著者
小林 麻紀 高野 伊知郎 田村 康宏 富澤 早苗 立石 恭也 酒井 奈穂子 上條 恭子 井部 明広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.35-40, 2007-04-25 (Released:2008-04-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

1995年4月から2005年3月に東京都内で市販されていた玄米を中心とした国産米および輸入米375検体について残留農薬調査を行った.その結果,国産米では343検体中47検体から,有機リン系,有機塩素系,カルバメート系,ピレスロイド系,含窒素系農薬および総臭素が検出された.輸入米では32検体中18検体からジクロルボスおよび総臭素が検出された.農薬を検出した米について国民栄養調査の食品群別摂取量から農薬の摂取量を算出し,おのおののADIと比較した.算出された農薬の摂取量はADIの17/10,000∼2/5といずれも低く,通常の喫食状況からみて特に問題となるものはなかった.
著者
八巻 ゆみこ 富澤 早苗 増渕 珠子 上條 恭子 中島 崇行 吉川 聡一 長谷川 恵美 小鍛 治好恵 渡邊 趣衣 橋本 常生 大塚 健治
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-36, 2021-02-25 (Released:2021-03-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ライムのLC-MS/MSを用いた191成分の残留農薬を対象とした一斉分析法を開発し,妥当性評価を行った.試料から農薬をアセトニトリルで抽出し,無水硫酸マグネシウム,炭酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを加え塩析・脱水処理を行った.遠心分離を行い,上層を分取しアセトニトリルで定容した.続いて一定量をC18/GC/PSA固相カラムに負荷して精製を行い,LC-MS/MSにて測定した.従来の農産物対象の検査方法ではライムからの回収率が低かったチアベンダゾールについても回収率が向上した.厚生労働省の妥当性評価ガイドラインに従い2濃度で実施した妥当性評価では191成分中175成分がガイドラインの基準を満たした.また,都内で流通しているライム19試料についても実態調査を行い,18試料から残留農薬を検出した.本法はライムを対象とした残留農薬一斉分析に有用な分析法であると考えられる.
著者
渡邊 趣衣 八巻 ゆみこ 富澤 早苗 増渕 珠子 上條 恭子 中島 崇行 吉川 聡一 山本 和興 髙田 朋美 小鍛治 好恵 大澤 佳浩 大塚 健治 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.247-253, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
7

LC-MS/MSによる乾燥唐辛子中残留農薬分析法の開発を行い,その妥当性評価を実施した.分析法はマトリクス効果を抑制するため,LC条件,精製カラムおよび試験溶液の希釈倍率を検討した.精製カラムはENVI-CarbIITM/PSA (300/600 mg,6 mL)を使用した.さらにマトリクス効果を抑制するため試験溶液の検討では,マトリクス効果および一律基準値相当の測定感度の観点から,8倍希釈液を採用した.これらを元に107農薬について2濃度(0.01および0.1 μg/g)で2併行5日間の妥当性評価を実施した結果,96農薬で真度70.1~112.6%,併行精度11.5および3.4%以下,室内精度24.3および19.9%以下となり,ガイドラインの基準に適合した.また不適合であった主な原因はマトリクス効果と抽出での低回収であると示唆された.
著者
中島 崇行 大塚 健治 富澤 早苗 増渕 珠子 八巻 ゆみこ 上條 恭子 吉川 聡一 髙田 朋美 小鍛治 好恵 渡邊 趣衣 大澤 佳浩 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.154-160, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
23
被引用文献数
2

食品中の残留農薬分析において,ある農薬の定量値が正しいかどうかを確認するため,異なる機器を使用して定量値の確認を行うことがしばしばあるが,それぞれの機器の値が完全に一致することは珍しい.本研究では,食品毎にどの程度違いがあるかを比較するため,当研究室の日常検査法を用い,121成分,6種類(グレープフルーツ,ばれいしょ,パプリカ,キャベツ,ほうれんそう,玄米)の食品について,GC-MS/MSおよびLC-MS/MSそれぞれの機器で妥当性評価を実施し,その結果を主に真度に着目して比較した.その結果,GC-MS/MSでは,上述の食品において97,111,110,118,111,63成分が基準に適合した.一方LC-MS/MSでは,50,114,103,112,100,103成分が基準に適合した.これら両機器の結果の差は,主にマトリクス効果によるものだと考えられ,マトリクス効果の補正によりそれぞれの真度は近似した.しかし真度の一致度については食品試料による差が大きく,特に玄米ではマトリクス効果を補正しても両機器の真度の差は20%以上であった.
著者
中島 崇行 大塚 健治 富澤 早苗 増渕 珠子 上條 恭子 八巻 ゆみこ 吉川 聡一 長谷川 恵美 小鍛治 好恵 渡邊 趣衣 橋本 常生
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.234-238, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
9
被引用文献数
5

殺虫剤であるクロラントラニリプロールの実態調査を行った.試験溶液は,QuEChERS法を応用した抽出とC18/GC/PSAによる精製により調製し,LC-MS/MSにより測定・定量を行った.8食品で分析法の性能評価(n=5)を行ったところ,回収率は50.2~93.4%, RSDは9.7%以下であった.本分析法を用い,野菜207検体および果実163検体を分析したところ,検出限界(4 ng/g)を超える検体数(検出率)は野菜で17検体(8.2%),果実で2検体(1.2%)であった.なかでもオクラ(10検体中4検体),パプリカ(23検体中4検体)およびトマト(6検体中2検体)の検出率が高く,さらに葉菜類では高濃度に残留している検体があり,最も高濃度の残留が認められたのは国産のみず菜(571 ng/g)であった.また,国産を含めてアジア圏の検体からの検出が大半を占めた.しかし,いずれの検体においても,MRLを超える残留は認められなかったことから,クロラントラニリプロールの適切な使用が伺えた.
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 上條 恭子 岩越 景子 佐藤 千鶴子 永山 敏廣 高野 伊知郎
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-236, 2011
被引用文献数
6

農薬混入による健康被害事例に対応するため,簡易で迅速な分析法について検討を行った.試料に無水硫酸ナトリウムを加え,酢酸エチルで抽出し,ケイソウ土,C18,グラファイトカーボン(GCB)およびPSAの各カラムで精製を行い,GC-MSおよびGC-FPDで測定を行った.主に毒物あるいは劇物に指定されている農薬から選択した57農薬を測定農薬とし,10種類の加工食品(インスタントラーメン,ハクサイキムチ,コンビーフ,ウナギ蒲焼き,乾燥エビ,冷凍ギョウザ,レトルトカレー,ワイン,チーズおよびバター)を対象に添加回収試験を行った.油脂や食品成分の影響により,測定が困難なものもあったが,添加回収率はおおむね70~120%であり,中毒量の農薬が存在するか否かを簡易迅速に判定することが十分可能であった.
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 酒井 奈穂子 上條 恭子 影山 百合子 高野 伊知郎 永山 敏廣
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.261-269, 2009
被引用文献数
2

1994年4月から2006年3月にかけて東京都内で市販されていた輸入果実加工品600検体について農薬の残留調査を行った.その結果,75検体から30種類の有機リン系農薬,有機塩素系農薬,ピレスロイド系農薬およびカルバメート系農薬,有機窒素系農薬およびその他の農薬が痕跡値(0.01 ppm未満)~0.37 ppmの範囲で検出された.農薬が検出された果実加工品は,果実を乾燥した乾燥果実や搾汁したジュース,また,農薬の検出頻度の高い果皮や全果を原材料に使用しているものであった.農薬を検出した果実加工品について,食品群別平均摂取量から算出したそれら農薬の推定摂取量をおのおののADIと比較したところ,各ADI値の0.1未満~3.9% であった.このことから通常の喫食状況で特に問題はないと考えられた.