著者
鳥本 一匡 國安 弘基 藤本 清秀 三宅 牧人
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【実験Ⅰ】目標は「膀胱における尿再吸収を制御する生理的条件の検討」であった。①「尿組成の影響」:生理的浸透圧を大きく超える塩化ナトリウム溶液やブドウ糖液は、再吸収を促進しなかった、②膀胱壁伸展の影響:機能的容量以上で再吸収が始まり、約200%までは容量依存的に吸収量が増加した、③体水分の影響:検討できなかった。結果は予想通りであり、Na+イオン吸収量に依存して膀胱腔内の液量は減少した。【実験Ⅱ】目標は「膀胱に発現するclaudinサブタイプの確認」であった。生理食塩液による膀胱伸展により、claudin-3, -6, -11の発現が増加することを確認した。また、追加実験において同様の刺激により、aquaporin-2の発現が増加することを確認した。さらに、RNA干渉によりaquaporin-2の発現を抑制することで、膀胱での再吸収が抑制されることを突き止めた。【Neurourology and Urodynamics受理済み論文の詳細】ラット膀胱を生理食塩液 1.0mLで3時間伸展すると、aquaporin-2の発現が大きく促進されてNaイオンとともに水が膀胱壁より吸収される。aquaporin-2の発現を抑制すると、水およびNaイオンの吸収量が大きく減少する。aquaporin-2は主に尿路上皮に発現しており、組織学的にも再吸収に関与していると考えて矛盾しない。わずか3時間の過程で再吸収に関わる遺伝子および蛋白の発現変化は予想していなかったことであり、再吸収機構を検証する上で非常に興味深い知見である。
著者
三宅 牧人 桑田 真臣 穴井 智 辰巳 佳弘 井上 剛志 千原 良友 平尾 佳彦 藤本 清秀
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.373-381, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
20

膀胱癌に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)を使用した蛍光膀胱鏡補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の診断精度および膀胱内再発予後の向上について検討した.膀胱癌96例を対象とし5-ALA溶液を経口または膀胱内投与し,白色光モードおよび赤色蛍光検出モードを切り替えながら膀胱内を観察した.採取した膀胱上皮組織の病理診断結果とモード別の画像所見から診断精度を評価した.白色光モードと比較して,蛍光検出モードでは特異度は低下したが(76.3% vs. 白色光84.6%),癌検出感度は向上した(84.5% vs. 白色光71.6%).蛍光膀胱鏡補助下TURBT症例と従来の白色光下TURBT症例をhistorical controlとして再発率を比較したが有意な差は認めなかった.蛍光膀胱鏡補助下TURBTは,診断薬5-ALAに起因する重篤な副作用もなく,癌の検出に有用で安全な手技であることが示されたが,治療成績については今後の多数例での前向き比較試験での評価も必要である.
著者
中井 靖 藤本 清秀 三宅 牧人 堀 俊太 森澤 洋介 大西 小百合
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

膀胱癌細胞を鉄で処理すると癌細胞が増殖し、5-アミノレブリン酸(ALA)で処理すると細胞増殖が抑制された。ALAを投与すると、膀胱癌細胞のミトコンドリアにおける鉄の発現が低下し、さらに、膀胱癌細胞内のフェリチン(鉄の蓄積)の発現が低下した。これは、膀胱癌細胞が増殖するために必要な鉄が、ALAによってミトコンドリア内で利用され膀胱癌細胞内での鉄が減少し、膀胱癌細胞の増殖が抑制される可能性が示された。このことはALAが新たな膀胱癌に対する治療薬となる可能性が示唆された。