著者
倉又 朗人 飯塚 和幸 佐々木 公平 輿 公祥 増井 建和 森島 嘉克 後藤 健 熊谷 義直 村上 尚 纐纈 明伯 ワン マンホイ 上村 崇史 東脇 正高 山腰 茂伸
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.130-140, 2015 (Released:2017-05-31)

Gallium Oxide is attracting attention as a new material for optical and electrical applications. It has a large band gap of 4.8 eV. The electron concentration can be controlled in a range between 10^<16> cm^<-3> and 10^<19> cm^<-3>. Large-size bulk crystals can be obtained easily because melt growth is possible under the atmospheric pressure. From these material features, we expect high performance and low production cost of LEDs and high power devices. In this report, we introduce the properties of β-Ga_2O_3 single crystal substrates and the present status of device development.
著者
澤井 秀次郎 坂井 真一郎 坂東 信尚 丸 祐介 永田 晴紀 後藤 健 小林 弘明 吉光 徹雄
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-05-31

空気吸込式エンジンを用いるスペースプレーンの実現に向けて,飛行実証を通して基盤となる技術を獲得するために,気球による高高度からの落下と小型ロケットブースターによる加速を組み合わせた高速飛行実証システムの構築を目指した.飛行軌道検討を主としたシステム概念検討を行った.その結果を踏まえ,飛行実験機の試作研究を行った.試作研究を通して,システム統合および飛行制御系技術の実践研究を行った.さらに,スペースプレーンに必要な技術として,空力設計技術の研究を行った.実験オペレーションまで想定した実験計画を検討し,本システムのメリットに加え,課題も整理した.
著者
黒木 貴一 磯 望 後藤 健介 張 麻衣子
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.63-78, 2005-08-25
参考文献数
23
被引用文献数
1

2003年九州豪雨により, 福岡市の御笠川沿いの平野部は広く浸水した。JR博多駅周辺も, 1999年に続き再び浸水した。本研究では, JR博多駅周辺の浸水深の分布, 洪水堆積物の層厚分布, 洪水堆積物の粒度の分析結果から, 氾濫水の流下方向やその速さを推定し, 都市内の詳細な土地条件について論じた。<br>浸水範囲は, 地盤高におおむね支配され, 周囲より低い後背湿地にある。しかし, 都市の構造物にも強く影響を受けて, 氾濫水の流下方向, 浸水深, 洪水堆積物の層厚は多様である。御笠川から溢流した氾濫水は, JR博多駅および鹿児島本線に流れを阻まれ, その東 (上流) 側で広く湛水した。次に峡窄部となる鹿児島本線と交差する道路2箇所から西 (下流) 側へ流出した。浸水範囲には, 細粒土砂が堆積する湛水しやすい地域, 粗粒土砂が堆積する土砂の堆積しやすい地域, 土砂はあまり堆積しない氾濫水の流れやすい地域が区分できる。さらに土砂の堆積しやすい地域には, 自然堤防, 三角州, サンドスプレイ, 後背湿地の形成場に類似した土地条件地域を見出すことができた。このように, 都市化による人工的な地形改変により, 洪水特性を決める新しい土地条件が生み出されたことを本研究では示した。
著者
後藤 健治 程内 ゆかり 松下 恵巳 田中 佑樹 西村 佳子 石井 修平 陳 蘭荘
出版者
南九州大学
雑誌
南九州大学研究報告. 自然科学編 (ISSN:1348639X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.61-65, 2013-04

宮崎県在来野菜の日向カボチャはニホンカボチャCucurbita moschataの黒皮品種群に属している。しかし,昭和40年以降はセイヨウカボチャC. maximaが粉質の肉質と良好な食味で普及し,日向カボチャの栽培面積は減少し,現在は高級和食料理亭用として宮崎市と都城市の一部で施設栽培が行われているにすぎない。本研究では,日向カボチャの品種改良のための基礎的研究として他の種との種間交雑を行った。日向カボチャの'宮崎早生1号'を中心に正逆交雑実験を行ったとき,'クロダネカボチャ'との間に交雑親和性がなく,セイヨウカボチャあるいはその両種の雑種との間では,'宮崎早生1号'を花粉親にしたとき,4つの品種との間に不完全であるが,交雑親和性があり,種子親にしたとき,'久台33号'以外では単為結果しか見られなかった。正逆交配で得られた'宮崎早生1号'×'久台33号'間の雑種の果実の形質は両親の中間で,ブルームも若干あった。予備実験的に行ったRAPD-PCR解析法による雑種検定でも種間雑種であることが示唆された。さらに雑種株を用いて自殖を行ったとき,正常な着果が見られた。
著者
浅野 貞美 山口 智晴 森本 耕吉 諸遊 直子 藤岡 佳伸 谷島 薫 川上 愛 後藤 健
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.225-231, 2023 (Released:2023-06-28)
参考文献数
31

血液透析患者が透析療法を継続するためには,注意・遂行機能を維持することが必要である.血液透析患者は認知機能障害の罹患率が高いが,認知機能の一部である注意・遂行機能の実態や地域在住高齢者との差異,認知機能と関連が認められている握力や下肢機能,骨格筋量との関連性については十分に検証されていない.そこで本研究は,血液透析患者32名と地域在住高齢者31名を対象に,trail making test part B(TMT-B)を用いて,注意・遂行機能の実態を比較検討した.また血液透析患者における筋力や骨格筋量と注意・遂行機能との関連性を検証した.その結果,血液透析患者のTMT-Bの所要時間は,地域住民と比較して有意に長く,血液透析患者は注意・遂行機能の低下リスクが高いことが示唆された.またTMT-Bと握力,SMIに有意な負の相関が認められた.今後は縦断研究により,注意・遂行機能と握力,骨格筋量との関連性やTMT-Bが臨床的に有用な指標となるのかを検討することが必要である.
著者
大島 義之 和田 沙依子 田村 充宏 後藤 健 金子 政弘 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.64-73, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
34

ネコにおけるシスチンの尿酸性化効果と有害作用の有無について検討した。健康な成ネコ6頭(平均3.3kg)を2頭ずつ3群に分け,1期8日間の3×3ラテン方格法により,L-シスチンを0,2.4,4.8%添加した3種類の実験食を各群に割り当てた。実験期間を通して実験食と飲水は不断給与し,各期最終5日間に増体量,摂食量,飲水量,尿量,糞量を測定した。また,毎朝新鮮尿を採取し,直ちにpHとストルバイト結晶数を測定した.残りの尿はMg,P,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,遊離アミノ酸濃度の測定に用い,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]によりストルバイト活性積を求めた。一方,各期最終日には頚静脈より採血し,ヘマトクリットと血漿中の総蛋白質,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,および遊離アミノ酸濃度を測定した。尿および血漿のクレアチニン濃度を指標として糸球体濾過量も求めた。その結果,L - シスチンには等S量のDL-Metに匹敵する尿酸性化効果がある一方,DL-Metのような強い毒性はないことが明らかとなった。しかし体重の有意な減少なしに摂食量が減少したことから,インバランスは生じ得ることが示唆された。L-シスチンの適正投与水準はドライフード当たり2.4%以下と考えられたが,この問題に関しては今後さらに検討の余地がある。L-シスチンの投与がシスチン尿症または同尿石症を増加させるとの証拠はなかったものの,二塩基性アミノ酸- 特にシスチン, リジン,アルギニンーの尿中排泄に関するネコの特異性が示唆された。
著者
後藤 健太郎 松末 亮 山口 高史 森吉 弘毅 猪飼 伊和夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.728-735, 2021-10-01 (Released:2021-10-27)
参考文献数
30

症例は76歳の女性で,3年前に肛門前方の無痛性腫瘤を触知し,数か月前から増大するため受診した.肛門前方の硬結を伴う2 cm大の皮下腫瘍が皮膚に露出し,表面は粘液で覆われていた.CTで腫瘍の肛門括約筋および膣への浸潤が疑われ,両側外腸骨リンパ節が腫大し,PET-CTで原発巣と両側外腸骨リンパ節に集積が亢進していた.生検でアポクリン腺癌や異所性乳房由来の腺癌が疑われた.両側外腸骨リンパ節転移を伴う会陰部アポクリン腺癌の診断で腹腔鏡下腹会陰式直腸切断・膣壁合併切除,両側外腸骨リンパ節摘出術を施行した.腫瘍は前方で膣壁上皮直下に達し後方では一部肛門管上皮に露出し,両側外腸骨リンパ節転移が確認された.アポクリン腺癌は浸潤性と転移性を獲得するまで数か月から数年の静止期があるとされる.会陰部の経時的に増大する皮下腫瘤ではアポクリン腺癌も鑑別疾患の一つとして考え,生検による早期確定診断が重要と考えられた.
著者
後藤 健斗 水丸 和樹 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2022-UBI-76, no.28, pp.1-8, 2022-11-01

“天使と悪魔” は道徳的ジレンマを表現する方法として用いられる.本研究では,天使と悪魔の関係をロボットで再現し,ジレンマ状況の中で人間の自制心,意思決定や行動がどのように変化するかを調査する.ロボットの条件を Neutral,Angel,Devil とし,実験参加者を Neutral-Neutral 群と Angel-Devil 群に分け,紙にアルファベットを書き続けるというタスクを行ってもらうことで,タスクの継続時間から 2 つの群の自制心を比較した.その結果,Angel-Devil 群のほうが有意にタスクの継続時間が長くなった.また,Godspeed によるロボットの印象評価を行ったところ,擬人化や好ましさの項目においてロボットの条件間で有意差が確認された.実験後アンケートでは,ロボットが Angel と Devil の役割を果たすことができたと考えられる回答がみられた.
著者
後藤 健志
出版者
アンデス・アマゾン学会
雑誌
アンデス・アマゾン研究 (ISSN:24340634)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-32, 2021-12-20 (Released:2022-04-06)
参考文献数
71

ブラジルでは、空間を構成する土地や財をめぐって、実際上の利用者に正規の権利主体性を認定する措置、すなわち「正則化」を通じて、国家は統治が十分に行き届かない辺境域の領域化を進めてきた。一方、現地の権利主体は、国家が所管する土地や財が、占有され、事後的に正則化され、私有財として領有できる対象と見なしてきた。本稿では、正則化のメカニズムを国家による統治の視点からではなく、現地の視点から捉えるため、アマゾニアにおける領域化の進展を、植民者の在来知に着目して読み解いた。 事例研究では、マト・グロッソ州北西部に1990 年代を通じて設立された農地改革の入植地における土地利用に注目した。ブラジルの農地改革は、著しい社会格差の是正に向けた施策である一方、既存の土地所有構造の改変を目的としていない点に大きな特徴がある。それは同政策が半世紀に渡り、土地の私有化を通じて、辺境域の領域化を推進するための「植民」として実施されてきたことと密接に関係する。 入植地における土地利用の分析では、国家による正則化と植民者による自発的植民の相互作用に着目した。自発的植民とは、公式な植民事業に付随して発生してきた民衆による非公式な植民事業である。その過程は、非公式に取得された土地が、行政が体系化したスキームに即して再整形され、占有に基づき適切に管理され、やがて正則化されていく流れを辿ってきた。農地改革の過程もまた、事業実施後のわずかな期間のうちに、この民衆による運動の渦中へと不可避に呑み込まれていく。 フロンティアの拡大は、立法・行政・司法に関わる諸機関を通じて有効化される正則化と多種多様な植民者によって実行される自発的植民との間の有機的共同によって推進されている。本稿では、今日なおもアマゾニア全域で展開するこの壮大な事業が、湿潤熱帯環境という極めて不安定な生態学的基盤のうえに成り立っている実態を、植民者たちのありふれた生活経験に即して描き出した。
著者
豊田 有紀 後藤 健太郎 畑 啓昭 松末 亮 山口 高史
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.199-206, 2022-03-01 (Released:2022-03-31)
参考文献数
21

症例は77歳の女性で,受診3日前から湿性咳嗽,発熱があり,SARS-CoV-2 RNA検査陽性で前医入院となった.受診日に酸素化低下,食事量低下・嘔吐があり,CTで小腸壊死を疑う所見を認め,当院に転院搬送された.術前胸部CTで肺炎像を認めず,小腸壊死による腹膜炎の診断で緊急開腹小腸部分切除術を施行した.術後腹部症状は改善したが肺浸潤影が急速に増悪し,術後5日目に呼吸不全で死亡した.SARS-CoV-2 coronavirus disease 2019(以下,COVID-19と略記)患者に手術を施行すると肺合併症のため術後死亡率が高くなるという報告があり,可能なら手術の延期や非手術治療の選択が推奨されている.本症例は小腸壊死の疑いで非手術治療が困難だったことで緊急開腹術の適応と考えられたが,術後肺炎が急激に悪化し死亡した.術前肺炎像のないCOVID-19患者でも全身麻酔手術後の予後が不良であることを示唆する1例であり,周術期の感染対策と併せて,報告する.
著者
後藤 健志
出版者
くにたち人類学会
雑誌
くにたち人類学研究 (ISSN:18809375)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-19, 2018

アマゾニアの熱帯雨林に産する向精神性の医薬であるアヤワスカは、インディオの精神文化を扱った民族誌の中では、比較的なじみの深い主題として記述されてきた。アマゾニアの生態系とは、植民者たちが到来する以前から、在来の園芸農業による改変を被りながら形成されてきた自然と人間との複合体である。アヤワスカの原料となる植物種もまた栽培種として、そこでの伝統的な生業体系の中に組み込まれてきた。本稿では、植民者たちの間で創設されたアヤワスカを実践する新宗教が、アヤワスカの慣習がもともと存在してこなかったマト・グロッソ州へと展開していく過程について、「園芸」という側面に注目して考察する。アヤワスカの摂取を通じて自己の内的世界を変性させた主体が、やがて現代的な熱帯農業の技術と融合させながら、自己を取り巻く外的世界をアマゾニア的な構成態へと再編していく過程について、筆者のフィールド・データをもとに素描する。
著者
水野 章子 泉 朋子 後藤 健 奥田 日実子 栗山 廉二郎 神谷 康司 有村 義宏 後藤 淳郎 荒井 香代子 清水 阿里 下村 有希子 高野 真理 鈴木 日和 木村 里緒 幸地 優子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.219-228, 2021

<p>【目的】血液透析(HD)患者の赤血球容積分布幅(RDW),平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)と腎性貧血治療との関連性を明らかにする.【対象】赤血球造血刺激因子製剤(ESA)投与中のHD患者926例.【方法】①RDWの中央値で分け比較.RDWを目的変数とした重回帰分析を施行.②赤血球数(RBC),MCHで分けESA量などを比較.③フェリチン,トランスフェリン飽和度で鉄欠乏・充足群に分けESA量などを比較.④鉄剤投与経路の差を比較.【結果】RDW高値群はMCH低値でESA量が多かった.RDWの規定因子はESA量,MCHなどであった.MCH 30 pg未満群はRDWが高くESA量が多かった.経口鉄剤群はRDWが低くESA量が少なかった.【結語】RDW高値,MCH低値のHD患者は赤血球の鉄利用低下が併存しESA量が多かった.MCHを指標に鉄剤を投与すればESAを減量できる可能性がある.</p>
著者
岩本 優衣 後藤 健治 芋縄 有磨 余野 聡一郎 富永 寛 陳 蘭庄
出版者
南九州大学
雑誌
南九州大学研究報告. 自然科学編 = Bulletin of Minamikyushu University (ISSN:1348639X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.115-123, 2017-04

宮崎県在来野菜の日向カボチャはニホンカボチャ Cucurbita moschataの黒皮品種群に属している。しかし,昭和40年以降はセイヨウカボチャ C. maximaが粉質の肉質と良好な食味で普及し,日向カボチャの栽培面積は減少し,現在は高級和食料亭用として宮崎市と都城の一部で施設栽培が行われているにすぎない。このような状況で本研究室では,2008年度から日向カボチャの代表品種である'宮崎早生1号'とセイヨウカボチャとの種間交雑を行い,着果効率の向上と果実特性の改善を目指してきた。本研究では,2010,2011年度に正逆ともに種子を得られた'久台33号'との種間雑種後代20系統の自殖を行い,同時着果率および糖度測定,食味官能試験,果実形態の調査を行った。同時着果率は2015年度に連作障害や細菌病が発生したことで着果率が低くなったが,2014年度の結果は16系統において同時着果が見られた。自殖により得られた果実の形質は共通として表面にブルームがあり,やや深い溝と凹凸の隆起部が見られ心臓型の果形を示し,果皮色については'久台33号'の形質が現れた。糖度測定・食味官能試験の結果は両年度ともに'宮崎早生1号'よりも糖度が高く,良食味な理想形を有する系統がいくつか得られた。
著者
後藤 健治 程内 ゆかり 松下 恵巳 田中 佑樹 西村 佳子 石井 修平 陳 蘭荘
出版者
南九州大学
雑誌
南九州大学研究報告. 自然科学編 (ISSN:1348639X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.61-65, 2013-04

宮崎県在来野菜の日向カボチャはニホンカボチャCucurbita moschataの黒皮品種群に属している。しかし,昭和40年以降はセイヨウカボチャC. maximaが粉質の肉質と良好な食味で普及し,日向カボチャの栽培面積は減少し,現在は高級和食料理亭用として宮崎市と都城市の一部で施設栽培が行われているにすぎない。本研究では,日向カボチャの品種改良のための基礎的研究として他の種との種間交雑を行った。日向カボチャの'宮崎早生1号'を中心に正逆交雑実験を行ったとき,'クロダネカボチャ'との間に交雑親和性がなく,セイヨウカボチャあるいはその両種の雑種との間では,'宮崎早生1号'を花粉親にしたとき,4つの品種との間に不完全であるが,交雑親和性があり,種子親にしたとき,'久台33号'以外では単為結果しか見られなかった。正逆交配で得られた'宮崎早生1号'×'久台33号'間の雑種の果実の形質は両親の中間で,ブルームも若干あった。予備実験的に行ったRAPD-PCR解析法による雑種検定でも種間雑種であることが示唆された。さらに雑種株を用いて自殖を行ったとき,正常な着果が見られた。