著者
若山 清香 三宅 正史 若山 照彦
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.152-158, 2005-10-01

近年、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた再生医療への応用研究が始まっているが、免疫拒絶反応に関する問題は依然として解決していない。そこで免疫拒絶反応の起こりえない、患者自身の体細胞から核移植技術によって作りだされたES細胞の研究に注目が集まってきた。これまでの研究から、核移植で作られた体細胞由来胚性幹細胞(nES細胞)は受精卵由来ES細胞と同様に多能性を持ち、キメラマウスの生殖細胞にも寄与できることが分かっている。また、その樹立効率にはマウスの系統差や性差による違いが認められず、核移植に用いるドナー細胞の由来に依存しないこと、さらにはそのnES細胞の樹立する効率が高いことなども明らかとなっている。しかし、ES細胞とnES細胞がまったく同質なものか吏に検討する必要があると考えられる。本稿ではこれまでに明らかになったnES細胞の特性およびその応用例について紹介する。
著者
Thuan Nguyen Van 原山 洋 三宅 正史
出版者
THE SOCIETY FOR REPRODUCTION AND DEVELOPMENT
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.157-166, 2002
被引用文献数
2 5

The aim of this study was to determine the influence of the homogeneity of genomic components and ploidy on the <i>in vitro</i> development of porcine parthenogenetic oocytes to the blastocyst stage. <i>In vitro</i> matured oocytes were subjected to a single pulse of electro-stimulation (El-St; 100 μsec, 1,500 V/cm) for activation. First, the activated oocytes were cultured for 6, 16, 18, 20 and 22 h after El-St, and examined for the timing of the first cleavage of parthenogenetic haploids. Next, the effects of the timing and duration of cytochalasin B (CB) treatment on inhibition of the first cleavage of haploids were examined in order to produce homogenous parthenogenetic diploids. Then the developmental ability to the blastocyst stage was compared among activated oocytes with genomic components of haploid (without CB treatment), homogeneous diploid (nn-diploid, CB treatment for 6 h from 20 h after El-St), and heterogeneous diploid (nn'-diploid, CB treatment for 4 h immediately after El-St). Most haploids were at the prophase to telophase of the first cleavage between 16 and 22 h after El-St. When the haploids were treated with 5.0 μg/ml CB for 6 h from 20 h after El-St, their first cleavage was efficiently suppressed, and most of them (84%) became diploids. The frequency of parthenogenetic development to the blastocyst stage was significantly lower in haploids (5%) than in nn-diploids (48%, P<0.01) or nn'-diploids (57%, P<0.01). These results shows that ploidy of activated oocytes, but not the homology of genomic components, affects the development of porcine parthenogenetic oocytes to the blastocyst stage.
著者
入谷 明 三宅 正史 内海 恭三 細井 美彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

一卵性多子生産は一つの受精卵から数多くの同一遺伝子構成の個体を複製するという点で、胚の効率生産のみならず、遺伝的検定材料としての利用面に貢献できるものと思われる。しかし胚発生の過程において細胞は増殖と分化を繰り返して個体に発生する。胚の単離割球が個体に分化発生するためには全能性(個体への発生能力)を保持しているか、人為的に賦与させる必要がある。マウス胚では2細胞期の胚ゲノムの活性化が起こり、4細胞期胚の個々の単離割球全てには個体への発生能力がみられていない。しかし羊では8細胞期胚の単一割球の発生能力が報告されている。本研究ではウシとヤギ胚の初期胚の単離割球の発生能を調べると共に、それらの1卵性多子生産を試みた。胎児部と胎盤部に発生する部分に分化した胚盤胞期胚を均等に2分離して1卵性双生児は容易に作出された。金属刃での顕微操作で90%以上の確立で分離され、ウシでは60%以上の受胎率と20対以上の産子が得られた。8細胞期由来2割球(2/8)からはヤギではウサギ卵管中で37%の胚盤胞が得られ、4個の移植から1頭の産子が得られた。ウシでは同様にして20%の胚盤胞が得られた。他にウシでは初期分割期胚の回収が困難なため体外受精由来胚が実験に供され、1/8割球と2/8割球の胚盤胞への発生能はウサギ卵管中で20%であった。ヤギやウシでの1/8〜と2/8細胞の胚盤胞への発生能が認められたので、2/8細胞に1/2〜1/4細胞又は1/8細胞を集合させて2/8細胞の胚盤胞期以後の発生能を改善しようとした。さらに1/8細胞に未受精除核卵母細胞を電気融合させて、受精卵を再構成させた。ヤギ及びウシとも体内受精発育卵及び体外受精発育卵を材料として、8細胞からの割球の単離、融合用の除核卵母細胞の調整、及びそれらの電気融合、再構成胚の胚盤胞期への発生能の検定など一連の基礎技術が開発され、ヤギ・ウシ胚とも胚盤胞が得られているので今後の一卵性8つ子の生産が期待させる。