著者
錦戸 典子 山﨑 恭子 三橋 祐子 白石 知子 掛本 知里
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代社会が求める保健師に必要な専門能力と育成方策を明らかにすることを目的に、これまで研究が遅れている産業保健分野の保健師(産業保健師)を中心に検討した。一企業において産業保健師に求められる専門能力を明らかにするとともに、その向上を目指した育成プログラムを開発・試行し、実際に効果があることを検証した。また、より汎用的に産業保健師に必要な専門能力を明確化・構造化することを目指して、熟練産業保健師への個別インタビューならびにフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施し、支援過程に沿った各場面において産業保健師として必要な専門能力の詳細を明らかにした。
著者
三橋 祐子 荒木田 美香子 錦戸 典子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2022-016-B, (Released:2022-11-03)

目的:地域・職域連携は,生涯を通じた効果的な健康づくりを推進するため,国としても推進している事業であるが,健康支援活動を展開する専門職を始めとした実践者レベルでの連携には至っていない現状がある.そこで,本研究は,産業看護職における地域保健との連携の実態と連携経験に関連する要因を明らかにし,産業看護職が地域・職域連携を推進していくための示唆を得ることを目的として実施した.対象と方法:(社)日本産業衛生学会の会員である産業看護職2,574名を対象とし,自記式質問紙調査を2017年に実施した.調査項目は,基本属性,連携の必要性の認識とその理由,連携経験の有無,および自己研鑽や学習経験等である.結果:分析対象者756名中,地域保健との連携経験者は34.0%,連携の必要性を感じている者は80.8%であった.また,連携経験の有無には,産業看護職としての通算経験年数,ガイドラインの閲読経験や地域保健主催の研修会や勉強会などへの参加経験,連携の必要性に関する認識が関連していた.考察と結論:地域保健との連携経験者は少なく必要性を認識していない者もいたことから,産業看護職が地域保健との連携事例に触れる機会が乏しく,その必要性を見出しにくい可能性が考えられた.本研究により,ライフイベントによる学びを補強し,産業看護職が地域保健に関する情報を得られる仕組みをつくること,連携経験者が連携未経験者へ具体的な連携事例を通して伝える機会を設けることで,産業看護職が地域保健との連携を推進していける可能性が示唆された.
著者
三橋 祐子 錦戸 典子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.95-106, 2017-07-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

目的:地域保健との連携に関する産業看護職のコンピテンシーを明らかにする.対象と方法:事前に質問紙調査および,電話インタビューによって地域保健担当者との連携実施の有無やその内容について確認した上で,より充実した連携活動を実施している産業看護職10名を選択して対象とした.インタビューガイドを用い,半構造化面接法によるインタビューを実施した.分析方法はMayringの提唱する要約的内容分析を用いた.データをコード化した後,「日頃の取り組み」,「連携の実践」,「組織の理解を得るための取り組み」,「連携の基盤となる意識・姿勢・考え方」という4つの側面毎に分け,類似するものをまとめてサブカテゴリー,カテゴリーを生成した.結果:19のサブカテゴリー,9つのカテゴリーが生成された.≪地域保健情報の収集≫,≪地域保健担当者との関係性の構築≫,≪従業員の家族の問題抽出≫,≪従業員・家族と地域保健担当者との結び付け≫,≪地域保健が持つ社会資源の活用≫,≪地域保健との連携の重要性の提示≫といった地域保健との連携における産業看護職の具体的なコンピテンシーが明らかになった.また,≪従業員の人生全体や従業員の家族の要因を捉える姿勢と視点の保持≫,≪産業看護職自ら地域保健との連携を推進する姿勢の保持≫,≪産業看護職の存在意義の認識≫のように連携の基盤となる産業看護職の姿勢や考え方等も明らかになった.考察:これからは従業員やその家族も含めた生活全体,人生全体をみる姿勢や考え方を基盤として地域保健との連携に取り組むことが求められ,産業看護職がこれらのコンピテンシーを習得するための機会が必要であると考えられた.また,研究参加者らは,産業看護職1名体制のような専門職の人的資源が乏しい環境であっても≪地域保健担当者との関係性の構築≫や≪地域保健が持つ社会資源の活用≫等のコンピテンシーを用いながら地域保健と連携し支援の充実を図っていることが伺えた.