著者
田中 光 上山 瑠津子 山根 嵩史 中條 和光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.49-58, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
20

本研究では,小学校5,6年児童を対象とする意見文産出方略使用の程度を測定する尺度を開発した.研究1では,5,6年児童426名に対して意見文産出時の方略使用に関する質問紙調査を行った.探索的因子分析を行い,読み手意識,反対意見の考慮,文章の構成,自分の意見の表明,校正・校閲の5因子からなる意見文産出方略が見出された.尺度の妥当性を検討するため,意見文産出の自己効力感,意見文を書く主観的頻度の高群と低群間で方略使用を比較した.その結果,全因子で高群の評定値が低群の児童の評定値よりも高く,尺度の内容的妥当性が支持された.研究2では意見文に対する評価と方略使用との関連を調べた.その結果,評価が高い意見文の書き手は低い書き手に比べて読み手意識,文章の構成,自分の意見の表明の3因子の評定値が高いことが見いだされた.今後の課題として,尺度の使用によって意見文の質が高まるかどうかを検証することが必要である.
著者
上山 瑠津子 杉村 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.401-411, 2015
被引用文献数
2

保育の質の向上が望まれている現在, 保育者の実践力に関する量的な指標を用いた研究が必要である。そこで本研究では, 保育者による実践力の認知と保育経験および省察との関連を保育者434名を対象に検討した。まず, 保育実践力尺度に関して因子分析を行い, 因子構造と信頼性の確認をした。その結果, 「生活環境の理解力」「子ども理解に基づく関わり力」「環境構成力」の3因子構造となり, 確証的因子分析の結果, 適合度も一定水準の許容範囲内であることが確認された。次に, 相関分析を行い, 経験年数と省察との関連よりも, 経験年数と実践力の認知との関連が強く, それ以上に省察と実践力の認知との関連が強いことを示した。さらに, 実践力の認知を従属変数にして重回帰分析を行った結果, 省察の下位尺度の中では「子ども分析」の説明の程度が最も強いことが示唆された。以上の結果から, 経験年数の少ない若手保育者であっても, 省察を行うことで実践力の認知が高まり, 省察においては, 子どもの状態に気づき分析的に振り返ることが実践力の認知に繋がると考えられた。