著者
松永 公浩 インドラ 星野 修 石黒 正路 大泉 康
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.116, no.supplement, pp.48-52, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
5

これまでに、ナンテニンは、胸部大動脈および腎動脈において、KC1およびヒスタミンによる収縮には影響を与えることなく、セロトニンによる収縮の用量作用曲線を顕著に右に平行移動させ、その作用が5-HT2A受容体阻害によることが示唆された。そこで、ナンテニンの構造類縁体を合成し、それらの抗セロトニン作用の構造活性相関を検討した。ナンテニンの6位の窒素原子上の置換基をメチル(ナンテニン)から水素あるいはエチルに置換すると、いずれの場合も活性が顕著に低下した。さらに、トリフルオロアセチル基に置換した類縁体では高濃度においても抗セロトニン作用を示さなかった。以上のことから、窒素原子上のローンペアが活性発現に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、1位のメトキシル基(ナンテニン)を水酸基に置換するとナンテニンより約10倍活性の低下が認められた。また、4位に水酸基を導入すると、顕著な活性の低下が認められた。これらのことから6位の窒素原子上のローンペアが活性発現に極めて重要であり、次いで1位の水酸基がアルキル化していることおよび4位に水酸基などの立体障害が無いことが必要であると考えられた。そこで、受容体結合実験を検討したところ抗セロトニン作用の構造活性相関による解析と一致する結果が得られた。さらに、ロドプシンの構造をテンプレートとして、コンピューター解析により5-HT2A受容体の膜貫通領域の三次元構造を構築し、モレキュラーモデリングによる5-HT2A受容体とナンテニンおよび種々のナンテニン類縁体との相互作用の解析を行った。その結果、ナンテニンより活性が低下した類縁体では5-HT2A受容体との水素結合が、より弱くなっていることが示唆され、構造活性相関で得られた結果をモレキュラーモデリングにより説明することができた。
著者
吉村 剛 インドラヤニ ユリアティ
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.37-45, 2006-06-30
被引用文献数
3

1970年中頃より日本でその被害例が報告されるようになったアメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor (Hagen))の被害の現状とその対策について,現在解析が進みつつある食害生態における特徴とともにまとめた.アメリカカンザイシロアリの被害は全国的に拡大しつつあり,現在では日本全国に薄く広く分布していると考えるべきである.現状の被害報告件数から類推して,日本全国で数千軒以上の被害家屋があると思われるが,その被害は家屋上部,特に屋根部材に集中して発生する.食害行動や樹種嗜好性,および好適摂食環境条件などにおいて,アメリカカンザイシロアリはイエシロアリやヤマトシロアリとは大きく異なっていた.イエシロアリやヤマトシロアリを対象とした現在のシロアリ防除システムではアメリカカンザイシロアリに適切に対応することは不可能であり,新たな防除マニユアルの作成が早急に望まれる.これ以上の被害の拡大を防ぐために,行政-研究者-業界団体-薬剤メーカー-施工業者がスクラムを組んで真摯に取り組む必要がある.