著者
石黒 正路
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.539-544, 2005-11-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11

蛋白質の結晶構造はその立体構造情報のみならず基質やリガンドの認識機構や蛋白質の機能を理解する上で非常に重要な情報をもたらす。蛋白質の結晶構造データは解像度や結晶条件によって異なり, 蛋白質の機能に結びつく構造変化情報も得られる。また, 結晶構造はコンピュータ・シミュレーションと組み合わせることによって, 蛋白質の動的構造や結晶構造未知の蛋白質の立体構造の予測に役立ち, さらに蛋白質に結合する新しい分子の設計に用いられる。これらの手法は構造ゲノミックス・プロテオミックスの分野での研究に重要な役割を果たすものと期待される。
著者
石黒 正路
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.137-148, 1990-04-30 (Released:2010-09-30)
参考文献数
53
著者
石黒 正路
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.361-366, 2004-07-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

β-ラクタマーゼの変異による広範なβ-ラクタム剤への親和性と基質分解能の向上, そして変異によるPBPのβ-ラクタム剤への親和性の低下によってβ-ラクタム系抗菌薬に対する耐性が獲得されており, β-ラクタム剤にはこれらの耐性を克服できる新しい誘導体の開発が望まれる。すなわち, 変異したPBPに対して高い親和性を示し, 変異したβ-ラクタマーゼ (ESBL) に抵抗性を有する構造をもつβ-ラクタム剤がデザインされる必要がある。X線結晶解析により, PBPおよび多くのβ-ラクタマーゼの結晶構造が明らかとなり, またMRSAのPBP2aやβ-ラクタム系抗菌薬の親和性が低下したPBP2xのミュータントの立体構造も明らかにされている。このような構造情報から得られる重要なアミノ酸残基の役割の解明とコンピュータによるドッキングシミュレーションを組み合わせることによって, β-ラクタム剤の加水分解機構を解明でき, これをもとにMRSAに対して親和性を有し, β-ラクタマーゼに安定な5, 6-シスペネム化合物などのデザインが可能となっている。
著者
松永 公浩 インドラ 星野 修 石黒 正路 大泉 康
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.116, no.supplement, pp.48-52, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
5

これまでに、ナンテニンは、胸部大動脈および腎動脈において、KC1およびヒスタミンによる収縮には影響を与えることなく、セロトニンによる収縮の用量作用曲線を顕著に右に平行移動させ、その作用が5-HT2A受容体阻害によることが示唆された。そこで、ナンテニンの構造類縁体を合成し、それらの抗セロトニン作用の構造活性相関を検討した。ナンテニンの6位の窒素原子上の置換基をメチル(ナンテニン)から水素あるいはエチルに置換すると、いずれの場合も活性が顕著に低下した。さらに、トリフルオロアセチル基に置換した類縁体では高濃度においても抗セロトニン作用を示さなかった。以上のことから、窒素原子上のローンペアが活性発現に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、1位のメトキシル基(ナンテニン)を水酸基に置換するとナンテニンより約10倍活性の低下が認められた。また、4位に水酸基を導入すると、顕著な活性の低下が認められた。これらのことから6位の窒素原子上のローンペアが活性発現に極めて重要であり、次いで1位の水酸基がアルキル化していることおよび4位に水酸基などの立体障害が無いことが必要であると考えられた。そこで、受容体結合実験を検討したところ抗セロトニン作用の構造活性相関による解析と一致する結果が得られた。さらに、ロドプシンの構造をテンプレートとして、コンピューター解析により5-HT2A受容体の膜貫通領域の三次元構造を構築し、モレキュラーモデリングによる5-HT2A受容体とナンテニンおよび種々のナンテニン類縁体との相互作用の解析を行った。その結果、ナンテニンより活性が低下した類縁体では5-HT2A受容体との水素結合が、より弱くなっていることが示唆され、構造活性相関で得られた結果をモレキュラーモデリングにより説明することができた。
著者
石黒 正路
出版者
一般社団法人 日本質量分析学会
雑誌
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.135-139, 1999 (Released:2007-10-16)

Computational methods for drug design and its application for structure-based drug design using crystallographic data and NMR solution structural data were briefly described in view of interaction of ligands with or without structures of the target receptors. Analysis of the hydrolytic mechanism of β-lactamases whose 3D stuctures has been known led to understanding a specific recognition of β-lactam antibiotics and to design of a new candidate for anti-MRSA antibiotics. Conformational analysis of peptide derivatives whose receptor structures have not known is the other example for design of new skeletons of nonpeptide compounds. Receptor-bound structure analysis of antagonist or agonist peptides suggested different conformations of the peptides. This may be due to a different receptor structure as a consequence of a large structural change of receptors upon binding of agonists.
著者
大貫 敏男 長友 孝文 石黒 正路
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.supplement, pp.123-126, 1999 (Released:2007-02-27)
参考文献数
8

二次元電子密度マップから推定されたbactehorhodopsinあるいはfrog rhodopsinの構造をテンプレートとして、コンピュータ解析によりヒト-アドレナリン性β受容体の膜貫通部位の三次元構造を推定した。それぞれのテンプレートに由来する二つのモデルにおいて、推定されたα-helix領域、およびその相対位置あるいは配向性などに違いが認められた。このモデルを用い、代表的β受容体アンタゴニストであるpropranolol、および当研究室が薬理学的研究を行ってきた持続性β受容体アンタゴニストであるbopindolol(4-(3-t-butylamino-2-benzoyloxypropoxy)-2-methylindole)の結合様式を推定した。どちらのモデルを用いても、アンタゴニストの結合様式を推定することができた。しかし、両モデルにおいて推定された結合様式は異なっていた。すなわち、両モデルにおいてN末端から3、4、5および6番目のα-helixが結合に関与すると推定された点では一致するものの、関与するであろうアミノ酸残基が異なっていた。さらに、推定された結合様式からpropranololおよびbopindololのサブタイプ選択性、つまりβ1およびβ2サブタイプに対して高親和性であるが、β3サブタイプに対しては低親和性である点を一部説明することができた。
著者
石黒 正路 西原 達郎 田中 里枝
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.915-927, 2001-12-01 (Released:2002-09-27)
参考文献数
33
被引用文献数
5 8

An orally active penem antibiotic, Farom (generic name: faropenem), was designed by the conformational analysis of active and inactive penem derivatives. Faropenem showed potent activity against a wide variety of bacteria including extended-spectrum β-lactamase (ESBL)-producing ones. The mechanism of the stability against ESBL was elucidated by modeling the Michaelis complex of faropenem and Toho-1, an ESBL. Modeling of a complex of faropenem at the active site of a penicillin-binding protein 2 (PBP2) model suggested the characteristic affinity for faropenem with PBP2 of Escherichia coli. Faropenem has been totally synthesized from (R)-1,3-butanediol. The synthetic intermediate, a 3-hydroxyethyl-4-acetoxyazetidinone derivative, was efficiently prepared by the 2+2 coupling of a optically active vinyl-sulfide derivative and chlorosulfonyl isocyanate, followed by the substitution of the acetoxy group for the thiophenyl group at the C-4 position.
著者
石黒 正路 今城 精一
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.427-436, 1996-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2

Complex structures of neocarzinostatin (NCS) and β-lactamase/β-lactam antibiotics were built using NMR and crystallographic data of the proteins. On binding of ligands to proteins, particular amino acid side chains as well as ligands show dynamic character to exhibit specific molecular recognition. NMR studies and conformational analysis of the Phe 78 side chain of NCS revealed that the Phe 78 residue plays a major role on the chromophore binding through conformational change of the side chain aromatic moiety. Crystal structures and computational modeling of the enzyme-ligand complexes indicated that at the active site, the carboxylate of β-lactam antibiotics induces the conformational change of the Lys 73 residue and acts as a trigger of the hydrolytic reaction (acylation). Modeling of the acyl-enzyme structures also suggested the role of a mobile water molecule at the active site for deacylation. Experimental (NMR and X-ray crystallography) and computational results provided a fruitful information about molecular interaction between proteins and ligands.
著者
石黒 正路 今城 精一
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.722-731, 1984-08-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
52
被引用文献数
1 1

Recent application of three dimensional computer graphics technics has widely expanded to molecular modeling. This article describes a brief history of computer graphics use in molecular modeling, function of hardware and software and its application to molecular modeling in Suntory computer aided drug-design system.