著者
川路 則友 白石 哲 林 宏
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.82-93, 1978

1974年7月から1976年12月まで原則として各月1回,有明海北部沿岸(福岡県山門郡大和町の大和干拓地周辺)においてセンサスを行った。確認された鳥類は25科99種であった。そのうちガンカモ科,チドリ科およびシギ科の3科の鳥類だけで47種(47.5%)を占めていた。そこで,この3科の鳥類について,それぞれの種類数および個体数の季節変動を調べた。<br>1.ガンカモ科に属する鳥類の総個体数は冬に最も多く確認されるが,種類数は春と秋に多かった。<br>2.チドリ科に属する鳥類の総個体数は春の渡り時よりも秋の渡り時において多かった。種類数は春と秋で大差はなかった。<br>3.シギ科鳥類の個体数では,春の渡り時の方が秋の渡り時よりも多かった。種類数は春と秋でそれほど差はなかった。<br>4.有明海北部におけるシギ&bull;チドリ類の観察記録を大阪湾,東京湾および宮城県蒲生におけるそれらと比較考察した。すなわち,有明海北部沿岸で確認されたシギ&bull;チドリ類35種のうち,観察例の少ない18種を除いた17種について,有明海北部沿岸における渡りの型と上に述べた3渡来地におけるそれらとを比較考察した。<br>5.上記3渡来地と同じ型を示す種として6種(メダイチドリ,ダイゼン,ツルシギ,アオアシシギ,キアシシギ,ソリハシシギ),異なる型を示すものとして11種(シロチドリ,ムナグロ,キョウジョシギ,トウネン,ハマシギ,オバシギ,タカブシギ,オグロシギ,オオソリハシシギ,ホウロクシギ,チュウシャクシギ)をあげた。これらの渡りの型からそれぞれの種の渡りの径路を考察した結果,小林(1959)が述べている3つの北上径路の他に,第4の径路として日本列島の南岸に沿って北上する径路もあると考えられた。また,南下の径路としては2つの径路が考えられた。<br>6.北上,南下のいずれにしても,有明海を通過するシギ&bull;チドリ類については,本州よりも中国大陸や朝鮮により深い関係を有する鳥類が多いことが推察された。

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