著者
上田 昌文
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.46-57, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)

本稿では,福島原発事故に立ち上がった,市民による放射線計測活動を広く見渡し,それらの特徴を分析するための4 つの指標,すなわち,放射線計測活動の実施主体,その計測対象となる被曝の型,その計測対象となる核種,市民計測活動の取り組み事項,を提示した.また市民計測活動を,その様々な取り組み内容を整理して8 つの類型に分け,それぞれについて先の指標を用いて,放射線防護の上でどういう意義を持つものであるかを述べた.従来行政側が一元的に担うものとみなされてきた原子力防災や放射線防護のあり方の限界を知りその打開策を探る上で,市民計測活動は大きな示唆を投げかける,歴史的な意義を持つ活動と考えることができる.
著者
林 衛 難波 美帆 上田 昌文 島薗 進 鬼頭 秀一
巻号頁・発行日
pp.1-59, 2012-11-17

2011年3月に原発震災が始まってから1年半がすぎ,子ども・被災者支援法が成立したものの,被曝を避ける権利は十分に確立せず,低線量被曝問題では,がれき処理,食品「風評被害」問題など,混乱は収まる気配をみせていない。それどころか,「対立」や「分断」が深刻化している場面もみられる。また,エネルギー政策,脱原発をめぐる政策立案に向けたパブリック・コメントや意見聴取会が参加型民主主義の新しい試みとしてとりいれられたものの,その実施方法や広報に大きな課題を残している。そこで,研究者や政府,市民,メディアによる原発に関するリスクコミュニケーション,意思決定のための情報共有の分析事例を話題提供者が紹介し,対論者のコメントと会場とのやりとりによって,問題点の共有,掘り下げを実現する。情報共有のためには,どの事実に着目するかとともに,科学者といえども逃れられない(専門家ゆえに偏りがちな)バイアスの存在に気づく重要性が科学技術社会論の問題として浮かびあがる。そこで,オーガナイザ自身による問題提起・報告に続き,以下の報告,発言をお願いした。[報告]:難波美帆 参加型民主主義のための情報導線̶道はついたのか上田昌文 食品放射能汚染への対策はいかにあるべきか̶市民科学の実践から[コメント]:島薗 進 なぜ専門家は放射能健康影響を過小評価するのか?/佐倉 統 なぜ人は放射能を怖がるのか?/鬼頭秀一 中立的な立場を取ろうとする専門家がリスクコミュニケーションに失敗するのはどうしてか̶政策論的立場からの脱却の必要性と地を這う視点の獲得の必要性
著者
柿原 泰 上田 昌文 笹本 征男 瀬川 嘉之 吉田 由布子 渡辺 美紀子 桑垣 豊
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、原爆被爆者調査とは何だったのか、どのような調査研究を、何のため、誰のために行なってきたのかについて、科学史的に明らかにすることを目的として、先行研究の再検討やこれまであまり知られていなかった資料の発掘・研究を行なった。とくに原爆投下直後から始まり米軍占領下初期に「学術研究会議・原子爆弾災害調査研究特別委員会」として組織化された日本側の原爆調査について重点的に調査・検討を進め、その成果の一部を報告書『原爆調査の歴史を問い直す』にまとめた。