである. 対象は,昭和51年の初回調査に応じた69~71歳の東京都小金井市在住の男女422名である.このうち,10年後の追跡調査に応じた者は,250名であり,死亡者は102名であった. 得られた主な結果は次のとおりである. 1.10年間に死亡した者は,継続調査群に比べて初回調査時のADL総合点は低い傾向にあった. 2.10年後のADLは,歩行,食事,排泄,入浴,着脱衣のいずれにおいても低下を示し,とくに歩行の低下が最も大きかった. 3.10年後に5項目全てが「半介助」あるいは「介助」に属するいわゆる"寝たきり老人"は,男の3.7%,女の2.1%のみであった.このうち,脳卒中及び骨・関節疾患を有する者を除くと"寝たきり老人"はさらに少なかった(男2.3%,女0.8%). 4.ADLの低下は,女より男に大きい傾向であったが,その差は有意ではなかった. 5.10年後のいわゆる「老化」にともなうADL低下に有意に関連する身体的要因は,高血圧の既往「あり」(男),心電図所見「異常」(男),「肥満」(女)であった. 6.心理的要因では,ベントソ正確数が「低い」(男),身体についての悩み「あり」(女)で有意なADLの低下を認めた. 7.社会的要因では,社会活動性が「低い」ほど有意なADLの低下を示した(男女). 以上の日常生活動作能力の変化に関する予知因子の検討の結果,男女とも社会活動性が10年後のADLの転帰にもっとも関係していた.このことから,社会活動性を維持し,あるいは高めることが日常生活動作能力の保持に役立ち,余命の延長にもつながることが推測された.
著者
平良 一彦 松崎 俊久 宮城 重二 佐藤 弘明 名嘉 幸一 崎原 盛造
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究の最終年次の追求課題は、調査地域(大宜味村)の老人の精神心理的側面の特徴、各種指標と加齢との関連性、死亡構造の特徴、児童・生徒の健康像を明らかにすることであった。調査はおおむね順調にすすめられ、成績は以下のごとく要約される。1.調査地域の老人のモラ-ルに関する要因についての調査結果から(1)男性ではADL障害の有無、女性では健康度自己評価が、モラ-ルに大きな影響を及ぼす。(2)対人関係の依存パタ-ンの分析結果から、男性は子供・配偶者が重要であり、女性は友人関係であった。このことから特に女性老人の場合、家族以外の人と親密な関係をもつことがモラ-ルを高める大きな要因となることが示唆された。2.調査地域の過去10年の集検の成績より(1)身長は男女共に年齢とともに低下し、特に女性では顕著であった。(2)体重は男女共に加齢による減少は見られず、女性の40歳、50歳代では逆に増加していた。(3)血圧は収縮期血圧は加齢とともに上昇傾向を示し、拡張期血圧は40歳代では上昇し、逆に50歳以降は加齢とともに減少傾向を示した。3.調査地域住民の過去10年間の死亡の特徴は、男性が女性よりかなり高く、70歳代まで有意差が見られた。また死因の特徴は男性では40歳〜69歳、70歳以上の両群で悪性新生物が多く、女性では40歳〜69歳で多かった悪性新生物が、70歳以上では特に少なかった。4.小・中・高校生を対象とした検診成績から成人病予防の観点から何らかの指導・管理を要すると思われる者が15%程みられた。血液生化学値を肥満度別に検討した結果、性、年齢を問わず肥満群は非肥満群に比べ、高血圧、高脂血症などの成人病発生のリスクが高いことが示唆された。