著者
上條 諒貴
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.57-70, 2017 (Released:2020-03-01)
参考文献数
23

議会の過半数を占める政党が存在する「多数状況(majority situation)」における内閣総辞職は,議院内閣制における内閣の終了を扱った研究が拠って立つ政党間交渉の理論からでは説明困難な現象である。本稿では,数理モデルを用いて執行部への党内支持の観点から総辞職を理論的に分析する。モデルの含意として,党への支持が低下している場合に,現在の世論により合致した政策選好を持った政治家に党首を交代させることで支持を回復するという戦略の有効性が増すため,多数状況においては政党が集権的な場合の方がより総辞職が起こりやすいという仮説が提示される。理論的検討の後,この仮説を1960年から2012年の日本の内閣データを用いて実証する。分析の結果,内閣支持率などの変数を統制してもなお,党内の集権性が高まった政治制度改革後の方が内閣総辞職のリスクが高いことが示される。
著者
上條 諒貴
出版者
北九州市立大学法学会
雑誌
北九州市立大学法政論集 (ISSN:13472631)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1・2合併号, pp.1-38, 2020-12

本稿では、議院内閣制において政府の政策が失敗したことから生じるコストの違いが、有権者に対する政府(首相)のアカウンタビリティにどのように影響するかを、政治家と有権者の間に首相の能力に関する情報の非対称性が存在しないと仮定する対称情報の数理モデルを用いて検討する。
著者
上條 諒貴
出版者
北九州市立大学法学会
雑誌
北九州市立大学法政論集 (ISSN:13472631)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1・2合併号, pp.105-135, 2022-10

本稿は、特定の確率分布が満たす性質である、いわゆる「単調尤度比性」について、その基礎的な事項を紹介することを目的とする。身近な具体例を用いながら、そのモチベーションや技術的事項を解説したのち、政治学の数理分析における応用例も併せて紹介する。
著者
上條 諒貴
出版者
北九州市立大学法学会
雑誌
北九州市立大学法政論集 (ISSN:13472631)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1・2合併号, pp.1-44, 2021-10

本稿では、議院内閣制において政府の政策が失敗したことから生じるコストの違いが、有権者に対する政府(首相)のアカウンタビリティにどのように影響するかを、政治家のみが首相の能力の高低を知っており、有権者はわからないという非対称情報を仮定した数理モデルを用いて検討する。
著者
上條 諒貴
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.2_264-2_288, 2019 (Released:2020-12-21)
参考文献数
27

本稿は、議院内閣制における 「内閣改造」 を、外部の政治状況の変化に応じた首相の人事権の戦略的行使と捉え、それが首相の地位維持にいかに資するかという観点から分析するものである。 まず、数理モデルを用いて、現政権 (首相) への有権者からの支持が低下すると、大臣職を与えることによって首相からの政策的距離が遠い議員の支持を取り付けることが困難になり、首相は地位維持に必要な党内支持を獲得できる可能性に賭けて自らに政策的に近い議員を大臣に任命するようになるという仮説を導く。 その後、「東京大学谷口研究室・朝日新聞共同調査」 および第一次安倍政権以降の日本の大臣人事データを用いた計量分析によってこの仮説を検証する。首相からの政策距離と内閣支持の交差項を含んだロジスティック回帰分析の結果、内閣支持が低下すると、経済政策に関する政策的距離が首相に近い議員の方が有意に大臣に任命されやすくなることが示される。
著者
上條 諒貴
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.2_264-2_288, 2019

<p>本稿は、議院内閣制における 「内閣改造」 を、外部の政治状況の変化に応じた首相の人事権の戦略的行使と捉え、それが首相の地位維持にいかに資するかという観点から分析するものである。</p><p> まず、数理モデルを用いて、現政権 (首相) への有権者からの支持が低下すると、大臣職を与えることによって首相からの政策的距離が遠い議員の支持を取り付けることが困難になり、首相は地位維持に必要な党内支持を獲得できる可能性に賭けて自らに政策的に近い議員を大臣に任命するようになるという仮説を導く。</p><p> その後、「東京大学谷口研究室・朝日新聞共同調査」 および第一次安倍政権以降の日本の大臣人事データを用いた計量分析によってこの仮説を検証する。首相からの政策距離と内閣支持の交差項を含んだロジスティック回帰分析の結果、内閣支持が低下すると、経済政策に関する政策的距離が首相に近い議員の方が有意に大臣に任命されやすくなることが示される。</p>
著者
上條 諒貴
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.57-70, 2017

議会の過半数を占める政党が存在する「多数状況(majority situation)」における内閣総辞職は,議院内閣制における内閣の終了を扱った研究が拠って立つ政党間交渉の理論からでは説明困難な現象である。本稿では,数理モデルを用いて執行部への党内支持の観点から総辞職を理論的に分析する。モデルの含意として,党への支持が低下している場合に,現在の世論により合致した政策選好を持った政治家に党首を交代させることで支持を回復するという戦略の有効性が増すため,多数状況においては政党が集権的な場合の方がより総辞職が起こりやすいという仮説が提示される。理論的検討の後,この仮説を1960年から2012年の日本の内閣データを用いて実証する。分析の結果,内閣支持率などの変数を統制してもなお,党内の集権性が高まった政治制度改革後の方が内閣総辞職のリスクが高いことが示される。
著者
上條 諒貴
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-30, 2018 (Released:2020-01-29)
参考文献数
31

本稿は、同一政党内での首相の交代という、内閣の終了に関する従来の理論では説明困難な現象に対して、党首選出制度の違いに着目することで接近を試みるものである。本稿ではまず、党首選出制度の開放性(一般党員の関与)の違いが、選出される新首相の政策位置・能力・人気、そして現在の首相交代の可能性にどのように影響するかを考察するための数理モデルを構築する。モデルの検討の結果、議員のみで党首を選出する閉鎖的党首選出制度の下でのほうが、一般党員が関与する開放的選出制度の下より首相交代が起こりやすいという仮説が導かれる。その後、オーストラリア、カナダ、日本、イギリスの首相データを用いた生存分析によって、数理モデルの含意を検証する。分析の結果、一般党員など議会外政党が関与する党首選出制度の下の首相より、議員のみで党首を選出する制度の下の首相の方が交代するリスクが有意に高いことが示される。