- 著者
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高崎 恭輔
米田 浩久
谷埜 予士次
鈴木 俊明
渡辺 美鈴
河野 公一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.A3P2096, 2009
【はじめに】ファンクショナルリーチ・テスト(以下 FRT)はバランス機能を評価する方法として臨床で頻繁に用いられる手法であり、転倒の危険性を予測する指標とされている.これまでFRTは、そのリーチ距離に着目され各年代の基準値を指標に用いられてきた.しかし先行研究ではリーチ距離と足圧中心の前方移動距離との相関性は低いという報告があり、また鈴木らのスモン患者における研究でもリーチ距離が歩行機能に与える影響は少ないといわれている.これらのことから我々はFRTを転倒予防や運動能力の評価指標として用いるためにはそのリーチ距離だけでなく、動作戦略にも着目する必要があるのではないかと考えている.そこで本研究では、FRTを有効に活用するための新たな指標の構築の前段階として、健常者におけるFRTの動作戦略について検討した.<BR>【対象と方法】対象は実験に同意を得た健常大学生83名(男性46名、女性37名)である.方法はDuncanの方法に従いFRTを行わせ、矢状面からデジタルビデオカメラにて定点撮影した動画によって計測中の足関節、股関節の関節運動開始順序を確認しパターン分類した.<BR>【結果】以下に分類した動作戦略パターンと全試行数に占める該当数の割合を示す.分類されたパターンは、a.股関節屈曲のみのパターン(42.6%)、b.足関節背屈の後に股関節屈曲するパターン(37.3%)、c.股関節屈曲の後に足関節底屈による膝過伸展を示すパターン(10.8%)、d.足関節背屈のみのパターン(5.6%)、e.股関節屈曲と足関節の底屈による膝過伸展が同時に出現するパターン(1.6%)、f.股関節の屈曲の後に足関節背屈するパターン(1.2%)、g.股関節屈曲と足関節背屈が同時に出現するパターン(0.4%)、h.足関節底屈の後に股関節が屈曲するパターン(0.4%)であった.<BR>【考察】本研究ではFRTにおける股関節、足関節の運動開始順序に着目し動作戦略のパターン分類を行った結果、上記の8パターンを示した.一般的に姿勢制御戦略において、足関節戦略はわずかな重心の乱れに対応するのに対し、股関節戦略は足関節戦略で対応できない大きな外乱に対して用いられるといわれる.また高齢者は足関節戦略より股関節戦略を頻繁に用いるようになり、これが転倒の原因の一つになるとも言われている.このことから、前方へのリーチ動作を合目的的に行う戦略として足関節底屈筋群の活動により足関節の背屈を制御し、さらに股関節の屈曲が見られるa.やb.のパターンは、足関節が底屈するパターンに比べて高いバランス機能を有するのではないかと考える.本研究では健常者を対象としていることから、多数みられたパターンを高度な姿勢制御を有すると仮説して考察したが、今後さらにパターンの優位順序を明確化していくために、他のバランステストとの関係性や年代毎のパターン分類なども行いたいと考えている.