著者
渡邊 康子 薗田 徹太郎 菊地 香織 一ノ瀬 充行
出版者
財団法人さんりく基金
雑誌
三陸総合研究
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-11, 2004-01-30

琥珀入り御香が生体にどのような生理的効果を及ぼすかを、脳波をその指標として検討した。被験者には、一定の安静状態の後に琥珀入り御香の香りを嗅いでもらい、その際に認められる脳波の変化を記録・解析した。その結果、頭頂・後頭領域において脳波が覚醒を示す高周波帯域へシフトしていることから、御香の香り刺激により覚醒状態へ移行したと考えられる。さらに、御香を燻らせている間よりも煙が止んだ後からα波レベルが上昇していた。したがって、御香の香りが薄らいでからの神経活動レベルの安定状態(リラックス)は、御香の成分を吸引することによる事後効果(after effect)と考えられた。以上のことから、琥珀入り御香には、香中のリフレッシュ効果ならびにその後のリラックス効果があることが示唆された。琥珀の持つこのような生体への効能を、新たな製品開発に活かしていくことは、三陸地域の振興に大きく貢献すると考えられる。
著者
一ノ瀬 充行
出版者
島根医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

補体成分C5aはマクロファージにおいて走化性の亢進、スーパーオキサイド産生、IL-1・TNF放出促進作用等が知られている。チオグリコレート刺激により誘導した腹腔マクロファージにC5aを微少投与したところtonicとphasicの2種の外向き電流を生ずることが見出された。両成分とも逆転電位は外液K濃度に依存して変化した。KチャネルブロッカーであるキニジンとTEAにより抑制された。intermediate型のCA^<2+>依存性K^+チャネルブロッカーのキャリブドトキシンはphasic相のみ抑制した。外液Ca^<2+>を除去するとphasic成分は消失したがtonic成分は存続した。以上の結果よりC5aによる活性化に伴いCa^<2+>依存性と非依存性の二種のK^+チャネルが活性化されことが明らかとなった。神経修飾物質と考えられているニューロメジンCがマクロファージ貪食能を亢進したり、LPSの作用を増強することが知られており、神経系から免疫系への介在物質として作用することが考えられている。電気生理学的に検討したところ、ニューロメジンCにより外向き電流を生じた。しかし、その関連ペプチドであるニューロメジンB、ボンベシンやサブスタンスPで顕著な作用が認められなかった。外液K^+、C1^-依存性を調べたところ、K^+濃度変化にのみ逆転電位が変化した。TEA、キニジンにより弱いながら抑制されたが、アパミンやキャリブドトキシンによっては抑制されなかった。外液Ca^<2+>を除去したところ、完全に消失した。以上の結果、ニューロメジンCによって生ずるK^+電流はC5aによって生ずる二種のK^+チャネルとも異なるK^+チャネルを活性化することが明らかとなった。以上、二つの活性化物質の研究よりマクロファージ活性化過程において、K^+チャネルが活性化されることが電気生理学的に明らかとなった。
著者
一ノ瀬 充行 砂子 拓也 澤 和也 薗田 徹太郎 ICHINOSE Mitsuyuki SUNAKO Takuya SAWA Kazuya SONODA Tetsutaro
出版者
社団法人日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-36, 2006-03

Amber is the fossilized resin or sap of pine trees which grew in forests around 45-100 million years ago. Amber is used for jewelry and decorative articles nowadays, but it was also used for healing and health enhancement in Eastern and Western countries in ancient times. In order to investigate the physiological effects of amber when burning it like incense, we analyzed the contingent negative variation(CNV) of electroencepha-lograms(EEG) and autonomic nervous activities such as respiratory interval, heart rate and fluctuation of heart beat interval. Amber used in the present study was mined in Kuji, Iwate Prefecture. Areas of CNV on 19 out of 23 recording spots were increased after amber incense stimulation. On the other hand, the well-known incenseagalloch, i.e.Jinko, enhanced the area of CNV less effectively than amber incense. During CNV procedures, the respiratory interval was reduced and the heart rate was increased. These parameters were changed by amber incense. Reduction of amplitude in high frequency fluctuation of the heart rate, which may correspond to activities of the parasympathetic nervous system, was suppressed during exposure to amber incense. It is known that CNV represents activities of expectation, conation, motivation and attention in humans and activation of theparasympathetic activities induces relaxation in the human mind. These data suggested that amber incense enhanced expectation, conation, motivation and attention in humans, and also suggested that a stressful burden such as the CNV trial was alleviated by amber incense in the case of the present subject.琥珀は、4500万~1億年前のマツ科植物の樹脂や樹液が化石化したものである。現在、琥珀は宝飾品や装飾品として使われているが、古代より洋の東西問わず癒しや健康増進のために使われてきた。琥珀をお香のように燻らせた時に、生体にいかなる生理作用があるかを調べるために、脳波随伴陰性変動(CNV)及び自律神経活動を解析した。用いた琥珀は、岩手県久慈産である。琥珀のお香の刺激により、23ヶ所の脳波測定電極のうち、19ヶ所でCNV面積が増大した。一方、お香として良く知られる沈香の場合には、琥珀に比べCNV面積の増加はわずかであった。CNV試行中に、呼吸数と心拍が増加した。これらの指標は、琥珀お香の刺激中に変化があった。心拍変動の高周波成分(副交感神経の活性)の減少が、琥珀お香の刺激中に抑制された。CNVは期待感、意志、動機や集中力の程度を表し、また副交感神経活性化はリラックス状態を誘導するとされている。以上の結果は、本研究の被験者において琥珀お香が生体における期待感、意志、動機や集中力を促進し、また琥珀お香の最中にはCNVなどのストレス不負荷を軽減することができたことを示唆した。