著者
中川 光弘 宮坂 瑞穂 三浦 大助 上澤 真平
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.473-489, 2018-07-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
39
被引用文献数
9

石狩低地帯の西方には支笏-洞爺火山地域が位置し,後期更新世から大規模な爆発的噴火が続いている.これらの噴出物は石狩低地帯に多数のテフラ層として堆積しており,古くからテフラ層序学・年代学に関する多くの研究が行われてきた.それらの結果,支笏-洞爺火山地域では約13万年前頃から洞爺火山で活動が開始し,その後にクッタラ火山,そして支笏火山と活動が波及し,カルデラ形成噴火が続発したこと,さらにそれらのカルデラ火山の活動に並行して,背弧側では羊蹄山や尻別岳の活動があったことが明らかになっている.今回の巡検では代表的な露頭を巡り,北海道の更新世および完新世の主要な指標テフラとテフラ層序を紹介するだけではなく,最近の研究成果による詳細な噴火履歴および代表的噴火の噴火様式についても議論する.
著者
長谷川 健 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.53-72, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
47
被引用文献数
9 11

北海道東部,阿寒カルデラ周縁の火砕堆積物を調査し,その層序・年代を明らかにした.対比にあたっては本質物の岩石学的特徴も活用した.阿寒カルデラ起源の火砕堆積物は,古土壌などの介在によって,少なくとも40の噴火ユニットに区分できる.さらにこれらは,層序が連続し,かつ岩石学的特徴が類似する17の噴火グループにまとめられる(上位からAk1~17).Ak1~17の間には,阿寒火山以外に給源を持つ複数の火砕物が挟在する.Ak2とAk3の間には東燐の屈斜路カルデラから噴出した古梅溶結凝灰岩(0.34 Ma)が,Ak14の中には北海道中央部起源である十勝火砕流(1.3-1.46 Ma)の遠方相が堆積する.このことから,阿寒カルデラは前期更新世から活動を開始し100万年以上にわたって火砕噴火を頻発していたことが分かった.この期間,阿寒火山では,噴火グループごとに異なるマグマ系が活動していた.
著者
増渕 佳子 石崎 泰男 白井 智仁 松本 亜希子 宮坂 瑞穂 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.533-550, 2016-10-15 (Released:2017-01-20)
参考文献数
29

沼沢火山の先カルデラ期とカルデラ形成期の噴出物の岩石記載,斑晶鉱物組成,全岩主・微量成分組成および同位体組成から,沼沢火山では,噴火期ごとに流紋岩~デイサイト質マグマで満たされた珪長質マグマ溜りが再生されたことが明らかとなった.マグマ蓄積率を求めると,カルデラ形成噴火では他の噴火期に比べ2~40倍の早さでマグマが蓄積されたと考えられる.また,4.3万年前の惣山噴火以降,珪長質マグマとともに安山岩質マグマが噴出している.先カルデラ期で噴出した安山岩質マグマは,噴火の主体となった珪長質マグマと同じ同位体組成をもち,起源物質は同じであると考えられる.一方で,カルデラ形成噴火で噴出した3種類のマグマは異なる同位体組成をもつことから,地下の多様な場でマグマが発生し,それが地殻中の浅所マグマ溜りに集積したことが示唆され,このことが大規模なカルデラ形成噴火を発生させた原因の一つになった可能性が高い.
著者
長谷川 健 中川 光弘 宮城 磯治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.269-281, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

北海道東部の活火山であるアトサヌプリ火山について,最近の爆発的噴火履歴,特に水蒸気噴火の発生履歴の再検討を行った.火口近傍の露頭および2本のボーリングコアを調査し,これまで未記載であった水蒸気噴火堆積物を新たに5層発見した.その結果,従来2回とされていた最新期の水蒸気噴火が,少なくとも最近2,700年間に7回を数えることができる.特に1,500~1,000年前の間は平均で100年に1回の噴火を繰り返す頻発期であり,最新の噴火は300~400年前であることも分かった.
著者
石井 英一 中川 光弘 齋藤 宏 山本 明彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.348-365, 2008-07-15 (Released:2009-03-25)
参考文献数
48
被引用文献数
8 4

北海道中央部の十勝三股盆地周辺に分布する火砕流および火山体を対象に露頭調査,記載岩石学的分析およびK-Ar年代測定を行った結果,降下火砕堆積物の層厚変化,火砕流の層厚・溶結度・上面高度の変化,噴出年代,本質岩片の斑晶鉱物組み合わせ・ガラス組成・鉱物化学組成から,従来それぞれの地域で異なる名称で呼ばれていた4つの火砕流(無加・芽登凝灰岩,屈足火砕流,黒雲母石英安山岩質軽石流)がすべて十勝三股盆地から噴出した同一の火砕流であることが分かった.我々は十勝三股盆地を十勝三股カルデラと呼び,上記4つの火砕流を十勝三股火砕流,先行した降下火砕堆積物を十勝三股降下火砕堆積物と呼ぶことを提唱する.十勝三股カルデラは約1 Maに総噴出量130 km3以上の大規模珪長質噴火によって形成された.その噴火は大規模なプリニー式噴火で始まり,その後に火砕流が発生し,当時の基盤地形に支配されて流下した.
著者
中川 光弘
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

数千年に及ぶ噴火活動休止期の後、南西北海道の3火山(北海道駒ケ岳、有珠山および樽前山)は、西暦1640~1667年にかけてVEI=5の大噴火を起こし、噴火活動期に入った。この3火山の噴火活動の再開については、その約30年前に起こった慶長三陸沖地震(西暦1611年)の影響が指摘されている。特にその震源域については、三陸沖だけではなく北海道十勝~色丹沖まで連動していた可能性が指摘されており、地震による影響が北海道南西部に及んだ可能性は十分に考えられるが、一方で摩周や雌阿寒などの北海道東部の火山は噴火していない。本研究では、まず北海道全域の活火山の完新世の噴火活動履歴をまとめ、特に17世紀前後の噴火活動度の地域差を明らかにする。さらに上記3火山のマグマ供給系の構造と噴火過程をまとめ、北海道における地震と火山活動の関係について検討する。 北海道は東北日本弧と千島弧の2つの島弧の会合部であり、火山活動は更新世を通じて活発である。そして完新世では、まず1万年前後に比較的大規模な噴火が全域で起こっていた。千島弧に属する北海道東部では1.3万年前の雌阿寒岳(VEI=5)、7000年前の摩周(VEI=6)の大噴火があり、また東北日本弧の南西北海道では1.2万年前の濁川、9000年前の樽前山、そして約7000年前に駒ケ岳がそれぞれVEI=5の大噴火を起こした。東部では知床半島の諸火山、摩周~アトサヌプリ、雄阿寒~雌阿寒1000年前頃までは定期的にマグマ噴火を起こしており、噴火活動は活発であったといえる。一方、道南の火山は樽前山が約2500年前にVEI=5の噴火を起こしているが、その他の活火山ではVEI<3程度の噴火が散発する程度であり、活動度は低い状態が続いていた。会合部である北海道中部では、完新世ではVEI=5に達する噴火はなく、大雪山と十勝岳においてVEIが3以下の噴火が散発している。 そして17世紀になって前述したように、南西北海道では3火山が大噴火を連動したかのように起こし、その後も現在まで噴火活動は継続している。さらに3火山だけではなく、周辺の恵庭岳や恵山などでも活動が活発化した。一方、北海道東部では約1000年前頃の摩周(VEI=5)、雌阿寒岳(VEI=4?)および700年前の羅臼岳(VEI=3)のマグマ噴火を最後に、活動は低調になったようである。特に17世紀以降に限ると、北海道中部の十勝岳で小規模なマグマ噴火が散発する程度で、北海道東部ではマグマ噴火は発生していない。以上の北海道全域での火山噴火活動履歴を考えると、仮に慶長三陸地震のような大地震が北海道の火山活動に影響を与えたとすると、北海道東部の活動を低下させて、逆に南西北海道の諸火山の噴火を誘発させたことになる。つまり17世紀に起こった現象は北海道全域の応力場に影響を与えたと考えるべきであり、これは北海道が2つの島弧会合部にあることと調和的である。 次に17世紀に噴火活動を再開した、南西北海道の3火山のマグマ系について検討する。これまでの研究をまとめると、これらの火山の噴火履歴およびマグマ供給系にはいくつかの共通点が認められる。それは、1)いずれも2000~5000年あるいはそれ以上の長い休止期の後に噴火活動を再開したこと、2)主要に活動したマグマは珪長質で、その全岩化学組成はデイサイト質安山岩~流紋岩質マグマと組成差があるが、それらのメルト組成はいずれも流紋岩質であったこと、3)この珪長質マグマ溜りに噴火の数年前以内の時期にマフィックマグマが貫入して噴火した点、の3点である。このことからこれら3火山では休止期の間に、十分な量のマグマを蓄積していたと考えられる。そのため大地震で噴火を誘発することはあり得るが、例えば大地震によりマフィックマグマの活動が活発になって上昇を開始する、あるいは地殻内の応力場の変化により珪長質マグマが活発になるという可能性は、慶長地震の後に約30年の間隔をおいて、3火山の噴火が始まったことの説明が困難である。
著者
松本 亜希子 中川 光弘 井口 正人
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.545-558, 2016-09-30 (Released:2016-11-08)
参考文献数
38

On the 24th July, 2012, a large scale explosion occurred at Minamidake Summit crater of Sakurajima volcano, for the first time in last 1.5 years. This eruption is characterized by a clear, large preceding inflation ca.22 hours before the eruption. The juvenile glass particles in the volcanic ash of this eruption have less amount of microlite than those of Showa crater. The crystal size of microlite is also smaller. In contrast, their microlite number densities (MND) of plagioclase and pyroxenes are similar to those of Showa crater. According to the results of the decompression experiments by previous studies, the variations of crystallinity of microlite with the constant MND can be explained by the difference in the length of the duration for decompression, and/or the duration until the quench after the decompression. Considering these results, the juveniles of the summit eruption are derived from the eruption induced by relatively rapid decompression with rapid quench, and the juveniles from Showa crater are the products of the eruptions accompanied with the relatively slower decompression and/or the longer annealing after decompression. Therefore, it is interpreted that the 24th July, 2012 eruption was caused by rapid magma ascent with much shorter stagnation in the conduit. In contrast, the eruptions at Showa crater might have been induced by slower magma ascent and/or longer stagnation at a shallower depth of the conduit. This interpretation agrees with the data of geophysical observations. On matrix glass chemistry, juveniles of this summit eruption show the distinct trend from those of Showa crater. This feature can be produced by the difference in mode of microlite, which are crystallized during magma ascent. Accordingly, it is possible to evaluate the difference in magma ascent process, using the matrix glass chemistry.
著者
西来 邦章 石毛 康介 島田 駿二郎 中川 光弘
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.83-94, 2017-06-30 (Released:2017-07-25)
参考文献数
39

Zircon fission-track (FT) and uranium-lead (U-Pb) dating were carried out to determine the ages of the Biei, Tokachi, and Sounkyo pyroclastic flow deposits in the Biei and Kamikawa areas of central Hokkaido, northern Japan. We collected pumiceous tuff samples of the Biei pyroclastic flow deposits from two sites in the middle and lower reaches of the Biei River, and Tokachi pyroclastic flow deposits from one site to the west of Tokachi caldera. A sample of welded tuff from the Sounkyo pyroclastic flow deposits was obtained from one site in the lower reaches of the Antaroma River. The FT ages of the Biei pyroclastic flow deposits are 0.81±0.08 Ma and 0.72±0.08 Ma, identical to each other within 1σ error. However, they differ from an age of 1.91±0.06 Ma reported previously from the upper reaches of the Biei River. Based on the present data and previous results on the ages and petrographical characteristics of the deposits, they can be divided at least two geological units with different eruption ages. A FT age of 0.058±0.018 Ma (1σ) was obtained from the Sounkyo pyroclastic flow deposits. On the basis of previous studies concerning the distribution and petrographical characteristics of the deposits, this age was obtained from Hb-type pyroclastic flow deposit among the Hb- and Py-type flows of the Sounkyo pyroclastic flow deposits. The Tokachi pyroclastic flow deposits yielded a U-Pb age of 1.24±0.02 Ma (2σ), which falls within the wide range of ages reported in previous studies. Because the Tokachi pyroclastic flow deposits have a wide distribution and a wide range of ages, they can be divided into several geological units with different eruption ages, as with the Biei pyroclastic flow deposits.
著者
西村 裕一 宮地 直道 吉田 真理夫 村田 泰輔 中川 光弘
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.451-460, 2000-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
11 7

北海道東部の霧多布湿原において,湿原堆積物の掘削調査から泥炭層中に連続する層厚3cm以下の砂層を発見した.この砂層は,海側から内陸側に向かって層厚や粒径を減じ,比較的層厚の大きな地点では級化構造を呈する.また,乾燥化や塩分濃度の低下に伴って発生する珪藻化石を産出することから,この砂層を津波堆積物と認定した.砂層の下位には泥炭層を挾み,1739年の樽前a火山灰(Ta-a)と1694年の駒ヶ岳C2火山灰(Ko-c2)の2層の火山灰層が確認された.これらの火山灰層の年代をもとに泥炭の堆積速度を求めたところ,この砂層の年代はおよそ1810~50年代と推定された.1843年に,北海道東部の厚岸を中心に46名の犠牲者を出した北海道南東岸沖地震津波の歴史記録があり,この津波の前後に規模の大きな津波が霧多布湿原一帯に押し寄せた記録はないことから,本砂層は1843年の津波によりもたらされた堆積物と考えられる.
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1-2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
井村 匠 大場 司 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.203-218, 2019-03-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
42
被引用文献数
1

十勝岳火山噴出物の変質火山灰粒子について岩石学的観察を行った.4.7ka噴火,3.3ka噴火,1926年噴火噴出物を対象とした.これらの火山灰粒子は様々な程度に変質し,鉱物組み合わせからシリカタイプ(シリカ鉱物のみ),ミョウバン石タイプ(シリカ鉱物+ミョウバン石±カオリン鉱物),カオリンタイプ(シリカ鉱物+カオリン鉱物)に分類される.いずれの鉱物組み合わせも酸性熱水変質を示している.全試料において,酸性変質部と未変質部からなる弱変質した火山灰粒子が卓越する.このような岩石組織は,熱水流通系における酸性熱水-岩石反応により形成したものである.これには多量の熱水が岩石と反応しながら排出されるような反応過程が考えられ,反応時間はごく短期間であった.これらの特徴は,マグマ貫入時に一時的に形成した高温酸性熱水系による非定常プロセスに由来している.以上の点はマグマ貫入頻度が高い十勝岳の火山熱水系の特徴であると考えられる.
著者
長谷川 健 中川 光弘
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.269-274, 2014-12-31 (Released:2017-03-20)

This paper introduces a practical use of outcrop data in determining the correlation, stratigraphy and distribution of large-scale pyroclastic flow deposits (PFL). The studied area is the Akan and Kutcharo volcanic zone in Eastern Hokkaido, Japan, which have had a long and complex history of more than 20 caldera-forming eruptions during the Quaternary. A database of the stratigraphy and glass chemistry for the more than 20 PFL can be established by studying a sufficient number of representative outcrops. We found representative outcrops where stratigraphic relationships between several PFL can be observed at the same time. We analyzed glass chemistry of juvenile pumices (>10 clasts) of the PFL. The database enables to identify all exposed PFL in this area, thus allowing us to draw detailed maps of the distribution for each PFL. The database can be also used for correlation and chrono-stratigraphic determination of reworked volcanic deposits, such as terrigenous marine deposits in Kushiro region, located on the plains at the foot of Akan and Kutcharo volcanoes.
著者
松本 亜希子 宮坂 瑞穂 中川 光弘
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.78, pp.1-9, 2015-03

We examined the analysis method of the compositions of volcanic glass using WDS-EPMA, focusing on Na migration caused by electron-beam bombardment. As a result of the comparison among the beam current in 10 μm square area, it is concluded that Na migration occurs in any cases at 15 kV. During the first 30 seconds, Na decay is not observed, and therefore, the detection of Na must be finished within the first 30 seconds. Considering the variations of other elements, the 15 kV accelerating voltage and 7 nA beam current with raster scanning of 10 μm square area is the best condition for the determination of volcanic glass compositions. This can prevent "grow-in" of Si and Al, as well as can make smaller the deviations of the minor elements. Using this condition, we can discuss the variations of volcanic glass compositions (except for Na) without any corrections.
著者
松尾 良子 中川 光弘
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

ニセコ火山群は,南西北海道火山地域の北端に位置する東西25km,南北15kmにおよび,10以上の成層火山や溶岩ドームからなる第四紀火山群である.これまでのニセコ火山群の地質学的研究は,広川・村山(1955)による図幅調査に始まり,大場(1960)や NEDO(1986,1987)により行われている.これらの結果からその噴火活動は約160万年前には開始し,西から東へと新しい火山体を形成しながら現在まで活動が継続していることが明らかになった.地形や噴気活動の有無から,イワオヌプリ火山は,ニセコ火山群の中でも最も新しい火山体とされる.奥野(2003)によって,イワオヌプリ起源と考えられるテフラが見出され,その年代として約6000年前の14C年代値が報告された.しかしながら,奥野(2003)では測定された14C年代値についての信頼度は低いことを指摘しており,またその噴火の様式や給源火口については明らかにされていない.そこで我々は,ニセコ火山の特に完新世の噴火活動履歴と様式を明らかにすることを目的として,地質学的研究を進めている. これまではイワオヌプリとニトヌプリの両方が,ニセコ火山群では最も新しい山体として捉えられることが多かった.イワオヌプリ火山及びニトヌプリ火山を構成する岩石は,斑晶として斜長石,単斜輝石,斜方輝石および磁鉄鉱を含む安山岩である.これに加えてイワオヌプリ火山の岩石は斑晶として角閃石を含まないが,ニトヌプリ火山の多くの岩石は角閃石斑晶を含む.また,全岩化学組成では,両火山はハーカー図上で多くの元素でそれぞれ別の組成変化を示していることで区別できる.両者の噴出中心の位置的違い,被覆関係および岩石学的性質から,両者は独立した火山として考えるべきである.よって本研究では,ニトヌプリ火山活動後に活動したイワオヌプリ火山のみを,ニセコ火山の最新の活動期として取り扱う. イワオヌプリ火山(標高1,116m)は,ニセコ火山群東部に位置し,ニトヌプリ火山活動後,その東側に形成された比高約350m,基底直径約2kmで,火砕丘や複数の溶岩ドームおよび溶岩から構成される火山である.火山体の西側には,直径約800mのイワオヌプリ大火口火砕丘があり,その頂部には直径約1kmのイワオヌプリ大火口が開口している.その火口内部には小イワオヌプリと呼ばれる小型の溶岩ドームが形成されており,それを覆って,大イワオヌプリと呼ばれる山体が形成されている.下部の溶岩ドームと山頂部から東側にかけての複数枚の溶岩から形成されている.さらに,五色温泉火口などの複数の小火口が火山体全域に認められる.イワオヌプリ火山については,被覆関係と噴火様式,噴出中心の違いから,①イワオヌプリ大火口火砕岩類②小イワオヌプリ溶岩ドーム③大イワオヌプリ下部溶岩ドーム④大イワオヌプリ上部溶岩類⑤イワオヌプリ水蒸気噴火火砕岩類の5つのユニットに区分できる. 最初の活動である,イワオヌプリ大火口火砕岩類を形成した活動は,まず水蒸気噴火から始まり,その後はマグマ噴火に移行し爆発的噴火により噴煙柱を形成し,その過程で断続的に火砕流が発生した.この噴火に伴うテフラが奥野(2003)で見出したNsIw-1テフラである.このテフラは東方から西方に向かって層厚および構成物の粒径が増大し,イワオヌプリ大火口火砕丘に対比できる.今回新たに試料を採取し,火砕流中の炭化木片からは9480 cal. yBP,テフラ直下の土壌からは10910 cal.yBPの14C年代が得られた.よってイワオヌプリ火山の活動開始は約9500年前であることが明らかになった.その後は,溶岩ドームの形成や溶岩流出を繰り返し山体が成長した.これらの山体には多くの爆裂火口が形成されており,水蒸気噴火やマグマ水蒸気噴火なども並行して頻発したと考えられる.確認された最後のマグマ噴火は,山頂部から大イワオヌプリ上部溶岩類の流出であるが,水蒸気噴火はその後も発生している可能性が高い.実際に五色温泉近くでの爆発角礫岩層の年代としてmodernという炭素年代測定結果が得られた.今回の調査では最初期の活動年代は明らかにできたが,その後の噴火史についてまだ十分な議論はできない.しかし,9500年前の噴火後の山体の成長と,多数の新しい爆裂火口の存在を考えると,イワオヌプリ火山は完新世を通じて活動した,活動度の高い火山の可能性が高い.
著者
石毛 康介 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.73-91, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
23
被引用文献数
2

旭岳(標高2291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東には熊ヶ岳(2210m)の火砕丘と後旭岳(2216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳サブグループの活動は,山体の違いによって熊ヶ岳火山体,後旭岳火山体,旭岳火山体の3つに大別される.旭岳火山体については主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気噴火を行った後期に区分され,さらに前期噴出物は噴出量とマグマタイプの違いを基にE-1サブステージとE-2サブステージに細分される.旭岳サブグループの噴出物は,特に苦鉄質側岩石の組成で山体および活動期間で区別できる.旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスであるが,今回の検討によって山体(火口)および山体での活動期毎に,特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった.
著者
谷口 宏充 栗谷 豪 宮本 毅 長瀬 敏郎 菅野 均志 後藤 章夫 中川 光弘 伴 雅雄 成澤 勝 中川 光弘 奥野 充 伴 雅雄 前野 深 嶋野 岳人 板谷 徹丸 安田 喜憲 植木 貞人 古畑 徹 小嶋 芳孝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

頭山およびそれを包括する蓋馬溶岩台地に関して、現地調査、衛星データー解析、採集した資料の化学分析・年代分析、国内の関連地層の調査・年代分析などの手法を用いて、白頭山10世紀巨大噴火の概要、白頭山及び蓋馬溶岩台地の火山学的な実態を明らかにしようとした。開始してから1年後に北朝鮮のミサイル問題・核開発問題などの諸問題が発生し、現地での調査や研究者との交流などの実施が徐々に困難になっていった。そのため、すでに収集していた試料の分析、衛星データーの解析及び国内での調査に研究の主力を移し、可能な限りの成果を得ようとした。その結果、近年発生している白頭山における地震多発とマグマ活動との関係、存在は知られているが分布や内容が全く未知である蓋馬溶岩台地の概要が明らかになり、更に、地下におけるマグマの成因についても一定の結論を得た。混乱状態にある白頭山10世紀噴火の年代問題をふくめ、また、北朝鮮からの論文を含め、研究成果は12編の論文として論文集にまとめられつつある。