著者
渡辺 満久 鈴木 康弘 熊原 康博 後藤 秀昭 中田 高
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

2016.04.14に熊本地震の前震(M6.5)が、04.16には本震(M7.3)が発生した。これらの地震を引き起こした活断層への評価(地震本部、2013)には、指摘すべき大きな問題がある。また、地震断層近傍では、「震災の帯」と呼ぶべき被害の集中域が認められる。このような現象は1995年兵庫県南部地震後にも指摘されていたが、その教訓が生かされたとは思えない。 本震発生時、既知の布田川・日奈久断層に沿って総延長31kmの地表地震断層が現れた。ところが、前震は日奈久断層帯が、本震は(主に)布田川断層帯が起こしたものである(前震と本震は別々の活断層によって引き起こされた)との見解がある。それは、地震本部が布田川・日奈久断層という1つの活断層を、布田川断層帯と日奈久断層帯という別々の活断層として評価しているためである。 明瞭な地震断層が全域で現れたのは本震の時であり、前震の震源域は本震のそれに包括されている。また、都市圏活断層図に示されているように、布田川・日奈久断層は完全に連続した活断層である。これらのことから、別々の断層が連動したという理解は誤っている。かつて地震本部は、連続した布田川・日奈久断層として正しく評価されており、今回の震源域ではM7.2の地震が発生すると予測されていた。ところがその後、変動地形学的な証拠が軽視され、1つの活断層が2つの活断層(帯)に分割されてしまった。それによって想定地震が過小評価され、M7クラスの本震発生への警鐘に結びつかなかった可能性がある。 益城町の市街地では震度7を2度記録したが、本震時の建物被害が著しかった。被害激甚な地域は、南北幅が数100km以内、東西に数km連続する「震災の帯」をなしている。ここでは、新耐震基準に適合している建物までもが壊滅的な被害を被っている。「震災の帯」の中には、益城町堂園付近から連続する(布田川断層から分岐する)地震断層が見出されるため、その活動が地震被害集中に寄与している可能性が高い。ただし、地震断層直上でなくても、近傍における建物物の被害も著しい。 南阿蘇村においては、複数の地震断層が併走して現われた。地震断層直上およびその近傍では、ほとんどの建物が倒壊した。この地域においては、少なくとも5台の自動車が北~北西方向へ横倒しとなっていることも確認した。強いS波が自動車を転倒させ、南阿蘇村における大規模な斜面災害の引き金にもなったと考えられる。 このように、地震断層近傍では、土地のずれに加えて、強震動による被害が集中したと考えられる。堂園付近では、布田川断層の存在は知っていたという声が少なくなかった。しかし、そこに被害が集中する可能性があるとは理解されていなかった可能性が高い。活断層情報の活用の仕方について、再検討すべきであろう。 熊本地震によって、活断層の位置情報が地震防災上極めて重要な情報であることが再確認された。変動地形学的な物的証拠を重視していない地震本部による活断層評価には、非常に大きな問題がある。また、兵庫県南部地震時の教訓を十分に生かすことができなかったのは、活断層情報の活かし方に問題があったと考えられる。防災・減災に向けて、地形学からさらに積極的な提言を続けることが必要であろう。なお、熊本地震の地震断層は既知の活断層の範囲以外にも出現している。「見逃された」理由を検証し、今後の活断層調査に関して解決すべき問題を見極めなければならない。全国の都市圏活断層図の改訂など、熊本地震を貴重な事例として、明確となった問題を解決してゆく必要がある。

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こんな論文どうですか? 熊本地震に関する活断層評価と地震被害の集中(渡辺 満久ほか),2016 https://t.co/7LPgdA5Va3
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