- 著者
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田上 雅浩
一柳 錦平
嶋田 純
- 出版者
- 日本水文科学会
- 雑誌
- 日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.3, pp.73-91, 2013-08-31 (Released:2013-11-15)
- 参考文献数
- 59
- 被引用文献数
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日本全国で降水の安定同位体比やd-excessの観測研究が多く行われてきたが,いまだに日本全国の時空間変動は明らかにされていない。本研究では,過去に日本全国で観測された48地点の降水の安定同位体比のデータを収集し,その季節変動と空間分布を明らかにした。その結果,降水δ18Oは,沖縄では冬季に高く,それ以外の地域では春季と秋季に高かった。降水δ18Oが高くなるのは,水蒸気フラックスの上流部で降水量/可降水量が小さく,蒸発量/可降水量が大きいためと考えられた。また,降水δ18Oは,年・春季・冬季には緯度効果が見られた。しかしながら,夏季には南西からの大きい水蒸気フラックスによって水蒸気フラックス上流部の降水量/可降水量と蒸発量/可降水量の低く,降水δ18Oは−10‰~−6‰の範囲に分布していた。また,秋季には台風によってδ18Oの低い降水が特に西日本や沖縄に供給されるため,−10‰~−4‰の範囲に分布していた。降水d-excessは日本全国で夏季は10‰より低く,冬季は15‰以上と高かった。秋季や冬季には,日本海側の降水d-excessは太平洋側より高い傾向が見られた。したがって,太平洋側・九州・沖縄地方では冬季の降水d-excessが20‰以上,または夏季より高くても日本海起源であると推定することはできない。ただし,本研究で使用したデータは観測期間が異なるため,日本全国で降水の安定同位体比の集中観測が必要である。