著者
江崎 裕敬 井口 貴文 谷脇 正哲 山本 裕貞 土井 宏 三宅 隆之 桜田 真己
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.169-177, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
26
被引用文献数
3 3

心不全に対する西洋医学的治療は飛躍的に進歩しているが,西洋薬と機械的補助を用いても治療に難渋する症例は未だ存在する。このような重症難治性心不全患者に対して推奨されている標準治療に加え漢方薬を用いることで病態の改善が得られるかは判然としていない。そこで当院にて過去2年間に木防已湯を用いた重症難治性心不全患者を後ろ向きに検討した。研究期間は2013年4月から2015年4月とし,この期間に木防已湯が投与された患者12人の自覚症状の変化,血清 BNP 濃度,左室駆出率などについて後ろ向きに検討した。投与前後で血清 BNP 濃度は796.8 ± 830.8 g/ml から215.6 ± 85.5 pg/ml(p < 0.01)へ減少し,全例において自覚症状の改善を認めた。左室駆出率含め他のパラメーターに関しては有意差を認めなかった。西洋医学的対処が限界に達した患者において木防已湯の投与は有用である可能性が示唆された。
著者
佐久川 弘 新垣 雄光 増田 直樹 三宅 隆之 智和 正明 平川 剛
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.84-93, 2005-03-10
参考文献数
40
被引用文献数
3

神奈川県伊勢原市大山(標高1252m)の南側斜面で主としてみられるモミ枯れの要因である大気汚染の影響を評価するため, 阿夫利神社下社(標高約700m)において大気中の過酸化水素(HOOH)および有機過酸化物(ROOH)濃度を1998年8月23日〜8月26日に2〜3時間毎に測定した。過酸化物の測定には蛍光法を用い, カタラーゼとの反応速度の相違を利用した分別法により, HOOHとROOHs(総量)を測定した。また, 同時に気温, 湿度, 日射, オゾン(O_3), 窒素酸化物(NO, NO_2), 風向, 風速の測定も行った。HOOHの濃度範囲は0.8-4.0ppbvであり, 昼間高く, 夜間低い日周変化を示した。O_3濃度は, 3.1-70ppbvであり, HOOHと同様な日周変化を示し, HOOH濃度との正の相関が見られた。ROOHsは, 0.6-2.2ppbvでこの期間推移したが, その日変化はHOOHと逆の傾向があり, 昼間の光化学反応および夜間の化学反応の両方を考慮する必要がある。これらの結果から, 大山では昼間はHOOHがO_3と同様に光化学的に発生し, ROOHsも何らかの反応を通して生成する可能性が示唆された。両過酸化物とも高濃度に存在するので, モミ枯れとの関連性を今後調査する必要がある。