著者
飯田 充 塩野 元美 折目 由紀彦 中田 金一 秦 光賢 瀬在 明 山田 英明 柏崎 暁 木下 潤一 根本 光洋 幸島 孝志 瀬在 幸安 斎藤 敏三
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.821-825, 1996-08-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
10

心原性ショックにより臓器血流の不均等分布が生じた生体に対し, 完全拍動流人工循環と, 完全無拍動流人工循環が主要臓器に対していかに影響するかを, 腎臓と皮膚に着目して実験的に検討を行った. ブタ10頭(体重39.2±3.6kg)を対象とし, 右心バイパスは遠心ポンプを使用し, 左心バイパスは, 拍動流を空気駆動型補助人工心臓で行い, 無拍動流を遠心ポンプを使用して循環した. 心原性ショックを作成後, 大動脈圧を一定に保った. 脈圧はP群は45.7±9.6mmHg, NP群ではほぼ完全に定常流を示した. 流量は約40ml/kg/minと低かった. 腎皮質血流量においてP群が有意に血流の増加を認め, 腎皮質髄質血流量比において, 拍動流群が不均等分布の改善傾向が見られた. 血流の不均等分布を起こした生体にとって, 脈圧は重要であり, 臓器血流を改善させ, 臓器不全を回避するためには, 無拍動流人工循環下では十分な生体の維持は難しいものと考えられた.
著者
猪野 崇 秦 光賢 本間 琢 中田 金一 谷口 由樹 折目 由紀彦 秋山 謙次 三俣 昌子 塩野 元美
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.312-319, 2013-12-01 (Released:2014-12-30)
参考文献数
28

目的: 今回我々は大動脈外科における新しい 脳保護法及び体外循環法として軽度低体温循環停止・急速冷却復温法を考案した.従来法は,20°C の超低体温とし,復温も緩徐に行うことが一般的であった.我々は 28°C の軽度低体温・循環停止からの急速な温度変化によっ ても脳に対して影響しないと推測し,実験的検討を行った.方法:体重,約 40 kg のブタを用いて完全体外循環モデルを作成し,実験モデルを以下の 3 群 (各 n = 10) に分類した.A 群:直腸温 20°C の高度低体温で 20 分間の循環停止後,直腸温と人工心肺送血温の差を 5°C 以内に保ち,緩徐に 37°C まで復温する.B 群:28°C の軽度低体温で 20 分の循環停止後 A 群と同様に復温する. C 群:28°C 軽度低体温で 20 分の循環停止度後,38°C に加温した血液を送血することにより急速に復温する.人工心肺開始前,冷却完了時,復温開始時,復温完了時の 4 時点における血液生化学検査,CK-BB, S-100 及び脳組織血流,脳酸素分圧,頸静脈酸素飽和度について比較検討し,実験終了時に大脳皮質・海馬組織を採取し,病理学的に検討した.結果: 血小板数は復温完了時において A 群 が他の 2 群に比較し有意に低値であった.各測定時において BUN, Cr は群間に有意差はなかったが,復温完了時において AST は C 群が他の 2 群に比して有意に低値であり,LDH は A 群が他の 2 群と比較して有意に高値であった.CK-BB, S-100 は血中,髄液中ともに A 群が他の 2 群と比較して有意に高値であった.脳組織血流量は冷却完了時,復温開始時,復温完了時において A 群が他の 2 群と比較して有意に低値であった.脳酸素分圧に関しては復温開始時において,A 群が他の 2 群と比較して有意に低値であった.脳組織における細胞変性数は 3 群間で有意差は認められなかった.結論:28°C の軽度低体温循環停止に続く急速復温法は脳組織に対する影響は少なく,血液凝固障害の予防のためにもより有効な方法であると考えられた.
著者
有本 宗仁 瀬在 明 中田 金一 大幸 俊司 石井 雄介 八百板 寛子 畑 博明 塩野 元美 樋口 義治 平山 篤志 岡田 京子 山田 勉
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.186-190, 2015-08-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
15

症例は55 歳女性,7 日前より全身倦怠感を認め,かかりつけ医(心療内科)を受診した.その後,症状の増悪を認め,前医に搬送された.心筋逸脱酵素の上昇を認め,緊急心臓カテーテル検査を施行したが,冠動脈の狭窄病変は認めなかった.血行動態が保てず,大動脈バルーンパンピング,経皮的心肺補助装置を挿入し当院へ搬送となった.劇症型心筋炎の診断で,左心補助人工心臓による循環補助を行ったが,右心不全の悪化を認め6 日後に,右心補助人工心臓による補助も施行し,加療を行うも奏功せず入院11 日目,死亡退院となった.劇症型心筋炎は稀な疾患であり,両心室補助人工心臓を施行した1 例を経験したので報告する.
著者
吉武 勇 瀬在 明 塩野 元美
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.8-11, 2014-02-01 (Released:2015-05-22)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Angiotensin II receptor blockers (ARB) represent a class of drugs that inhibit the renin angiotensin system in the treatment of hypertension. However, the efficacy of ARB is not only due to their hypotensive effects but also to their organ protective effects. In this paper, we clarify the characteristics and the latest knowledge to explain the recent trends in the use of angiotensin II receptor blockers.

1 0 0 0 OA PDE III阻害薬

著者
飯田 充 塩野 元美
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.256-257, 2013-10-01 (Released:2014-12-30)
参考文献数
8

Phosphodiesterase III (以下 PDE III) 阻害薬は,PDE III を選択的に心筋および,血管平滑筋で阻害し,心筋収縮力増強と血管拡張作用を惹起するため,inodi-lator と呼ばれている.循環器領域では,現在では第一選択としては使用されてはいないが,ドブタミン,βブロ ッカーとの併用がよい成績をあげている.心臓外科領域においては,人工心肺中からの離脱時,冠動脈バイパス術のグラフト攣縮予防,腹部臓器灌流障害が起こりうる急性大動脈解離で使用している.
著者
西井 竜彦 村松 高 四万村 三恵 古市 基彦 大森 一光 塩野 元美
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.972-975, 2010-09-15 (Released:2011-02-22)
参考文献数
8

大血管手術以外の周術期に発症した非常に稀な脊髄梗塞の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性,左肺癌に対して硬膜外併用全身麻酔下に,左上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.術後3時間後より,右下肢,右手関節以下の麻痺が認められた.硬膜外カテーテルの影響が考えられたため,直ちに硬膜外注入を中止した.翌日になりさらに麻痺が進行し,頭部・脊椎MRIが施行されたが,診断がつかなかった.術後第3病日に施行された頚胸髄MRIでC1からTh2までの広範囲の脊髄梗塞が認められた.ステロイド,高浸透圧性利尿剤の投与で麻痺の改善傾向を認めたため,27病日リハビリ病院転院となった.
著者
宮本 晃 長谷川 隆光 北村 信三 梅田 正五 川野 幸志 進藤 正二 陸川 秀智 塩野 元美 小笠原 弘二 並木 義夫 折目 由紀彦 瀬在 幸安 渥美 和彦 藤正 巌 井街 宏
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.604-607, 1986

開心術後のLOS症例と, 体外循環からの離脱困難症例2例に補助循環として補助人工心臓を使用した。症例1は61才女性, AR+MRの診断にて二弁置換術を施行, 症例2は23才女性, MR+TRの診断にて僧帽弁置換術と三尖弁弁輪形成術を施行, 症例3は急性心筋梗塞症に心室中隔穿孔と左室瘤を合併し, 穿孔部閉鎖術と瘤切除を施行した。このうち2例は離脱可能であったが, 3例とも救命できていない。補助人工心臓の効果についての異論はないが, 成績向上のためには補助心臓シヌテム運用面における問題点を解決する必要があり, 本シヌテムの改良点を含めて経験症例を検討した。補助心臓ポンプの容量およびカニューレのサイズは, 抗血液凝固剤の使用を減少させる意味で最小限とした。適応基準については既に確立されているが, 運用面では補助心臓適用時期の問題, 補助心臓とIABP併用の際の駆動時相の問題, さらに補助循環中の心拍出量等について解析を加えた。
著者
折目 由紀彦 塩野 元美 瀬在 明 瀬在 幸安
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.64-67, 2001-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5

待機的冠動脈バイパス術の施行症例に対しhANPを体外循環開始時から低用量投与し,術中・術後の循環動態,体液代謝に及ぼす影響について検討した.hANP投与群は0.03-0.05μg/kg/時を20時間投与し,その後0.02μg/kg/時に減量して24時間で中止した.循環動態については,hANP群はnonhANP群(hANP無投与)と比較して収縮期大動脈圧,平均大動脈圧,収縮期肺動脈圧,肺動脈楔入圧,全身血管抵抗,肺血管抵抗などの低下,心係数の上昇など血行動態の改善が認められた.体液代謝については,hANP群は血中ANP,サイクリックGMPの上昇,血漿レニン活性,血漿アンジオテンシン-IIおよびアルドステロン濃度の抑制などの効果が得られ,腎機能の低下も認めなかった.