著者
上田 博史 横田 浩臣 田先 威和夫
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.113-120, 1979-05-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

飼料中のメチオニン過剰がヒナのエネルギーおよび窒素の利用性を低下させることは既に報告した。メチオニン過剰による成長阻害はグリシンによって緩和されることが知られている。本実験では, グリシンによる緩和効果を飼料エネルギーおよび窒素の利用性の面から検討した。供試ヒナには8日齢の白色レグホーン雄を用い, 2羽を1群とし, 各試験区に4群ずつを割りあてて12日間飼育した。対照飼料にはメチオニンとグリシンを適量補足したダイズ蛋白質を用い, 蛋白質含量が20%になるように調製した。これにさらに1.5%のメチオニンを添加したものをメチオニン過剰飼料とした。さらにこれら両飼料に1.5%, 3.0%および4.5%のグリシンを添加した飼料を調製し, 飼育試験終了後ヒナの屠体分析を行った。対照飼料においては, 過剰のグリシンを添加しても障害はみられなかった。一方, メチオニンの過剰給与はヒナの増体重, 飼料摂取量および飼料効率を著しく減少させたが, これらはいずれもグリシンの添加で軽減され, 特に飼料効率ではメチオニン適量飼料との間に差が認められなかった。屠体成分はメチオニンの過剰給上与により脂肪が減少し, 水分が増加した。メチオニン適量および過剰飼料に高濃度のグリシンを添加すると, 脂肪含量の減少がみられた。しかし, 蛋白質含量は試験飼料によって影響を受けなかった。以上の結果より, メチオニン過剰飼料を摂取したヒナのエネルギー蓄積量は著しく低下したが, グリシン添加により低下の度合は減少した。飼料エネルギーの代謝率 (代謝エネルギー/総エネルギー) は飼料間で差がなかったが, 代謝エネルギーの利用性(エネルギー蓄積量/代謝エネルギー摂取量) はメチオニン過剰飼料で最も低く, これはグリシン添加により改善されたが, メチオニン適量飼料には及ばなかった。窒素の利用性 (窒素蓄積量/窒素摂取量, および窒素蓄積量/飼料摂取量) も過剰のメチオニン添加で有意に低下したが, グリシンの添加によりメチオニン適量区と同程度にまで改善された。またグリシンによる成長阻害の緩和は飼料摂取量に差がない場合でもみられることから, 飼料の利用性の改善によるところが大きいものと考えられる。
著者
上田 博史 橘 哲也
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

二者択一の選択試験は,飼料原料の嗜好性や動物の栄養素摂取調節能力を調べるために有効な方法である.しかし,単飼したヒナに同じ飼料を2つの給餌器から与えると,試験開始直後,半数のヒナは右側の給餌器から(右利き),残りの半数は左側の給餌器から飼料を摂取する(左利き).右利きと左利き,あるいは同じ利き腕をもつヒナを2〜4羽群飼して改めて選択試験を行うと,単飼のとき右利きだったものが右側から,左利きが左側から食べるということはなく,常に連れ添って食べる.好みの給餌器の位置が群飼するとリセットされるということは,右利き・左利きが先天的な行動というよりは他の因子によって引き起こされている可能性を示唆する.特定の給餌器に対する固執は時間の経過に伴い消失するが,例外も存在する.単飼ケージは10〜12個が一つの棚に配置されているが,両端にあるケージで飼育されたヒナでは固執の解消が見られないことがある.両端に置かれたヒナの左右の一方にはケージが置かれていない.一般に,体重の等しいヒナを並べて選択試験を行うと,両端のヒナは隣人のいる内側の給餌器から摂食する.しかし,体重の大きなヒナを内側のケージに入れると,内側の給餌器からの摂取量は減少する.したがって,隣人との社会的な関係によって,好みの給餌器は変わるものと考えられる.このような行動は,塩酸キニーネを添加した嗜好性の低い飼料を選択させたときにも見られ,選択試験の精度を低下させることも明らかになった.本研究課題では,脳質内投与法を用いたヒナの摂食調節物質の検索も同時並行して行ってきたが,脳内のガラニンやノルアドレナリンが摂食促進作用をもつこと,また一酸化窒素の食欲促進作用が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンと関連していることも明らかにした.