- 著者
-
三田村 好矩
岡本 英治
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
完全埋込型人工心臓用の多くの種類のアクチュエータが研究されている.しかし,それらは複雑な運動変換機構や軸受を使用しているため,耐久性に問題がある.一方,磁性液体を用いるアクチュエータは磁性液体に外部より磁界を加えるだけで,軸受を必要としない利点がある.そこで本研究では,磁性液体を使用する人工心臓の可能性について明らかにした.ギャップ10mmの2つの環状ソレノイドのギャップ間に外経10mm,内径7.4mmのアクリル管を挿入した.アクリル管の両端には,容積2mLのゴム製サックを装着した.サックは流入,流出ポートを持つ固い容器内に入れた.アクリル管およびサック内部はフロロカーボンを満たし,アクリル管中央に磁性流体と鉄心を沈めた.実験は2種類行った.(1)磁性流体のみを使用するもの,(2)磁性流体と鉄心(外径70mm,長さ28mm)を併用するもの.2つのソレノイドを交互に駆動した.磁性流体のみを使用したとき,流量26mL/min(@140beats/min),圧力13mmHgが得られた.また,磁性流体と鉄心を併用したとき,流量318mL/min(@260beats/min),圧力300mmHgが得られた.磁性流体と鉄心の併用は,高い磁化特性を持つ磁性液体の代替品として使用した.これにより,理論値の90%の流量が得られた.また,計算により,現在の磁性液体の1.5倍の磁化特性を持つ磁性液体を開発すれば,人工心臓駆動が可能であることを明らかにした.