著者
谷本 芳美 渡辺 美鈴 河野 令 広田 千賀 高崎 恭輔 河野 公一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.52-57, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
43 64 12

目的:高齢者の介護予防に向けた健康づくりを支援するために,日本人を対象とした大サンプル数の調査から筋肉量を測定し,部位別に筋肉量の加齢による特徴を明らかにすることを目的とした.方法:18歳以上の日本人4,003人(男性1,702人,女性2,301人)を対象者とし,平成19年5月から平成20年9月にかけて上肢,下肢,体幹部および全身筋肉量の測定を行った.対象者は大都市近郊や農村在住の住民,大学の学生や教職員,民間企業の職員,地域の既存施設(図書館,老人福祉センターなど)の利用者である.マルチ周波数体組成計MC-190(タニタ社)を使用して筋肉量を測定し,性,年齢別に検討した.結果:筋肉量はすべての部位において年齢に関わらず男性が女性よりも有意に多く,また,加齢に伴う減少の割合は男性の方が女性よりも大きいことを示した.部位別の特徴として,下肢は20歳代ごろより加齢に伴い著明な減少を,上肢は高齢期より緩やかな減少を,体幹部は中年期頃まで緩やかに上昇した後減少を示した.さらにこれらの総和である全身筋肉量は中年期頃まで微量に増加あるいは横ばい状態から減少した.このように筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは下肢で,次に全身,上肢,体幹部の順であった.結論:本研究では日本人筋肉量の部位別の加齢変化が明らかとなった.特に下肢筋肉量は早期より加齢に伴い大きく減少することから,高齢期の健康づくりにおいて下肢筋肉量に注目した支援の必要性が示された.
著者
山口 剛司 高崎 恭輔 鈴木 俊明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3O2045, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】足部不安定性に対する運動療法は、閉鎖性運動連鎖でのエクササイズが有用であると考える。なぜなら実際の動作と類似した肢位でのエクササイズは、安定した動作を遂行するための機能的な筋活動を獲得できるからである。我々は第44回本学会において、片脚立位での一側下肢の運動課題時に生じる支持脚足部内のCOP変化と足部周囲筋群、膝屈筋群の筋活動について報告した。その結果、運動課題に伴うCOP移動は一定の傾向を示し、COP移動方向と筋活動には、次のような傾向を認めた。足部周囲筋群では、COP移動方向により腓骨筋と後脛骨筋の筋活動が明確に切り換る場合や同時活動する場合を認め、膝屈筋群ではCOP移動方向により大腿二頭筋と半膜様筋は明確に切り換る場合を認めた。この結果から膝屈筋群は、主に膝関節の回旋運動の制御に機能することが考えられた。しかしながら一般的には膝伸筋群が、膝関節の安定性に関与すると考えられるため、同運動課題における膝伸筋群の機能を把握する必要があると考えられた。そこで今回は、同運動課題でのCOPと足部周囲筋群、膝屈筋群に加え、膝伸筋群の筋電図評価を実施したので報告する。【方法】対象は、整形外科的・神経学的に問題のない男女7名(平均年齢29.7±3.7歳)の支持脚7肢とした。方法は、被験者に重心計のプレート上で片脚立位をとらせ、非支持脚下肢での運動課題を行わせた時の支持脚の筋電図ならびにCOPを記録した。支持脚は、股関節・膝関節を各々30゜屈曲位と規定した。筋電図では、支持脚の腓骨筋、後脛骨筋、半膜様筋、大腿二頭筋、内側広筋、外側広筋の筋活動を記録した。運動課題の開始肢位は、立位の状態から非利き足側(以下、運動側)下肢の足底が接地しないよう前方で空間保持した状態とした。運動課題は、開始肢位より運動側股関節を内転する課題を内側運動、外転する運動を外側運動とした。なお下肢の運動と筋電図記録、COP記録を同期するためにフットスイッチを運動側の母趾と小趾に配置し、内側運動、外側運動の両端に台を設置してスイッチと接触させた。運動課題の施行は開始肢位より内側運動から行い、外側・内側の3回の運動を1施行として、各被検者で3施行測定した。分析方法は、運動課題中のCOP軌跡の時間的変化とそれに伴う導出筋の筋活動パターンを分析した。【説明と同意】各被験者には本研究目的と内容について十分に説明を行い、同意を得た後に測定を実施した。【結果】 運動課題時のCOPは、内側運動課題中は小趾側方向へ移動し、外側運動課題中は母趾側方向へ移動した。一方筋電図では、次のような傾向を認めた。まず足部周囲筋群では、COPの移動方向により腓骨筋と後脛骨筋の筋活動が明確に切り換る場合や、後脛骨筋が持続的に活動する場合が見られた。具体的には、COPの小趾側移動中には後脛骨筋が活動し、母趾側移動中には腓骨筋の活動を認めた。次に膝屈筋群は、COPの小趾側移動中には半膜様筋が活動し、母趾側移動中には大腿二頭筋の活動を認め、COPの移動方向により両筋の明確な切り換りを認めた。膝伸筋群では、外側広筋がCOPの移動方向に関わらず持続的な活動を認め、内側広筋はCOPが母趾側移動中に活動する傾向を認めた。【考察】本運動課題中の足部周囲筋群では、先行研究と同様に腓骨筋と後脛骨筋の活動が切り換ることによりCOPの移動を円滑にすると考えられる。この中でも後脛骨筋が持続的な活動を認める場合は、課題中にCOPの移動が不安定な場合に生じる傾向が見られた。この時後脛骨筋は、足部内側の剛性を形成し足部安定化作用を担うため、運動課題時の足部不安定性を補償する目的で持続的に活動したと考えられる。次に膝伸筋群では内側広筋がCOP母趾側移動中に活動を認めた。COP母趾側移動中は、下肢では股関節屈曲位での軽度内転、膝関節屈曲位での外反外旋運動が観察される。このアラインメントでは膝外反外旋運動により、膝蓋骨は外方へ移動する力が生じる。この時内側広筋は、外側広筋との同時活動により膝蓋骨の外方移動を制動すると考えられる。内側広筋は、この膝蓋骨の外方移動を制動し、膝蓋骨を介して間接的に膝外反外旋運動を制動するのに最も効率の良い筋走行であると考える。そのためCOP母趾側移動中には、内側広筋が活動したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 足部不安定性に対する運動療法は、閉鎖性運動連鎖でのエクササイズが有用であると考える。本運動課題では、安定した姿勢を保持し、支持脚のCOPが円滑に移動するには、足部周囲筋群に加え膝周囲筋群の筋活動により下肢アラインメントを制御することが必要となる。また本運動課題はサイドステップやクロスオーバーステップ動作の肢位と類似することから、これら動作練習の前段階のエクササイズとして有用であると考える。
著者
谷埜 予士次 福島 綾子 酒井 英謙 高崎 恭輔 米田 浩久 鈴木 俊明
出版者
関西医療大学
雑誌
関西医療大学紀要 (ISSN:18819184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.32-37, 2008

レッグエクステンションによって、膝伸筋群を効率よく強化するための基礎的研究として、骨盤肢位の変化と大腿四頭筋の筋活動について検討した。健常成人10名を対象とし、膝60°屈曲位での膝伸展を最大の30%強度で行わせた。骨盤肢位は「骨盤前傾位」、「骨盤中間位」、「骨盤軽度後傾位」、「骨盤最大後傾位」の4種類に規定し、各々の骨盤肢位を維持した状態で膝伸展保持を行わせた。そして、伸展トルク発揮中に大腿直筋(RF)、外側広筋(VL)、内側広筋斜走線維(VMO)から筋電図を記録した。VMOの筋電図積分値(iEMG)は、「骨盤前傾位」で、他の3種類の骨盤肢位のときと比較して有意な増大が認められた。また、VMOのiEMGは「骨盤最大後傾位」と比較して「骨盤中間位」でも有意に増大した。RF、VLのiEMGについては、骨盤肢位の変化に関わらず有意な差を認めなかった。本結果より、臨床への示唆として、膝60。屈曲位でのレッグエクステンションにおいて、VMOの筋活動を優位にしたい場合は骨盤を後傾位にすることなく、可及的に腰椎の生理的前弯に伴った骨盤の肢位にて、レッグエクステンションを行うことを推奨する。
著者
鈴木 俊明 鬼形 周恵子 谷 万喜子 米田 浩久 高崎 恭輔 谷埜 予士次 塩見 紀子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A1506, 2008

【目的】第9回アジア理学療法学会にて鍼灸医学の循経取穴理論を理学療法に応用し開発した経穴刺激理学療法を紹介した。循経取穴は、症状のある部位・罹患筋上を走行する経絡を同定して、その経絡上に存在する経穴を鍼治療部位とする理論である。経穴刺激理学療法は、動作分析から筋緊張異常が問題であると判断した場合に用いる。筋緊張抑制には垂直方向、筋緊張促通には斜方向から治療者の指で経穴を圧迫する。本研究では、胸鎖乳突筋に対応する経穴のひとつである左合谷穴への経穴刺激理学療法により右頸部回旋動作の主動作筋である左胸鎖乳突筋と右板状筋の運動前反応時間を検討し、右合谷への経穴刺激理学療法によるPMTの変化が胸鎖乳突筋に特有な変化であるか否かを検討した。<BR>【方法】本研究に同意を得た健常者9名(男性7名、女性2名、平均年齢33.2±7.7歳)を対象とした。座位で、経穴刺激理学療法(Acupoint Stimulation Physical Therapy:ASPT)前後に音刺激を合図に頸部右回旋を連続10回実施した際の左胸鎖乳突筋、右板状筋の音刺激より筋電図出現までの時間である運動前反応時間(pre motor time:PMT)を測定した。ASPTは、検者の指で痛みを伴わず耐えられる最大の強度で、筋緊張促通目的で用いる斜方向に左合谷を5分間圧迫した。ASPT群の左胸鎖乳突筋、右板状筋のPMTは、安静時、刺激終了直後、10分後、20分後、30分後に記録し、安静のPMTを1とした時の相対値(PMT相対値)で比較した。コントロール群としてASPTを行わずに同様の検査を実施した。<BR>【結果】ASPT群の左胸鎖乳突筋のPMT相対値は刺激直後0.98、10分後0.96、20分後0.95、30分後0.93であり、刺激直後より刺激30分後まで短縮する傾向であった。ASPT群の右板状筋のPMT相対値は刺激前後で変化を認めなかった。また、コントロール群でも時間経過によるPMTの変化は認めなかった。<BR>【考察】ASPTは循経取穴という経絡・経穴を用いた治療理論を理学療法に応用した方法である。今回用いた合谷は胸鎖乳突筋上を通過する手陽明大腸経に所属する経穴である。PMTは中枢神経機能を示す一つの指標である。左合谷への5分間のASPTにより左胸鎖乳突筋のPMTが短縮したことから、合谷への圧刺激は胸鎖乳突筋に対応した中枢神経機能の促通に関与したと考えられた。しかし、手陽明大腸経とは関連しないが右頸部回旋動作の主動作筋である右板状筋のPMTは合谷刺激で変化なかったことから、経穴刺激理学療法における効果は循経取穴に関連した経絡・経穴の影響が関連していると考えられた。<BR>【まとめ】左合谷への5分間の経穴刺激理学療法は、循経取穴に関連した左胸鎖乳突筋に対応する中枢神経機能の促通に関与すると考えられた。
著者
山口 剛司 高崎 恭輔 大工谷 新一
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.103-108, 2005 (Released:2006-01-26)
参考文献数
4
被引用文献数
12

The foot region plays an important role in postural control. It is often observed that improvement of foot and foot joint functions leads to improvement of movements of the lower limbs, pelvis, trunk, and eventually the entire body. We generally use the position of plantar pressure as a parameter for the evaluation of the foot region and foot joints, because the center of plantar pressure (COP) provides important information. In patients with dysfunction in the foot region, COP is often deviated to the big or little toe side during movements, or induction of COP from the little toe side to the big toe side is often difficult. In therapeutic exercise for control of COP in such patients, closed kinetic chain exercise is considered effective. In such exercises, monitoring of the necessary activities of the peripedal muscles caused by changes in COP is important. In this study, we examined the electromyographic integral of the peripedal muscles caused by changes in COP using a ground reaction force plate and electromyography. In the measurement, a surface electromyograph, Mlyosystem 1200 (NORAXON Co.), was used for recording electromyography. For electromyography analysis, MyoResearch (NORAXON Co.) software was used for calculation of the integrated values of the electromyography. A force plate (Anima Co.) was synchronized with the surface electromyograph. Weight loading on the forefoot and hind foot induced characteristic muscular activity patterns of muscles around the foot. For changing COP, muscular activity of muscles around the foot is necessary, and it is important to know that the muscular activity pattern varies depending on the position of COP.
著者
渡邊 裕文 大沼 俊博 高崎 恭輔 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.561-564, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕座位での腹斜筋の活動を明確にすることである.〔対象〕本研究に対する同意を得られた健常男性7名とした.〔方法〕テレメトリー筋電計MQ-8を用い,左側腹斜筋に複数の電極を配置し,座位にて側方移動距離を変化させ筋電図を測定した.座位での筋電図積分値に対する相対値を求め,移動距離による相対値の変化を検討した.〔結果〕側方移動距離の増大に対し,移動側腹斜筋群では筋電図積分値相対値に変化が認められず,反対側腹斜筋群ではこの値が全電極で増加傾向を示し,内腹斜筋単独部位とその直上の2電極で有意に増加した.〔結語〕座位で側方体重移動をリハビリテーションに用いる時,移動反対側内腹斜筋による骨盤の挙上作用に着目する必要のあることが示唆される.
著者
鈴木 俊明 米田 浩久 谷埜 予士次 高崎 恭輔 谷 万喜子 鬼形 周恵子 吉田 隆紀 文野 住文 浦上 さゆり 若山 育郎 吉田 宗平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.126-127, 2012-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4

本研究の目的は,パーキンソン病患者への運動イメージ効果を脊髄神経機能の興奮性の指標であるF波を用いて検討することである。Hoehn and Yahrの重症度分類II 4名,III 3名,IV 3名であるパーキンソン病患者10名(男性2名,女性8名),平均年齢63.9 ± 11.0歳の非利き手(左側)を対象として,以下の検査を実施した。被験者を背臥位とし,非利き手(左側)正中神経刺激のF波を非利き手(左側)母指球筋より導出した(安静試行)。ピンチメータのセンサーを軽く把持した状態(センサー把持試行)で,非利き手(左側)正中神経刺激によるF波を非利き手(左側)の母指球筋より導出した。次に,ピンチメータを用いて,左側母指と示指による対立運動の最大努力の50%のピンチ力で対立運動を練習させた。その後,センサーは軽く把持したまま50%収縮をイメージさせた状態(センサー把持運動イメージ試行)とセンサーを把持しないで運動イメージを実施した状態(センサー把持なし運動イメージ試行)で,非利き手(左側)の母指球筋より同様にF波を測定した。F波出現頻度,振幅F/M比は,安静試行と比較してセンサー把持試行,センサー把持運動イメージ試行,センサー把持なし運動イメージ試行で増加傾向であり,安静試行とセンサー把持運動イメージ試行の2群間では有意に増加した。立ち上がり潜時は各試行での差異は認めなかった。健常者での先行研究と同様に,パーキンソン病患者への等尺性収縮による対立運動を用いた運動イメージは同側の脊髄神経機能の興奮性を増加させるが,運動イメージの方法は実際の運動に近い方法で実施することが大切であることが示唆された。
著者
藤井 隆太 高木 綾一 山口 剛司 高崎 恭輔 大工谷 新一 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.85-94, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2

The purpose of this study was to investigate the effect of differences of the foot center of pressure in standing on postural control of stand-to sit movement. It was thought that the reverse reaction phenomenon of standing posture in normal subjects at the fist of the sitting movement start by reduction of the muscle activity of the lumbar back muscles. Stable stand-to-sit movement was able to be performed when COP was located forward. From this, the position of foot COP in standing before stand-to-sit movement influences the difficulty of adjustment of COP and COG. Therefore, we suggest that in order to improve stand-to-sit movement, it is important to evaluate foot COP in the standing posture and muscle activity of the lumbar back muscles.
著者
高崎 恭輔 鈴木 俊明 清水 卓也
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-68, 2009 (Released:2010-01-16)
参考文献数
6

We assessed the direction and grade of pelvic deviation using palpation and spinal malleolar distance (SMD) measurement in patients with pelvic deviation at the sacroiliac joint affecting daily living and sporting activities. In this article, we introduce the pelvic deviation-testing method with palpation that we developed, with regard to the pelvic deviation condition in which the unilateral coxal bone at the sacroiliac joint in the pelvic region shows anteroposterior inclination. We report the pattern of pelvic deviation classified based on clinical data, and introduce a simple, objective examination procedure using the SMD. In addition, we present patients with pelvic deviation as an etiological factor influencing basic/sporting activities, and review the evaluation and treatment of pelvic deviation in physical therapy.
著者
高崎 恭輔 嘉戸 直樹
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-126, 2002 (Released:2005-05-21)
参考文献数
3

We encountered a patient with hemiplegia caused by a cerebrovascular disorder. The chief symptom was gait disturbance due to insufficient lifting of the toe from the ground on the affected side caused by leaning of the trunk forward and toward the affected side when toe on the affected side was lifted from the ground. Hypotonus of the abdominal muscles on the affected side was involved in the leaning of the trunk forward and toward the affected side. Hypertonus of the hamstring muscles on the unaffected side caused by compensation for the instability was observed. In the patient, treatment of hypotonus of the abdominal muscles was performed, but the effects reached a plateau. While re-examining the condition, we noticed shortening of the pectoralis major muscle on the affected side. The shortening of the pectoralis major muscle on the affected side, which had been caused by compensation of the instability induced by long-term hypotonus of the abdominal muscle tonus, limited the mobility of the shoulder girdle and trunk, and further reduced the tonus of the abdominal muscles, creating a vicious circle. We performed stretching exercises of the shortened pectoralis major muscle on the affected side, and examined the effects by EMG. The hypotonus of the abdominal muscles was improved by stretching exercises, and the hypertonus of the hamstring muscles on the unaffected side was also improved. And also the gait disturbance was improved by the combination of treatment of the abdominal muscles and stretching exercises of the shortened pectoralis major muscle on the affected side. Our experience indicated the importance of treatment of the shortened pectoralis major muscle on the affected side caused secondarily in the long term in addition to treatment of hypotonus of the abdominal muscles caused primarily by a cerebrovascular disease.
著者
髙尾 耕平 北原 あゆみ 森岡 研介 高崎 恭輔 大工谷 新一
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.73-76, 2013 (Released:2013-12-28)
参考文献数
4

The purpose of this study was to examine the influence of a knee and ankle foot orthosis (KAFO) on normal gait. The subjects were 9 healthy males with a mean age of 23.2 ± 1.1 (range 20-31) years. Alterations in the angles of the trunk, hip, knee, and ankle were examined during walking with and without a KAFO using a three-dimensional motion analysis system (UM-CAT II). From the results, three patterns were defined, all of which could be considered types of compensation for the limitation of motion caused by KAFO.
著者
高木 綾一 高崎 恭輔 大工谷 新一
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-70, 2007 (Released:2008-01-18)
参考文献数
14
被引用文献数
3

It is difficult for cerebrovascular disease patients to maintain the standing position while holding the shoulder in the flexed position and flexing the shoulder. It is thought that center-of-gravity line deviates from the base of support because holding the shoulder in the flexed position or flexing the shoulder influence the body alignment and generate addtional forces. The center of plantar pressure moves toward the center of gravity line to avoid leaving the base of support. Therefore, clarifying the movement pattern of the center of plantar pressure while holding the shoulder in the flexed position and flexing the shoulder is important when we perform a physical therapy evaluation for patients with instability in standing. In this study, trace of the center of plantar pressure movement during holding the shoulder in the flexed position and flexing the shoulder in standing was investigated to evaluate postural control in healthy subjects. We analyzed the trace of the center of plantar pressure in standing as follows: 1) The center of plantar pressure average displacement with change of the shoulder flexion angle (0°, 30°, 60°, 90°, 120°, 150° and 180°); 2) The trace pattern of the center of plantar pressure in flexing the shoulder. We found trace patterns of center of plantar pressure which are common to subjects holding the shoulder flexed at 30°, 60° and 90°. Also, in the pattern classification of trace patterns of the center of plantar pressure during flexing the shoulder, we identified 5 patterns as follows: front S pattern, front reverse S pattern, rear S pattern, front C pattern and front reverse C pattern. We think that a force was generated by holding the shoulder in the flexed position and that flexing the shoulder was related to some of the patterns produced. It is important that the trace pattern of center of plantar pressure is ealuated while holding the shoulder in the flexed position and flexing the shoulder.
著者
柏木 孝介 貴志 真也 奥田 智史 木村 侑史 川上 基好 小林 啓晋 高崎 恭輔 山口 剛司 鈴木 俊明
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.98, 2008

【目的】今回、試合中のバッティング動作において、腰痛を発症した高校野球選手のバッティングフォームを三次元動作解析したので、フォームと腰痛発症要因の関係について若干の考察を加え報告する。<BR>【対象】本研究に同意を得た年齢18歳の高校野球選手で右投げ右打ちの外野手である。試合のバッティング時に内角低めを空振りして腰痛発症し、腰部椎間板障害の診断を受け、3ヶ月の理学療法により症状消失した症例である。<BR>【方法】野球のティーバッティング動作を6台の赤外線カメラ(180Hz)を有する三次元動作解析装置UM-CAT_II_(ユニメック社製)を使用して分析した。そして、内角・外角の2コースを設定し、各コースのティーバッティング動作における腰部の回旋と脊柱の側屈の動きについて測定した。腰部の回旋や側屈は、15ヶ所に貼付したマーカーのうち両肋骨下縁のマーカーを結んだ線(胸郭線)に対する両上前腸骨棘を結んだマーカーの線(骨盤線)のX軸に対する水平面上の回旋や前額面上の傾きで計測した。回旋は上から見て反時計回りを左回旋とした。また、腰椎の回旋は骨盤線に対する胸郭線の回旋とした。側屈は後方から見て骨盤線が胸郭線に対し反時計回りに傾いた状態を左凸の右側屈とした。<BR>【結果】バッティングにおける体幹の動きは、内角や外角のボールを打つのに関係なく軸脚加重期(ステップ足が離床から膝最高点)では右凸の左側屈・右回旋、踏み出し期(ステップ側の膝最高点からステップ足の床接地)では左凸の右側屈・腰椎右回旋(骨盤左回旋>胸郭左回旋)、スウィング期からフォロースルー期にかけては左凸の右側屈と腰椎左回旋(骨盤左回旋<胸郭左回旋)を行う。内角と外角のボールを打つときのバッティングフォームの違いは、スタンス期の左側屈角度、スイング期、フォロースルー期における体幹右側屈角度と腰椎回旋角度が内角を打つ動作より外角を打つ動作のほうが大きかったことである。<BR>【考察】今回行ったティーバッティング動作の体幹の動きについての分析では、内角のボールを打つときにくらべ、外角のボールを打つときには体幹の側屈角度や回旋角度は大きくなった。このことから、関節角度が大きくなる外角のボールを打つ動作は、腰椎へのストレスが大きく障害発生の危険性が高いと思われる。しかし、今回の症例では、内角のボールを打つ際に空振りをして腰痛発症している。これは、脊柱の動きが少ない内角打ちを空振りしたため脊柱の動きが急に大きくなり、関節中心軸から逸脱した腰椎回旋を生じ腰痛を発症したと考えられる。今後は、実際にボールを打ったときの脊柱の動きと空振りをしたときの脊柱の動きについて検討する必要があると思われる。
著者
高崎 恭輔 米田 浩久 谷埜 予士次 鈴木 俊明 渡辺 美鈴 河野 公一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2096, 2009

【はじめに】ファンクショナルリーチ・テスト(以下 FRT)はバランス機能を評価する方法として臨床で頻繁に用いられる手法であり、転倒の危険性を予測する指標とされている.これまでFRTは、そのリーチ距離に着目され各年代の基準値を指標に用いられてきた.しかし先行研究ではリーチ距離と足圧中心の前方移動距離との相関性は低いという報告があり、また鈴木らのスモン患者における研究でもリーチ距離が歩行機能に与える影響は少ないといわれている.これらのことから我々はFRTを転倒予防や運動能力の評価指標として用いるためにはそのリーチ距離だけでなく、動作戦略にも着目する必要があるのではないかと考えている.そこで本研究では、FRTを有効に活用するための新たな指標の構築の前段階として、健常者におけるFRTの動作戦略について検討した.<BR>【対象と方法】対象は実験に同意を得た健常大学生83名(男性46名、女性37名)である.方法はDuncanの方法に従いFRTを行わせ、矢状面からデジタルビデオカメラにて定点撮影した動画によって計測中の足関節、股関節の関節運動開始順序を確認しパターン分類した.<BR>【結果】以下に分類した動作戦略パターンと全試行数に占める該当数の割合を示す.分類されたパターンは、a.股関節屈曲のみのパターン(42.6%)、b.足関節背屈の後に股関節屈曲するパターン(37.3%)、c.股関節屈曲の後に足関節底屈による膝過伸展を示すパターン(10.8%)、d.足関節背屈のみのパターン(5.6%)、e.股関節屈曲と足関節の底屈による膝過伸展が同時に出現するパターン(1.6%)、f.股関節の屈曲の後に足関節背屈するパターン(1.2%)、g.股関節屈曲と足関節背屈が同時に出現するパターン(0.4%)、h.足関節底屈の後に股関節が屈曲するパターン(0.4%)であった.<BR>【考察】本研究ではFRTにおける股関節、足関節の運動開始順序に着目し動作戦略のパターン分類を行った結果、上記の8パターンを示した.一般的に姿勢制御戦略において、足関節戦略はわずかな重心の乱れに対応するのに対し、股関節戦略は足関節戦略で対応できない大きな外乱に対して用いられるといわれる.また高齢者は足関節戦略より股関節戦略を頻繁に用いるようになり、これが転倒の原因の一つになるとも言われている.このことから、前方へのリーチ動作を合目的的に行う戦略として足関節底屈筋群の活動により足関節の背屈を制御し、さらに股関節の屈曲が見られるa.やb.のパターンは、足関節が底屈するパターンに比べて高いバランス機能を有するのではないかと考える.本研究では健常者を対象としていることから、多数みられたパターンを高度な姿勢制御を有すると仮説して考察したが、今後さらにパターンの優位順序を明確化していくために、他のバランステストとの関係性や年代毎のパターン分類なども行いたいと考えている.
著者
谷本 芳美 渡辺 美鈴 河野 令 広田 千賀 高崎 恭輔 河野 公一
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.383-390, 2009-06-15
被引用文献数
6

<b>目的</b> 高齢期における介護予防のための口腔機能の維持・向上を目的に,地域高齢者における咀嚼能力の客観的な評価方法として色変わりチューインガム(以下,色変わりガムとする)が有用であるか検討する。<br/><b>方法</b> 2007年 4 月~5 月に T 市に在住する65歳以上の高齢者210人(男性69人,女性141人)を対象に色変わりガムを用いた咀嚼能力と残存歯数および咬合力の測定を行い,同時に自記式質問紙調査を用いて咀嚼能力の主観的評価を行った。調査実施前に,5 人の高齢者について色変わりガムの測定方法の精度を検討した。測定は「普段の食事をするようにガムをかんでください」と指示し,2 分間咀嚼させた後,色彩色差計を用いて色変わりガムの「赤み」を示す咀嚼能力 a∗値(以下,a∗値とする)を測定した。質問紙項目は①食物が普通にかめるか②かたい食物がかめるか③まぐろのさしみ,かまぼこ,らっきょう,ビフテキ,ピーナッツの咀嚼の可・不可について調べた。解析は a∗値と残存歯数,咬合力および質問紙調査との関連について行った。<br/><b>結果</b> 対象者 5 人の a∗値の変動係数は2.15~3.75%で,測定方法は高い精度を示した。地域高齢者の色変わりガムの平均 a∗値は男性26.0,女性22.8であった。年齢別では,男性は全ての年齢群で有意な差を認めず,加齢に伴う変化は示さなかった。女性は80歳までは年齢による差を示さなかったが,80歳以上に有意な低下を示した。性別では,どの年齢群においても有意な差を認めなかった。男女とも a∗値は残存歯数および咬合力と正の相関関係を認めた。質問紙調査では,全ての項目で咀嚼可群の方が有意に a∗値が高かった。また,残存歯数が20歯未満の者に限っても咀嚼難易度の低い「まぐろのさしみ」と「ビフテキ」を除く全ての項目において咀嚼可群が有意に a∗値が高く,色変わりガムと主観的な質問紙調査との関連を認めた。<br/><b>結論</b> 色変わりガムの測定方法は簡便で,測定精度が高いことが認められた。また,色変わりガムは残存歯数や咬合力および主観的咀嚼能力評価と関連することを認めたことから,地域高齢者の健康づくりにおける咀嚼能力の客観的評価方法として有用であると考える。