- 著者
-
上杉 彰紀
米田 文孝
長柄 毅一
清水 康二
- 出版者
- 関西大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
平成29年度には、まず平成29年6月にバハレーン国立博物館において西暦紀元前後の時代の墳墓から出土した石製装身具のデータ化および分析を実施した。これはバハレーンを含むアラビア半島において出土する石製装身具が南アジア方面からもたらされたと考えられるためで、その可能性を実証的に検証し、南インドの社会が海洋交易にどのように関わっているか考察することを目的としたものである。調査の結果、西暦紀元前後の時代にバハレーン島の墳墓で出土する石製装身具は南アジア産である可能性が高いことが明らかとなった。今後、調査時に作成した玉の孔のシリコン型の顕微鏡観察を進め、南アジア産の可能性をより高い精度で検討する予定である。平成29年7月には、ケンブリッジ大学考古学・人類学博物館に所蔵される南インド巨石文化の墳墓から出土した石製装身具のデータ化を行った。石製装身具は、北インドと南インド、そして海洋交易を通じて西のアラビア半島や東の東南アジアとの関係を考える上で重要な資料である。南インド巨石文化の遺跡から出土する石製装身具は同時代の北インドの例との類似点が多く、北インドからの製品搬入のみならず技術移転によって南インドでも生産されるようになったと考えられる。それは南インド社会がより複雑化する過程を投影したものと評価できる。平成29年9・10月には、インド、ケーララ州およびマハーラーシュトラ州において巨石文化期の墳墓群の分布・測量調査を行った。広域に広がる墳墓群の悉皆的分布・測量調査はこれまでほとんど行われておらず、そうした調査は南インド巨石文化を研究する上での基礎資料となる。また、ハリヤーナー州に所在する青銅器時代・鉄器時代の遺物の記録化を実施し、南インドとの比較資料の蓄積を進めた。平成30年3月には同じくケーララ州およびマハーラーシュトラ州において分布・測量調査を実施した。