著者
永山 敏廣
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.418-425, 2005-11-20
被引用文献数
3 7

農薬は、殺菌、殺虫、除草などの効力が、カビの生育を抑える、害虫を駆除する、雑草が枯れるなど目に見える形で現れるため、消費者に不安を抱かせることがある。食品安全委員会が実施している食品安全モニターによる「食の安全性に関する意識等について」(平成17年5月実施)の調査結果1)によると、「農薬」に対して86.4%の人が不安を唱えた。「農薬」に対して不安を唱える人の割合は、平成16年5月の調査結果(89.7%)に比較して若干減ってはいるものの、調査を始めた平成15年度以降高い割合を維持している。このような状況の中、平成14年春から夏にかけて中国産冷凍ホウレンソウからクロルピリホスが残留農薬基準を超えて検出される違反事例が相次いだ。当該輸入食品に対する検疫所における検査の強化にもかかわらず、国内流通品からも同様の違反品が相次いで発見されたことから、食品の安全確保に関する新たな施策が求められるようになった。そしで、平成14年8月7日、「食品衛生法の一部を改正する法律」(平成14年法律第104号)が公布され(平成14年9月7日施行)、包括的な輸入・販売禁止制度が導入された。
著者
永山 敏廣 小林 麻紀 伊藤 正子 田村 康宏 塩田 寛子 友松 俊夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.464-469_1, 1997-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
14

無農薬あるいは減農薬栽培農産物として東京都で市販されていた野菜類23品種114作物及び果実類7品種9作物について, 農薬の残留実態 (1988~1994年度) を調査した. 野菜類では9品種23作物からEPN, プロチオホスなどの有機リン系殺虫剤やTPN, プロシミドンなどの有機塩素系殺菌剤など, 13種類の農薬が検出された. また, 果実類では2種3作物から4種類の農薬が検出された. 食品衛生法の食品規格を超える検出例はなかった. 慣行栽培品に比較し, なす科作物で検出率及び検出量が低い傾向が認あられた. その他の作物では, 検出量はやや低かったが, 特に大きな差異は認められなかった.
著者
永山 敏廣 真木 俊夫 観 公子 飯田 真美 田村 行弘 二島 太一郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.39-45, 1989-02-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
12
被引用文献数
5 5

日本茶の茶葉中に検出された有機リン系農薬は, 茶の種類や生産地により特徴が見られた. また, 多種の農薬が同一の茶葉に残留し, とくに, MEP, EPNおよびイソキサチオンの検出率が高かった. さらに, CVP, イソキサチオンおよびプロチオホスは, 1ppmを超えて残留した茶葉が見られた. これら残留量の多かった農薬のうち, イソキサチオンおよびプロチオホスは茶湯中への浸出率が低く, 飲用上とくに問題はないと考えられる. しかし, CVPは3ppmを超えて残留した茶葉があり, 浸出率も高かった.今回の調査では, 茶葉中の有機リン系農薬の残留量は全般的には微量であり, 食品衛生上とくに問題があるとは考えられない. しかし, 登録保留基準値を超える農薬の残留するものが1検体とはいえ見いだされており, また, 同一の茶葉に多種の農薬が同時に残留していたことから, 今後生産者は農薬散布に当たり, その使用時期や使用方法などに十分配慮して, 茶葉中残留農薬量を極力減らし, 消費者の安全を図らなければならないと考える.
著者
井部 明広 西島 基弘 斉藤 和夫 安田 和男 上村 尚 永山 敏廣 牛山 博文 直井 家壽太 二島 太一郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.334-341_1, 1984
被引用文献数
6

食品中のオクラトキシン (OCT) A及びBの分析法を検討した. 試料からメタノール-1%炭酸水素ナトリウム溶液 (1:1) で抽出後, エーテルに転溶した. 抽出物は15%含水シリカゲルカラムでクリーンアップ後, カラムに Finepak SILC<sub>18</sub>, 移動相にアセトニトリル-0.1%リン酸 (50:50), 検出器に蛍光を用いた高速液体クロマトクフフィー (HPLC) で測定した. 添加回収率は20,100ppb添加で87-101%であり, 定量限界は試料あたり約2.5ppbであつた. また, 確認法としてメタノール-硫酸によりOCTのメチルエステル誘導体を作製し, HPLCにより確認を行った. 本法を用い市販品171検体に適用したところ, らい麦粉15検体からOCTAをTrace-20ppbの範囲で検出した.
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 上條 恭子 岩越 景子 佐藤 千鶴子 永山 敏廣 高野 伊知郎
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-236, 2011
被引用文献数
6

農薬混入による健康被害事例に対応するため,簡易で迅速な分析法について検討を行った.試料に無水硫酸ナトリウムを加え,酢酸エチルで抽出し,ケイソウ土,C18,グラファイトカーボン(GCB)およびPSAの各カラムで精製を行い,GC-MSおよびGC-FPDで測定を行った.主に毒物あるいは劇物に指定されている農薬から選択した57農薬を測定農薬とし,10種類の加工食品(インスタントラーメン,ハクサイキムチ,コンビーフ,ウナギ蒲焼き,乾燥エビ,冷凍ギョウザ,レトルトカレー,ワイン,チーズおよびバター)を対象に添加回収試験を行った.油脂や食品成分の影響により,測定が困難なものもあったが,添加回収率はおおむね70~120%であり,中毒量の農薬が存在するか否かを簡易迅速に判定することが十分可能であった.
著者
小林 麻紀 大塚 健治 田村 康宏 富澤 早苗 酒井 奈穂子 上條 恭子 影山 百合子 高野 伊知郎 永山 敏廣
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.261-269, 2009
被引用文献数
2

1994年4月から2006年3月にかけて東京都内で市販されていた輸入果実加工品600検体について農薬の残留調査を行った.その結果,75検体から30種類の有機リン系農薬,有機塩素系農薬,ピレスロイド系農薬およびカルバメート系農薬,有機窒素系農薬およびその他の農薬が痕跡値(0.01 ppm未満)~0.37 ppmの範囲で検出された.農薬が検出された果実加工品は,果実を乾燥した乾燥果実や搾汁したジュース,また,農薬の検出頻度の高い果皮や全果を原材料に使用しているものであった.農薬を検出した果実加工品について,食品群別平均摂取量から算出したそれら農薬の推定摂取量をおのおののADIと比較したところ,各ADI値の0.1未満~3.9% であった.このことから通常の喫食状況で特に問題はないと考えられた.
著者
坂本 美穂 竹葉 和江 笹本 剛生 草野 友子 林 洋 金井 節子 神田 真軌 永山 敏廣
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.51-58, 2011
被引用文献数
13

LC-MS/MSを用いて,鮭および蜂蜜中のジメトリダゾール,メトロニダゾールおよびロニダゾールの分析法を検討した.各薬剤を酢酸エチルで抽出した後,シリカゲルカートリッジカラムを用いて精製を行った.測定は各薬剤の安定同位体標識標準品を用いて,SRMモードで行った.鮭および蜂蜜に0.4~2 μg/kgとなるように各薬剤を添加して,添加回収試験を実施したところ, 回収率91.2~107.0%,併行精度1.7~17.1%,室内精度20% 未満であった.鮭および蜂蜜中の各薬剤の検出限界は0.05~0.2 μg/kgであった.本法を鮭3試料,蜂蜜20試料に適用したところ,食品衛生法上,違反になる検体は認められなかった.