著者
長谷川 徹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

口腔顎顔面領域の外傷や手術後の合併症として、三叉神経に神経麻痺等の障害が起こることがある。このような障害に対し、従来から保存的な治療法として理学療法や薬物療法が選択されてきた。理学療法である高周波の電気刺激では微少血管の拡張、神経伝達速度の上昇、痛覚閾値の上昇などの効果について報告されている。しかし低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての検討は未だ報告されていない。そこで、神経障害に対して低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての研究を行った。まず、一定の刺激により神経系細胞に分化することが報告されている骨芽細胞(MC3T3-E1)に対し低周波・高周波混合の電気刺激を加え検討した。出力は1~4mAで、刺激時間は1~10分間とした。結果、出力に係らず5分間の電気刺激により細胞活性の増大を認めた。次に、ALP活性およびヒアルロン酸の産生について検討した。結果、出力が2mA、10分間電気刺激した群でcontrol群に比べ、有意なALP活性の上昇を認めた。一方、ヒアルロン酸の産生量は、control群と刺激群では変化がなかった。これより低周波・高周波混合の電気刺激は、骨芽細胞の増殖と分化を促すことで、骨形成の増大に関与している可能性が示唆された。また、オトガイ神経支配領域に知覚鈍麻を認めた症例に対し電気刺激療法をおこなった。他覚的な評価を口腔顔面機能学会の規定するスコア化の基準に従いスコア化した。その結果、治療開始後3ヶ月でスコアが改善した。また自覚的な評価をVASにより生活支障度および自覚症状で評価した。それぞれ10例中6例および7例で改善していた。以上より、理学療法である低周波・高周波混合の電気刺激により神経障害が改善する可能性が示唆された。