著者
岡 英明 本間 義人 恩地 芳子 櫻井 裕子 関本 美月 安藤 翔太 岩本 早紀 岩本 昂樹 近藤 美佳 梶原 浩太郎 牧野 英記 松田 健 近藤 陽一 佐藤 格夫 上村 太朗
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.583-589, 2021 (Released:2021-11-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

症例は73歳,男性.7年前に糖尿病性腎症で血液透析を導入,冠動脈ステント留置後で抗血小板薬を内服中であった.接触者検診で新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)と診断され当院に入院した.肺炎像は軽微であったが,D‒dimerが陽性でありヘパリンの予防投与を開始した.第2病日より38℃台の熱が続くため第4病日にデキサメタゾンを開始した.第6病日に腰痛が出現し,翌日には腹痛に変化した.同日の透析中にショックを呈し,貧血も進行しており透析を中止した.造影CTで左後腹膜出血と造影剤の漏出を認め,輸血を開始し感染対策を行った上で血管造影を行った.腰動脈出血を同定しコイル塞栓術で止血した.以後は貧血の進行を認めず,第60病日に転院した.COVID‒19では血栓性合併症が多くしばしば予防的ヘパリン投与が行われる.一方で抗血小板薬内服例や透析例は出血合併症のリスクが高く,抗血栓療法に関して慎重な判断が求められる.
著者
和泉 賢一 上村 太朗 松居 由夏 近藤 しおり 岡田 貴典
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.843-848, 2009-10-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は50歳,男性.腎機能低下を伴った2型糖尿病で,ナテグリニドにて治療中であった.感冒様症状のため入院前数日間食事摂取が困難となり,気分不良・意識障害で近医を受診した.意識障害の原因として低血糖を認め当院に紹介となる.ナテグリニドは吸収と消失が速く,通常,低血糖は起こりにくい薬剤である.しかし,本症例では,脱水による急性腎不全にて血清Cr 8.78 mg/dlと腎機能が悪化していた.また,ナテグリニドの血中濃度は上昇していたが,代謝産物M1とM7の血中濃度はナテグリニドより低い状態であった.すなわち,本症例は,腎機能低下に起因するナテグリニドとインスリンのクリアランス低下により低血糖を起こしたと考えられた.さらに,甲状腺機能低下状態が認められ,これが低血糖を悪化させた可能性が考えられた.ナテグリニド単独にて重篤な遷延する低血糖を起こした症例は珍しく,報告する.