著者
赤根 幸子 牧野 慎也 橋本 典親 八束 陽介 河井 裕 竹田 一彦 佐久川 弘
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.185-196, 2004-03-05
被引用文献数
2

陸起源の溶存有機物濃度の高い広島湾において2000年を除く1996年から2002年の春季(5月,6月),及び夏季(8月)に海水を採取し,蛍光法を用いて海水中道酸化水素濃度の測定を行った。道酸化水素濃度の日変化や鉛直分布を調べるとともに,船上での光照射実験及び分解実験から道酸化水素の生成速度及び半減期の見積り,また環境諸要因との相関関係などを調査研究した.その結果,道酸化水素濃度は昼間(143〜448 nmol L^<-1>)の値が,夜間(85〜259 nmol L^<-1>)よりも高く,また,表面水で高く水深が深くなるにつれて減少する傾向を示した。道酸化水素の生成速度は8.0〜16 nmol h^<-1>, 半減期は12〜14hであり,報告例がある他の海域と比べて表面海水中濃度は高く,生成速度,半減期ともに速いものであった。また,広島湾表面海水は閉鎖性の高い海域の特徴として,河川水の流人の影響を強く受けることから主に塩分,水温が道酸化水素濃度を左右する要因であること,他方,微生物による分解作用も強く受けていることが実験的に示された。
著者
佐久川 弘 竹田 一彦 山崎 秀夫 チドヤ ラッセル サンデー マイケル アデシナ アデニュイ ダーバラー アリー アブデルダム シェリフ モハメド モハメド アリ カオンガ チクムブスコ チジワ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

瀬戸内海において海水、堆積物、生物試料を採取し、海域による農薬汚染の進行度の評価を行い、瀬戸内海全域にわたる汚染の歴史的変遷を明らかにした。生物試料中の農薬濃度の測定から、食用魚等の食品としての安全性を評価し、水生生物へのリスクアセスメントを行った。さらに、瀬戸内海の海水等の農薬濃度、農地等での農薬使用量、船底塗料の出荷量から、過去の農薬の物質収支の変遷に関して解析を行った。その結果、測定した8種類の農薬のうちで、陸地で使用されるダイアジノン(有機リン系殺虫剤)がすべての試料において、比較的高濃度で存在し、水産食品としての安全性への懸念や水生生物に対する負の影響が認められることを明らかにした。
著者
佐久川 弘 新垣 雄光 増田 直樹 三宅 隆之 智和 正明 平川 剛
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.84-93, 2005-03-10
参考文献数
40
被引用文献数
3

神奈川県伊勢原市大山(標高1252m)の南側斜面で主としてみられるモミ枯れの要因である大気汚染の影響を評価するため, 阿夫利神社下社(標高約700m)において大気中の過酸化水素(HOOH)および有機過酸化物(ROOH)濃度を1998年8月23日〜8月26日に2〜3時間毎に測定した。過酸化物の測定には蛍光法を用い, カタラーゼとの反応速度の相違を利用した分別法により, HOOHとROOHs(総量)を測定した。また, 同時に気温, 湿度, 日射, オゾン(O_3), 窒素酸化物(NO, NO_2), 風向, 風速の測定も行った。HOOHの濃度範囲は0.8-4.0ppbvであり, 昼間高く, 夜間低い日周変化を示した。O_3濃度は, 3.1-70ppbvであり, HOOHと同様な日周変化を示し, HOOH濃度との正の相関が見られた。ROOHsは, 0.6-2.2ppbvでこの期間推移したが, その日変化はHOOHと逆の傾向があり, 昼間の光化学反応および夜間の化学反応の両方を考慮する必要がある。これらの結果から, 大山では昼間はHOOHがO_3と同様に光化学的に発生し, ROOHsも何らかの反応を通して生成する可能性が示唆された。両過酸化物とも高濃度に存在するので, モミ枯れとの関連性を今後調査する必要がある。