著者
三野 和宏 後藤 順一 土橋 誠一郎 服部 優宏 飯田 潤一 小野寺 一彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.835-840, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
15

被嚢性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis: EPS)は,腹膜透析患者に発症し癒着,被膜により腸閉塞を起こす病態である.一方,リフィーディング症候群は,飢餓状態に対し急速にブドウ糖負荷を行った際に,主にリン低下により心不全・痙攣等を起こす病態である.今回,われわれはリフィーディング症候群を合併したEPS症例を経験したので報告する.症例は41歳女性で,EPSに対し癒着剥離を施行した.1,000kcal/日の補液を開始したところ,術後5日目に血清リン値が0.6mg/dlまで下降し,心不全兆候を認めた.以後,リンの投与を行い症状の安定を得た.当科ではEPS術後生存例の50%にリフィーディング症候群を認めていた.EPSはリフィーディング症候群となるリスクが高いと考えられ,注意深いモニタリングのもと,適切なエネルギー・電解質の補充を行う必要があると考えられた.
著者
三野 和宏 田村 元 正司 裕隆 小丹枝 裕二 片山 知也 今 裕史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.622-626, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

維持透析中に発症した乳癌の治療は,患側のvascular access,薬物療法という問題があるため慎重に行う必要がある.今回,維持透析中に発症した乳癌に対して治療を行った4症例の検討を行った.症例は50歳~75歳の女性で,1例は患側に内シャントがある症例であった.手術に関しては乳房は全摘と温存,腋窩リンパ節は郭清症例とセンチネル生検症例が含まれていた.手術時間は53分~143分で,出血量は全例少量であった.抗凝固剤は,術後初回のみメシル酸ナファモスタットを使用した.術後補助療法として全例に通常量のホルモン療法を行い,1例で通常量のtegafur/uracilを追加投与した.乳房温存症例に対しては通常量の放射線を照射した.術後1年1カ月~5年3カ月経過した時点で,いずれの症例も透析関連のトラブルはなく,無再発生存中である.
著者
正司 裕隆 服部 優宏 三野 和宏 今 裕史 小池 雅彦 赤坂 嘉宣
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.1700-1704, 2012 (Released:2013-01-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例1は53歳男性で糖尿病性腎症のため血液透析施行中であった.夕食後より腹痛を認め,症状が増悪したため翌日未明に搬送となった.CTで門脈ガスを認め腸管壊死を疑い緊急手術を施行した.分節状の腸管壊死を認めたため小腸切除を行った.病理で血栓塞栓を認めず,nonocclusive mesenteric ischemia(NOMI)と診断した.症例2は58歳男性で慢性腎不全のため血液透析施行中であった.閉塞性動脈硬化症のため心臓血管外科に入院していたが,夜間より腹痛が出現しその後増悪したため当科紹介となった.CTで上腸間膜静脈分枝内ガスと腸管壁気腫像を認め腸管壊死を疑い緊急手術を施行した.分節状の腸管壊死を認め,小腸切除を行った.病理で血栓塞栓を認めず,NOMIと診断した.血液透析患者はNOMIの発症リスクが高く,腹痛を主訴とする透析患者の診察にはNOMIの可能性を考慮し慎重な対応が必要である.