著者
林 衛 難波 美帆
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

発表された事実を紹介しただけでは,あるいは,対立する見解を並べて紹介しただけでは,それらの背後に隠れている真の問題点を報道したことにはならない。問題点が共有されないままでは,問題解決は先送りはされかねない。阪神・淡路大震災以降の政府による財政拡大・ショックドクトリン政策は,利権獲得と富の奪い合いを煽っており,民主主義の目的をゆるがしてしまっている。この構造を自覚し,市民社会の再構築・目的の共有を実現するために,調査報道の重要性は高まっているといえる。
著者
難波 美帆 林 衛
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、東日本大震災及び原発事故における「専門家・科学者と市民の信頼感の崩壊」という問題意識を元に、サイエンスメディアセンターでの研究成果を踏まえ、震災以降のクライシス時にどのような科学情報の提供が行われたかを明らかにした。また原発事故後一ヶ月程度の緊急時を経過したのち、被災地への帰還やエネルギー選択の決定のために、どのような科学情報提供のためのチャンネルが活用されているかを調査した。緊急時はtwitterのようなITを使ったソーシャルメディアが情報の拡散に大きな役割を果たした。一方、多様な情報提供のチャンネルが求められていることが明らかになってきた。
著者
児玉 耕太 仙石 愼太郎 荒戸 照世 難波 美帆
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度に引き続き、健康食品関連の米国関係者の訪問・インタビュー・視察調査に関して、研究協力者の一般社団法人 日本健康食品規格協会 池田先生からの紹介の紹介により、アメリカ健康食品の業界団体であるCouncil for Responsible NutritionのVice President, Science & International AffairsであるJames C Griffiths博士に9月に訪問し、インタビューを行った。合わせてボルチモアで開催されるNatural Products Expoにあわせて視察・調査を行った。また、延世大学校のKim, Tack Joong教授(http://web.yonsei.ac.kr/pharm/)とも、2017年8月に協働でワークショップを開催し、情報交換・交流を行なった。また、今まで取りまとめた成果について3月に日本MOT学会でポスター発表を行なった。2017年度は、班会議を2回開催した。2018年度は、最終年度であることから、国際シンポジウムを9月14日に北海道大学で開催する予定である。あわせて、本申請の計画にあるプロダクトデザインワークショップを2018/9/15-16で開催する企画を進めている。
著者
林 衛 難波 美帆 上田 昌文 島薗 進 鬼頭 秀一
巻号頁・発行日
pp.1-59, 2012-11-17

2011年3月に原発震災が始まってから1年半がすぎ,子ども・被災者支援法が成立したものの,被曝を避ける権利は十分に確立せず,低線量被曝問題では,がれき処理,食品「風評被害」問題など,混乱は収まる気配をみせていない。それどころか,「対立」や「分断」が深刻化している場面もみられる。また,エネルギー政策,脱原発をめぐる政策立案に向けたパブリック・コメントや意見聴取会が参加型民主主義の新しい試みとしてとりいれられたものの,その実施方法や広報に大きな課題を残している。そこで,研究者や政府,市民,メディアによる原発に関するリスクコミュニケーション,意思決定のための情報共有の分析事例を話題提供者が紹介し,対論者のコメントと会場とのやりとりによって,問題点の共有,掘り下げを実現する。情報共有のためには,どの事実に着目するかとともに,科学者といえども逃れられない(専門家ゆえに偏りがちな)バイアスの存在に気づく重要性が科学技術社会論の問題として浮かびあがる。そこで,オーガナイザ自身による問題提起・報告に続き,以下の報告,発言をお願いした。[報告]:難波美帆 参加型民主主義のための情報導線̶道はついたのか上田昌文 食品放射能汚染への対策はいかにあるべきか̶市民科学の実践から[コメント]:島薗 進 なぜ専門家は放射能健康影響を過小評価するのか?/佐倉 統 なぜ人は放射能を怖がるのか?/鬼頭秀一 中立的な立場を取ろうとする専門家がリスクコミュニケーションに失敗するのはどうしてか̶政策論的立場からの脱却の必要性と地を這う視点の獲得の必要性
著者
大久保 史佳 小笠原 太一 竹林 佐那 野㟢 祐未 吉川 幸雄 難波 美帆
出版者
学校法人 グロービス経営大学院大学
雑誌
グロービス経営大学院紀要 (ISSN:27584046)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-106, 2023-11-30 (Released:2023-12-05)

日本の国立公園では,法的に管理運営を強制することができない中,数多く存在する「ステークホルダー(所有者,事業者,関係当局,地域等)間の合意形成の難しさ」が共通の課題としてある.本研究では,自然を保全しながら国立公園の管理運営がうまくいっている尾瀬国立公園と複数の国立公園を比較し,ステークホルダーの合意形成の難しさという課題をいかに解決することができるかを明らかにしようとした. 尾瀬国立公園は,福島県,栃木県,群馬県及び新潟県の4県にまたがり,本州最大の高層湿原である尾瀬ヶ原(約760ha)を始めとした大小の湿地群(池塘)であり,日本の国立公園全34公園中19番目の広さを誇る. 調査の結果,尾瀬国立公園では,植生回復事業による湿原面積の回復や湿原保護のための木道敷設など自然の保護と人々の観光利用の促進に,民間企業が多大な貢献をしていることが明らかになった.一方,国立公園ごとに地域性や歴史といった特性の違いがあり,それによって生じる課題やステークホルダーの積極的な関わりに向けての動機付けの方法なども多種多様であるので,国立公園毎に適した体制づくりや運営方法が存在すると考えられる.