著者
小野寺 誠 小泉 範高 藤野 靖久 菊池 哲 井上 義博 酒井 明夫 遠藤 重厚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.307-312, 2014-07-15 (Released:2014-11-01)
参考文献数
18

症例は30代の女性。東北新幹線乗車中に下腹部痛が出現し救急要請となった。救急隊が病院選定を行う際に自分は医師であると話し前医へ搬送となったが,診察をめぐってトラブルとなったため当院紹介となった。救急隊からの連絡で身分証明書の提示を拒否していたこと,インターネット検索をした結果,氏名と所属が一致しないことを確認したために薬物依存の可能性を考え,前医に医師会への報告を依頼するとともに当院精神科医師による診察を依頼した。当院搬入時,下腹部の激痛を訴えており,一刻も早い鎮痛剤の投与を希望していた。患者によると,子宮頸管狭窄症の診断で海外の病院や都内大学病院で大腿静脈よりペンタゾシンとジアゼパムを静脈内投与していたと主張していた。精神科医師による傾聴後,痛み止めは施行できない旨を伝えていた最中に荷物より所持品が落下した。某大学病院や某研究機関研究員など多数のIDカードを所持しており名前も偽名であった。その直後に突然激高し,看護師の腹部を蹴り,当院から逃走した。30分後,当院より約10km離れた地点で救急要請した。搬送となった病院でセルシン® とソセゴン® を筋注したが10分程で再度除痛するよう訴えた。直後に岩手県医師会から「不審患者に関する情報」がFAXで届き,警察への通報を考慮していたところ突然逃走した。医師会を通じて調査したところ,前日には宮城県,翌日には秋田県の医療機関を同内容で受診していることが判明した。本症例を通して,救急医療機関においては,問題行動のある精神科救急患者を受け入れた際の対応マニュアルを,あらかじめ整備しておくことが望ましいと思われた。
著者
柴田 雅士 上嶋 健治 平盛 勝彦 遠藤 重厚 佐藤 紀夫 鈴木 知己 青木 英彦 鈴木 智之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
38

マグネシウム(Mg)は細胞内へのカルシウム(Ca)流入を抑制するCa拮抗物質で,インターロイキン6(IL-6)は臓器の侵襲程度を反映するサイトカインである。心筋梗塞症(AMI)急性期に硫酸Mgを投与し,再灌流障害を示唆する現象の抑制効果を検討した。再灌流療法施行患者連続22例を,再灌流療法前に硫酸Mg0.27mmol・kg-1を静脈内投与する群11例(Mg群)と非投与群11例(C群)とに無作為に割り付け,血中Mg2+濃度とIL-6を測定した。再灌流時の現象は再灌流不整脈,12誘導心電図上のST再上昇および胸痛の増悪とした。再灌流成功は20例(Mg群9例,C群11例)で,Mg群の平均血中Mg2+濃度は投与前0.39mmol・l-1から投与後1.04mmol・l-1に上昇した。再灌流不整脈の出現率はMg群がC群より有意に低く,ST再上昇度はMg群がC群より低い傾向にあった。血中IL-6ピーク値はMg群がC群より低かった。AMI急性期再灌流療法時の硫酸Mg投与は,虚血再灌流障害から心筋細胞を保護する可能性がある。
著者
照井 克俊 藤田 友嗣 高橋 智弘 井上 義博 遠藤 重厚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.857-863, 2013-10-15 (Released:2013-12-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

トリカブトは毒性の強いアコニチン類を含有する有毒植物である。本研究では,1984年1月から2011年12月の間に当センターに搬送されたトリカブト中毒患者30症例について,中毒の原因,中毒が発生した時期,摂取した植物部位,中毒症状,治療,転帰を調査した。対象は男性22例,女性8例で,年齢は5歳-78歳(平均48.3歳)であった。トリカブト中毒の原因は,自殺目的での摂取15例,食用植物との誤食14例,民間療法としての使用1例であった。自殺目的によるトリカブト中毒は1年を通じて発生し,誤食による中毒は4-6月の山菜採取の時期に集中していた。自殺目的では根を,誤食では葉を摂取する傾向にあった。中毒症状は,不整脈(26),嘔気・嘔吐(24),口唇・口角の痺れ(23),四肢の痺れ(23),動悸(19),血圧低下(18),胸痛・胸部不快感(17),意識障害(13),脱力感(11),めまい(9),麻痺(5),腹痛(4)が生じた。不整脈では心室性期外収縮が最も観察され(26例中17例,65.4%),心室細動(VF)は26例中7例(26.9%)に観察された。不整脈の治療として抗不整脈薬のリドカインが主に投与され,軽症例には効果的であったがVFを生じた重症例には効果がなかった。難治性のVF患者には,経皮的心肺補助法(PCPS)による治療が効果的であった。転帰は30症例中3例が難治性のVFにより死亡した。トリカブト中毒では多彩な症状が出現したが,重篤な不整脈の出現の有無が転帰を左右した。トリカブト中毒で生じる不整脈の治療では,VFを生じるような重症例には抗不整脈薬や除細動の効果は限定的である。重症例では早期にPCPSの積極的な導入を行い,血行動態の安定化を図ることが救命にとって重要である。本結果は今後のトリカブト中毒の治療に有用な情報になるものと考える。
著者
塩谷 信喜 柴田 繁啓 今井 聡子 小野寺 誠 藤野 靖久 井上 義博 遠藤 重厚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.282-292, 2010-06-15 (Released:2010-08-13)
参考文献数
38
被引用文献数
1

【背景】アナフィラキシーは,抗原の暴露後に急速に進行する全身性の致死的反応である。当センターは,岩手県中央部の救急医療の中心的な役割を担っており,アナフィラキシー症例を経験する機会も多い。そこで地域におけるアナフィラキシーの実態を明らかにすることを目的に自験例を分析したので報告する。【対象と方法】当センター開設1980 年11 月から2009 年10 月の29 年間にアナフィラキシー症状を呈した302 例を対象とした。原因,年齢・性別,症状について,診療録により後方視的に検討した。【結果】平均年齢は48.0 歳で,男性に多い傾向がみられた。アナフィラキシーショックは193例(63.9%)で,8例(2.7%)が心肺停止となり,4 例が死亡に至った。アナフィラキシーの主要原因は,ハチ毒148 例(49.0%),薬物89 例(29.4%),食物58 例(19.2%),食物依存性運動誘発アナフィラキシー3 例(1.0%),その他4 例(1.3%)であった。ハチ毒では,スズメバチ,アシナガバチによる被害が多く,薬物では,非ステロイド性解熱鎮痛薬,抗菌薬,食物では,海産物とソバが多く認められた。最も多い初期症状は,心血管症状(65.9%),皮膚粘膜症状(42.1%)であった。【結語】主要原因はハチ毒が多く,薬剤,食物と続いた。食物は,全国調査とは異なり,海産物(46%)とソバ(6.9%)が多くを占めた。ハチによる被害の背景には,岩手県は広大な山林面積を有し農林就業者が多いことが考えられた。海産物は地域住民の消費動向によるもの,ソバによる被害は県外の旅行者に関係していると考えられた。アナフィラキシーの原因に占めるハチ毒や食物の割合は,地域による産業別就業や食文化の違いにより影響される。
著者
及川 浩平 青木 英彦 菊池 研 房崎 哲也 佐藤 紀夫 岩坂 潤二 遠藤 重厚
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.153-157, 2003-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

A 69-year-old female was found unconscious after nearly drowning (submersion) in a hot spring spa (Tamagawa spa, Akita prefecture) on June, 2001. The near drowning was associated with acid aspiration. She developed acute respiratory distress syndrome and shock after arrival at our emergency room. She was immediately treated using mechanical ventilation and percutaneous cardiopulmonary support. However, she died on the fourth hospital day as a result of a rapidly progressive lung injury induced by acid aspiration. Lung CT images demonstrated heterogeneous pulmonary infiltrations with irregularly fused cavities. An autopsy showed marked degeneration of the alveolar epithelium and abnormal deposits within the alveoli.
著者
小野寺 誠 藤野 靖久 井上 義博 今井 聡子 遠藤 重厚
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.1280-1287, 2006 (Released:2006-11-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

膵仮性嚢胞出血の2例を経験した.症例1は脾動脈瘤破裂による出血性ショックを呈していたが,初期輸液による反応からrespondersと判断し緊急TAEにより救命した.症例2はrespondersであり血管造影を施行したが嚢胞内に出血が限局していたため経過観察が可能であった.膵嚢胞出血例では初期輸液による循環動態の反応により速やかに治療方針を選択することが重要であると思われた.
著者
高橋 智弘 照井 克俊 及川 浩平 青木 英彦 遠藤 重厚 小松 隆 中村 元行
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.2, pp.S2_36-S2_40, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
12

背景:早期の電気的除細動が院外心肺停止(CPA)患者の生存率改善に有用であると報告されている.当院救命救急センターへ搬送されたCPA症例の現状を調査したので報告する.方法:2007年4月から2010年3月まで当院救命救急センターの外来診療記録をもとにCPAの病名のある270名のうち,救急隊により直接当センターへ搬入された院外CPA 223例を後ろ向きに調査した.結果:CPA患者の原疾患のうち心血管疾患は136例(61.0%)で,そのうち一般市民の目撃のある症例は60例(自宅内発生が70%)であった.60例のうち心室細動(VF)は20例であり,その予後をみると生存退院例が8例(40%),社会復帰例が5例(25%)であった.対象の中に一般市民による自動体外式除細動器(AED)使用例(public-access AED:PAD)はなかったが,院外で救急隊員による除細動が成功した3症例は全例神経学的後遺症を残さず社会復帰していた.無脈性電気活動(PEA)または,心静止(asystole)は合計40例であり,生存退院例が3例(8%)あったものの,社会復帰した例はなかった.内因性CPA症例への一般市民の心肺蘇生法(CPR)実施率は42.1%であり,過去の当院での成績に比べてやや増加していた.考察:院外心肺停止患者の救命率向上には,一般市民へのCPRのさらなる普及と,AED設置の充実が重要と考えられた.
著者
小野寺 誠 小泉 範高 藤野 靖久 菊池 哲 井上 義博 酒井 明夫 遠藤 重厚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.307-312, 2014

症例は30代の女性。東北新幹線乗車中に下腹部痛が出現し救急要請となった。救急隊が病院選定を行う際に自分は医師であると話し前医へ搬送となったが,診察をめぐってトラブルとなったため当院紹介となった。救急隊からの連絡で身分証明書の提示を拒否していたこと,インターネット検索をした結果,氏名と所属が一致しないことを確認したために薬物依存の可能性を考え,前医に医師会への報告を依頼するとともに当院精神科医師による診察を依頼した。当院搬入時,下腹部の激痛を訴えており,一刻も早い鎮痛剤の投与を希望していた。患者によると,子宮頸管狭窄症の診断で海外の病院や都内大学病院で大腿静脈よりペンタゾシンとジアゼパムを静脈内投与していたと主張していた。精神科医師による傾聴後,痛み止めは施行できない旨を伝えていた最中に荷物より所持品が落下した。某大学病院や某研究機関研究員など多数のIDカードを所持しており名前も偽名であった。その直後に突然激高し,看護師の腹部を蹴り,当院から逃走した。30分後,当院より約10km離れた地点で救急要請した。搬送となった病院でセルシン<sup>® </sup>とソセゴン<sup>® </sup>を筋注したが10分程で再度除痛するよう訴えた。直後に岩手県医師会から「不審患者に関する情報」がFAXで届き,警察への通報を考慮していたところ突然逃走した。医師会を通じて調査したところ,前日には宮城県,翌日には秋田県の医療機関を同内容で受診していることが判明した。本症例を通して,救急医療機関においては,問題行動のある精神科救急患者を受け入れた際の対応マニュアルを,あらかじめ整備しておくことが望ましいと思われた。
著者
菊地 充 村田 厚夫 行岡 哲男 葛西 猛 遠藤 重厚 松田 博青 島崎 修次
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.8, pp.386-392, 2000-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
15

洗浄回収式自己血輸血施行例において自己血輸血による血中サイトカインの影響について検討することを目的とした。15例の腹腔内出血例を,SATを行った(A)群7例と,同種輸血を行った(B)群8例の2群に分けた。術前,術後第1病日(POD 1)およびPOD 3に末梢血を採取し,IL-6, IL-8, TNF-α, IL-1raについてELISA法を用いて測定した。血中IL-6値はA群術前141.6±38.6pg/ml(平均±標準誤差),POD 1 369.1±53.2pg/mlであった(術前と比べてp<0.05)。 POD 3には121.0±7.3pg/mlと減少する傾向がみられた。B群は術前120.1±59.4pg/ml, POD 1 235.9±57.4pg/mlとA群と同様に上昇したが,その増加はA群と比べて軽度であった。B群もPOD 3は123.2±16.1pg/mlと減少する傾向がみられた。血中IL-8値は術前A群72.7±22.9pg/mlからPOD 1 237.9±13.5pg/mlに,B群は術前56.4±25.0pg/ml, POD 1 41.4±15.6pg/mlと変化はなかった。POD 1の両群間の値を比較すると,A群が有意に高値を示した(p<0.05)。血中TNF-α値はA群の術前値が13.6±2.1pg/ml, POD 1は13.7±2.8pg/mlで,B群も術前は10.9±2.5pg/ml, POD 1は17.1±4.9pg/mlとほとんど変化なく推移し,両群ともに正常範囲内での変動であった。A群の血中IL-1ra値は,術前が927.5±230.3pg/ml, POD 1は698.7±208.5pg/mlであった。B群は術前が1,239.4±361.0, POD 1に284.2±147.7と減少した。以上から,SATによりIL-8が活性化されることが示されたが,自己血輸血に伴う炎症反応などの副作用はなく,その原因は出血あるいは回収・洗浄システムによる赤血球の溶血が関与していることが推察された。
著者
藤野 靖久 藤田 友嗣 井上 義博 小野寺 誠 菊池 哲 遠藤 仁 遠藤 重厚
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.304-310, 2009-06-15
参考文献数
13

除草剤のラッソー乳剤<SUP>®</SUP>を自殺目的で服毒し、短時間のうちに塩化ベンゼンによると考えられる全身痙攣,循環不全等を呈して死亡した症例を経験した。症例は52歳の男性で,うつ病のため通院中であった。自宅で倒れているところを発見され,救急要請。近くに空のラッソー乳剤<SUP>®</SUP> 500 ml入りの瓶が落ちており,服毒自殺による急性薬物中毒の疑いで搬送された。意識レベルはJCS 200,GCS 4(E1V1M2)であった。胃洗浄,活性炭・下剤を投与し,輸液等にて加療開始したが,発見から約12時間後より全身痙攣を発症し,痙攣のコントロール困難となり,頭部CTでは著明な脳浮腫を認めた。更に血圧低下を認め,昇圧剤にも反応しなくなり,発見から約22時間後に死亡した。当科搬入時のアラクロールの血清中濃度は8.0μg/ml,塩化ベンゼンは17.8μg/mlであった。ラッソー乳剤<SUP>®</SUP>は主成分がアニリン系除草剤であるアラクロール(43%)で,溶媒として塩化ベンゼンが50%含有されている。アニリン系除草剤中毒ではメトヘモグロビン血症を起こすことが知られているが,本症例では認められなかった。溶媒である塩化ベンゼン中毒では,肝・腎障害の他に脳障害や循環不全がある。本症例のように早期に死に至る大量服毒例では,塩化ベンゼンによる脳障害や循環不全が主な死因になると推測された。
著者
吉田 雄樹 黒田 清司 和田 司 奥口 卓 遠藤 重厚 小川 彰
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.179-186, 2003-04-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

1996年1月から2002年4月までの期間に,初回CTにて急性硬膜下血腫およびそれに伴う脳腫張が主病変であり,GCSが10以下もしくはmidline shiftが10mm以上であった重症例52例に対し,救急外来での穿頭による血腫除去術を行った。52例中42例は搬入時既に瞳孔異常を伴う脳ヘルニア状態を呈していた。穿頭術のみによる血腫除去率は平均で69%であり,なかでもCT所見にて低吸収像の混在するmixed densityを呈する症例ほど除去率が高かった。穿頭術後に瞳孔所見や意識の改善が36例(69.2%)に認められた。穿頭術のみで脳圧管理が可能であった症例は13例であった。全症例の転帰は,GOS評価でGR 6例,MD 6例,SD 4例,PVS 4例,D 32例であった。さらに術式別にみると,穿頭術のみではGR 6例,MD 4例,SD 1例,D 22例であり,開頭術を追加されたものはMD 2例,SD 3例,PVS 4例,D 10例であった。穿頭血腫除去術は,急性硬膜下血腫に対しては効果的でかつ迅速に行える方法で,重症頭部外傷例においても施行可能な手技である。ゆえに救急外来での穿頭血腫除去術は,重症急性硬膜下血腫例に対して試みるべき方法であると思われた。
著者
梅邑 晃 吉川 智宏 小野寺 ちあき 西成 悠 秋冨 慎司 小鹿 雅博 井上 義博 遠藤 重厚
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1063-1066, 2011

症例は53歳,女性。自宅で家族と口論となり発作的に自分の腹部を出刃包丁で刺したため救急車で当院へ搬送された。来院時上腹部に深い刺創があり,腹部CT検査で肝S4にIIIa型損傷を認めた。初期輸液療法に反応したため保存的加療目的に入院となった。受傷2日目に施行した腹部CT検査で左肝動脈の仮性動脈瘤形成と動脈瘤を介した門脈本幹とのarterio-portal(A-P)シャントを認めたため,transcatheter arterial embolization(TAE)を施行した。TAE後,A-Pシャントは消失し,以降順調に経過したため神経精神科へ転科となった。肝外傷後の肝動脈瘤は通常仮性動脈瘤であり,肝損傷後の約1%にみられる合併症である。遅発性肝破裂や胆道出血の原因となるため生命予後を左右する合併症であるが,動脈瘤形成までは受傷後数週間を要するとされる。本症例は,受傷後早期にA-Pシャントを伴う仮性肝動脈瘤を形成した非常にまれな症例であり,TAEにより治療しえたので報告する。
著者
佐々木 輝夫 吉田 雄樹 大間々 真一 菊地 康文 小笠原 邦昭 遠藤 重厚 小川 彰
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.282-287, 2009

外傷性椎骨動脈閉塞は交通事故によるものが多いが,近年スポーツに伴う報告が散見される。相撲の稽古中に発症した 2 例を報告する。症例 1 は17歳の男性で相手の胸に前額部を強打し頭痛・嘔吐を主訴に来院した。magnetic resonance imaging(MRI)で右posterior inferior cerebellar artery(PICA)領域の多発性脳梗塞,magnetic resonance angiography(MRA)・脳血管撮影検査で右椎骨動脈閉塞を認めた。症例 2 は16歳の男性で張り手を顔面に受け,後頸部痛と回転性のめまい,左上下肢のしびれが出現したため受診した。MRIで右延髄外側の脳梗塞,MRA・脳血管撮影検査で右椎骨動脈閉塞を認めた。 2 症例とも外傷性椎骨動脈閉塞に伴う脳梗塞の診断でエダラボンの点滴加療を行い,神経学的脱落症状なく自宅退院した。頭頸部の回旋,過伸展に伴う外傷性椎骨動脈閉塞はスポーツに伴う若年者の閉塞性血管障害の原因の一つであり,スポーツ医学の見地から救急医に注意を喚起する意味で報告する。
著者
高桑 徹也 広井 悟 井上 義博 佐々木 盛光 中永 士師明 遠藤 重厚 星 秀逸
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.350-353, 1993-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

We report a case of myasthenia caused by a Mamushi (snake)[Agkistrodon halys Blomhoffi] bite. Electromyography revealed a marked increase in the amplitude of action potentials (waxing phenomenon) with fast rates of motor nerve stimulation and the response to tensilon was negative. This case indicates that Mamushi venoms contain a neurotoxin preventing the release of acetylcholine quanta from nerve terminals.
著者
井上 義博 菊池 哲 小野寺 誠 藤野 靖久 秋冨 慎司 山田 裕彦 遠藤 重厚
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.23-28, 2013-03-28 (Released:2013-05-02)
参考文献数
4

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,死者,行方不明者,災害関連死を含めると2万人を超える犠牲者を出した。発災から3月31日までの3週間に我々の施設に搬送された症例は23例で,内訳は溺水による呼吸不全3例,肺血栓塞栓症,うっ血性心不全,多発外傷が各2例,クラッシュ症候群,破傷風,熱傷,腸間膜動脈損傷,凍傷,脾動脈破裂が各1例,単独損傷7例であった。この内呼吸不全の3例はいずれも3週間以内に死亡したが,他の症例は救命された。津波肺は発症病態が生物学的(微生物),化学的(油脂が主体),物理学的(砂や泥)と複雑で,微生物も特殊なものに起因するため治療に難渋したものと思われた。
著者
小林 宏行 河合 伸 押谷 浩 酒寄 享 小池 隆夫 大西 勝憲 斎藤 玲 中山 一朗 富沢 磨須美 大道 光秀 平賀 洋明 渡辺 彰 貫和 敏博 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 荒川 正昭 和田 光一 岡 慎一 稲松 孝思 増田 義重 島田 馨 柴 孝也 吉田 雅樹 佐藤 哲夫 林 泉 宍戸 春美 赤川 志のぶ 永井 英明 渡辺 尚 馬場 基男 松本 文夫 桜井 磐 嶋田 甚五郎 堀 誠治 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 健一 平居 義裕 石丸 百合子 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 俊信 下方 薫 齋藤 英彦 成田 亘啓 三笠 桂一 三木 文雄 二木 芳人 副島 林造 澤江 義郎 仁保 喜之 大泉 耕太郎 市川 洋一郎 徳永 尚登 原 耕平 河野 茂 門田 淳一 朝野 和典 平潟 洋一 前崎 繁文 伊藤 直美 松本 慶蔵 永武 毅 宇都宮 嘉明 力富 直人 那須 勝 山崎 透 斎藤 厚 普久原 浩 広瀬 崇興 佐藤 嘉一 熊本 悦明 河村 信夫 岡田 敬司 稲土 博右 守殿 貞夫 荒川 創一 宮崎 茂典 大森 弘之 公文 裕巳 小野 憲昭 渡辺 豊彦 村田 匡 熊澤 淨一 松本 哲朗 尾形 信雄 高橋 康一 天野 拓哉 中村 元信 山本 松男 清水 武昭 岩井 重富 国松 正彦 大塚 一秀 中川 良英 渡辺 哲弥 松山 秀樹 杉山 勇治 中山 一誠 品川 長夫 真下 啓二 真辺 忠夫 木下 博明 森本 健 久保 正二 藤本 幹夫 上田 隆美 岩佐 隆太郎 横山 隆 児玉 節 津村 裕昭 松田 静治 保田 仁介 山元 貴雄 岡田 弘二 遠藤 重厚 山田 裕彦 高桑 徹也 斎藤 和好 相川 直樹 田熊 清継 藤井 千穂 福田 充宏
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.846-871, 1997-10-25
被引用文献数
7