著者
柴田 雅士 上嶋 健治 平盛 勝彦 遠藤 重厚 佐藤 紀夫 鈴木 知己 青木 英彦 鈴木 智之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
38

マグネシウム(Mg)は細胞内へのカルシウム(Ca)流入を抑制するCa拮抗物質で,インターロイキン6(IL-6)は臓器の侵襲程度を反映するサイトカインである。心筋梗塞症(AMI)急性期に硫酸Mgを投与し,再灌流障害を示唆する現象の抑制効果を検討した。再灌流療法施行患者連続22例を,再灌流療法前に硫酸Mg0.27mmol・kg-1を静脈内投与する群11例(Mg群)と非投与群11例(C群)とに無作為に割り付け,血中Mg2+濃度とIL-6を測定した。再灌流時の現象は再灌流不整脈,12誘導心電図上のST再上昇および胸痛の増悪とした。再灌流成功は20例(Mg群9例,C群11例)で,Mg群の平均血中Mg2+濃度は投与前0.39mmol・l-1から投与後1.04mmol・l-1に上昇した。再灌流不整脈の出現率はMg群がC群より有意に低く,ST再上昇度はMg群がC群より低い傾向にあった。血中IL-6ピーク値はMg群がC群より低かった。AMI急性期再灌流療法時の硫酸Mg投与は,虚血再灌流障害から心筋細胞を保護する可能性がある。
著者
上嶋 健治
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2546-2553, 2007-11-10

従来,循環器疾患治療の原則は安静であり,運動療法は禁忌とみなされていた.しかし,心臓リハビリテーション(心リハ)が運動耐容能だけでなくQOL(quality of life)や生命予後までも改善することが報告されてきた.とくに心筋梗塞後の死亡率を大幅に改善するとともに,ステント留置例にも早期から安全に実施できることが明らかにされた.また,心リハはACC/AHAの慢性心不全のガイドラインでもクラスIのエビデンスレベルで有効性が証明されている.本邦でも1988年に心筋梗塞症例に心リハの保険診療が認められて以降,現在まで狭心症,開心術後,大血管疾患,慢性心不全,末梢動脈閉塞性疾患にも適用拡大されてきた.しかし,欧米では心リハが当初の身体機能の回復から,冠危険因子是正や冠動脈病変退縮を目的とした予防活動に変貌しつつある.その中で,本邦の「エクササイズガイド2006」は,メタボリックシンドロームを念頭に置き,運動の実践方法を提示したものといえる.このように,心リハは,循環器患者の「回復の医学」でもあり,健常者も含めた「予防の医学」でもある治療効果の大きい先進医療である.<br>