著者
三野 和宏 田村 元 正司 裕隆 小丹枝 裕二 片山 知也 今 裕史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.622-626, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

維持透析中に発症した乳癌の治療は,患側のvascular access,薬物療法という問題があるため慎重に行う必要がある.今回,維持透析中に発症した乳癌に対して治療を行った4症例の検討を行った.症例は50歳~75歳の女性で,1例は患側に内シャントがある症例であった.手術に関しては乳房は全摘と温存,腋窩リンパ節は郭清症例とセンチネル生検症例が含まれていた.手術時間は53分~143分で,出血量は全例少量であった.抗凝固剤は,術後初回のみメシル酸ナファモスタットを使用した.術後補助療法として全例に通常量のホルモン療法を行い,1例で通常量のtegafur/uracilを追加投与した.乳房温存症例に対しては通常量の放射線を照射した.術後1年1カ月~5年3カ月経過した時点で,いずれの症例も透析関連のトラブルはなく,無再発生存中である.
著者
植田 隆太 今 裕史 和久井 洋佑 阪田 敏聖 蔵谷 大輔 武田 圭佐 小池 雅彦 鈴木 昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.985-991, 2020-12-01 (Released:2020-12-26)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

症例は63歳の男性で,糖尿病性腎症による末期腎不全で血液透析を19年間施行し,高カリウム血症のためポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate;以下,CPSと略記 商品名:カリメート散)を内服していた.進行する貧血と黒色便に対する精査で下行結腸癌の診断となり,腹腔鏡下結腸部分切除術(下行結腸),D3郭清を施行した.術後経過は良好で第11病日に退院したが,その後も貧血の進行と血便を認めたため,第43病日に下部消化管内視鏡検査を施行した.吻合部に全周性の出血する潰瘍を認め,その他に縦走潰瘍を1か所認めた.潰瘍からの生検では,潰瘍底に好塩基性多菱形の沈着物を認め,CPSの関与が疑われた.そのためCPSの内服を中止したところ,貧血の進行は止まり,その後の下部消化管内視鏡検査でも潰瘍は改善していた.それ以降3年間,癌および潰瘍の再発なく生存中である.
著者
正司 裕隆 服部 優宏 三野 和宏 今 裕史 小池 雅彦 赤坂 嘉宣
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.1700-1704, 2012 (Released:2013-01-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例1は53歳男性で糖尿病性腎症のため血液透析施行中であった.夕食後より腹痛を認め,症状が増悪したため翌日未明に搬送となった.CTで門脈ガスを認め腸管壊死を疑い緊急手術を施行した.分節状の腸管壊死を認めたため小腸切除を行った.病理で血栓塞栓を認めず,nonocclusive mesenteric ischemia(NOMI)と診断した.症例2は58歳男性で慢性腎不全のため血液透析施行中であった.閉塞性動脈硬化症のため心臓血管外科に入院していたが,夜間より腹痛が出現しその後増悪したため当科紹介となった.CTで上腸間膜静脈分枝内ガスと腸管壁気腫像を認め腸管壊死を疑い緊急手術を施行した.分節状の腸管壊死を認め,小腸切除を行った.病理で血栓塞栓を認めず,NOMIと診断した.血液透析患者はNOMIの発症リスクが高く,腹痛を主訴とする透析患者の診察にはNOMIの可能性を考慮し慎重な対応が必要である.