著者
中山 睿一 小野 俊朗 上中 明子 野口 雄司
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

1.CHP(cholesterol hydrophobized pullulan)は、プルラン鎖に、コレステロールを配したナノパーティクルである。CHPとNY-ESO-1蛋白の複合体をDCにパルスし、健常人から得たCD8T細胞をin vitroで刺激し、特異的な反応の誘導を検討した。2回以上の刺激で特異的CD8T細胞の反応が認められた。同じ、CHP-NY-ESO-1複合体パルスDCを用いてCD4T細胞を刺激して、同様に特異的に反応が誘導されるか否かを検討した。やはり、2回以上の刺激でCD4T細胞の反応が誘導された。オーバーラップペプチドを用いて、DR1501拘束性の新しいエピトープを同定した。このように、DC細胞は、CHP-NY-ESO-1複合体を取り込んで、クラスIおよびIIのいずれのエピトープも発現することを明らかにした。2.CHP-NY-ESO-1を用いた臨床試験を開始した。臨床試験プロトコルは、ニューヨーク、ラドウィック癌研究所および岡山大学大学院医歯学総合研究科で承認された。第一目的は、安全性およびNY-ESO-1に対する免疫能の検討で、第二目的は、腫瘍の反応を観察することである。2週おきに4回投与する。他に有効な治療法がない進行癌患者を対象とする。現在、参加登録患者は4名で、その内訳は、食道癌(IV期)1名、および前立腺癌(D期)3名である。現在、評価可能患者数は3名であるが、3名ともに強い抗体産生が認められた。抗体認識エピトープの解析では、特に抗原性の強いエピトープが認められた。CD8およびCD4T細胞の反応は、比較的早くから認められた。腫瘍に対してもある程度の効果を認めた。
著者
上中 明子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)がん抗原の同定:培養肺癌細胞由来mRNAからcDNAライブラリーを作成し、10,000クローンを1プールとした40プールのライブラリーを作成し、第一次、2次のスクリーニングを完了。第3,第4次スクリーニングへ向けて、CTL側の調整を終了した。(2)(2)抗原の特質解析ツールとしてのモノクローナル抗体の作出:がん・精巣抗原XAGE-1bに対するモノクローナル抗体USO9-13を、開発した簡易モノクローナル抗体作成法によって作出した。組織染色によりその反応特異性を明らかにした。さらにXAGE-1b蛋白の抗体が認識する領域を明らかにした。(3)(3)がん免疫療法におけるT細胞免疫反応動態の解析:免疫療法における免疫反応動態の解析は重要であるが、がん抗原特異的に反応するT細胞の頻度は著しく低くその検出は困難である。そこで、T細胞免疫モニタリング法の検討および実際に使用可能な方法を検討した。モデル抗原としてインフルエンザA-24ペプチドを用いて末梢血リンパ球を刺激し、培養条件およびのアッセイ法の検討を行った。その結果、5%プール血清、IL-2 10u/mlおよびIL-7 10ng/ml添加AIM-V培地で、12日間の刺激培養で抗原特異的T細胞が効率良く検出されることを明らかにした。また、がん抗原と特異的に反応するT細胞の検出法として、エリスポット法、細胞内IFNγ検出法、IFNγ分泌細胞検出法を比較検討し、IFNγ分泌細胞検出法が高感度に検出することを明らかにした。CHP-NY-ESO-1蛋白の臨床試験におけるT細胞免疫反応動態をIFNγ分泌細胞検出法により解析した。末梢Tリンパ球をオーバーラップペプチドを用いて刺激し、再現性の高い結果が得られることを明らかにした。CD4 T細胞のモニタリングでは、4回の免疫で、約半数の症例に特異的T細胞の上昇をみとめた。
著者
中山 睿一 小野 俊朗 上中 明子 小野 俊朗 上中 明子
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

がんワクチンとして用いるがん抗原は、がん特異的が高く、さらに免疫原性が強いことが必須である。われわれは、新しいがん抗原CCDC62、HERV-KおよびXAGE-1bを見出し、特異性および免疫原性に優れていることを明らかにした。また、がん・精巣抗原NY-ESO-1の全長タンパクを用いて、がんワクチン臨床試験を実施し、がん患者には、免疫が誘導されることを明らかにした。さらに臨床効果も認めた。