著者
上林 篤幸
出版者
農林水産省 農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 = Journal of Agricultural Policy Research (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-40, 2022-11-22

1979年の「改革・解放」政策への転換から中国の経済は急速に成長し,現在中国は世界第二位の経済大国であり,豚肉は国民の食生活の中で重要な部分を占めている。中国の豚飼養頭数は世界最大であり,その主要な飼料の主要な原料である大豆はほぼ全てをブラジル,米国などの少数の輸出国からの輸入に依存している。ASF(アフリカ豚熱)は強力な伝染力を持ち一旦感染すると豚はほぼ死に至ることから,殺処分以外の対策はまだ存在しない深刻な豚の伝染病である。2018年に中国で初のASF発生が確認され,その後中国全土に拡散したことから,2019年から大規模な殺処分により豚の飼養頭数が激減した。これにより中国国内で豚肉の供給が著しく減少し国内価格の高騰が発生していることに加え,今後配合飼料の原料である大豆の輸入量の減少が見込まれる。本研究ではこれらのASFショックの影響を評価することを目的とした部分均衡モデルを新たに開発し,中国の養豚業の今後の回復速度に関する2種類の前提シナリオを設定してシミュレーションを行い,今後発生する豚肉や大豆の中国及び国際マーケットへの影響を定量的に考察した。Chinaʼs 1979 policy change toward a market economy led to rapid economic growth, making the country the worldʼs second largest economy. Pigmeat makes up an essential part of Chinaʼs dietary habits and the pig raising business depends almost completely on international imports for its important feed component, soybeans. However, due to the outbreak of African Swine Fever (ASF), China has been carrying out a large-scale nationwide cull, with serious consequences for not only the Chinese pigmeat market but also for the world soybean market. This research consists of a quantitative study on the impacts of the ASF outbreak on the pigmeat and soybean markets by developing a partial equilibrium model with several scenarios for future recovery.
著者
中川 光弘 加賀 爪優 桑原 祐史 信岡 尚道 田附 明夫 長澤 淳 金澤 卓弥 上林 篤幸 上林 篤幸 井上 荘太朗
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アジア農業モデルを開発し、農業部門への気候変動の影響予測を行い、その適応戦略を検討した。またGISやリモートセンシングを使ってアジア沿岸域への気候変動の影響予測と土地利用のあり方を検討した。農業部門への気候変動の影響は、既にアジア各地で現れているが、それが食料問題として深刻化するのは特に輸入依存度の高い最貧国であり、世界農産物市場を介して主要国の農業政策の影響も加わって、複合的な形で現れることが明らかになった。