著者
三浦 敦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.149-171, 1990

本稿では, 日本の一村落の政治過程とその背景となる社会秩序との分析を通して, そこに働く権力過程やその相互関係を, F.Barthの企業家モデルのアイデアを使って明らかにすることを試みる。こうした日本における政治現象の過程論的視点からの人類学的研究はまだ十分とはいえない。ここで対象とするZ村は主要産業である漁業と林業の不振と過疎化に直面して新たに農業の商品化を試みようとしているのであるが, それを推進する現村長と農協理事長への支持は, その活発な活動にもかかわらず芳しくない。この不支持の理由は交換関係に基く村の社会秩序の考察を通して明らかになる。村には贈与交換と商品交換という二つの交換関係が, それぞれ異なる権力過程によって維持されている。役場と農協の活動はここに新たな交換関係を導入し村社会を変化させるものとして考えられるが, そこでの彼等の権力過程は社会秩序によって制限されるのである。
著者
三浦 敦 寺戸 淳子
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、海外共同研究者の協力を得て、次の調査を行った。・カンボジアに海外ボランティアに行った学生について、ボランティア期間中およびボランティア期間終了後のその学生のSNS利用(特にLINE)と、彼らがとってLINEに載せた写真、およびLINE上の文字や画像による会話について、データ収集を行った(三浦)。そのデータについては現在、解析中である。・介護ボランティア活動を行う北海道の施設において、その活動の状況について参与観察調査を行った(寺戸)。この研究では、まだ彼らのSNS利用についての調査までには至っていないが、基礎的なデータはほぼ集まりつつある。・介護実習を行う大学生に関して、その学生の介護実習への関わりとSNS(LINE、インスタグラム、フェイスブックなど)利用の状況について、参与観察及びインタビュー調査を行った(デュテイユ=緒方)。また、埼玉大学および早稲田大学において、運動部(ダンス部および柔道部)に所属する学生たち、およびスポーツ実習に参加する学生を対象に、スポーツ活動とSNS利用およびSNS上の写真投稿の関連性について、参与観察調査およびインタビュー調査を行った(デュテイユ=緒方)。あわせて、早稲田大学スポーツ科学部のスポーツ人類学研究室において意見交換を行った。以上の諸研究については、現在、データをまとめているところであり、理論的考察も含めて、次年度においてその成果を、国際会議および国際ジャーナル上において公表する予定である。