著者
矢野 博美 田原 英一 田中 祐子 村上 純滋 前田 ひろみ 伊藤 ゆい 吉永 亮 上田 晃三 土倉 潤一郎 井上 博喜 犬塚 央 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.99-106, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
10

54歳女性。左大腿ヘルニアが,整復不可能となり,外科で1ヵ月後に左大腿ヘルニア根治術を受けたが,イレウスのため入退院を2度繰り返した。小腸壁の浮腫はあるが,諸検査で器質的な閉塞機転を認めなかった。しかし腹痛が持続するため,当科に転科した。腹痛のために食事が摂れず47kg から37.5kg まで減少したので中心静脈栄養管理を行った。陣痛のような激しい腹痛により額に冷汗を認め,倦怠感のため臥床がちであった。皮膚は枯燥し,脈候は浮,大,弱,濇であった。腹候は腹力弱で,下腹部優位の腹直筋緊張を認め,腹壁から腸の蠕動が観察された。附子粳米湯で治療を開始したが無効で,腸管の蠕動が腹壁から見えることから大建中湯,皮膚枯燥と腹直筋の緊張を認めることから当帰建中湯の証があると考え,中建中湯加当帰に転方したところ,転方5日目から腹痛は消失した。大腿ヘルニア術後の偽性腸閉塞症に漢方治療が有効で試験開腹を免れた。
著者
大田 静香 前田 ひろみ 伊藤 ゆい 上田 晃三 吉村 彰人 土倉 潤一郎 岩永 淳 矢野 博美 犬塚 央 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.23-27, 2014 (Released:2014-07-22)
参考文献数
17

症例は68歳女性,当科受診の1年前に環状肉芽腫症を発症し,トラニラストで改善傾向にあった。しかし肝障害が出現し継続困難となり,皮疹が悪化したため漢方治療を試みることとなった。のぼせ,舌,皮疹の性状から熱候が示唆され,黄連解毒湯を開始し,改善傾向にあったが,入院3日目から治癒が横ばいになった。裏寒の存在を疑い,麻黄附子細辛湯の併用を開始したところ,開始5日目から急速に肉芽の縮小を認めた。臨床的に改善を認めたことより,陽証と陰証の併存があったと考える。
著者
赤田 尚史 柳澤 文孝 本山 玲美 川端 明子 上田 晃
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 : 日本雪氷協會雜誌 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.173-184, 2002-03-15
被引用文献数
9 4

冬季に,日本海側を中心に湿性降下物中に含まれる非海塩性硫酸イオン濃度が増加する現象が見られ,その原因として中国から冬季北西季節風によって硫黄化合物が輸送されてきていると言われている.その現象を明らかにするために,日本各地の湿性降下物に含まれる非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比を測定した.その結果,硫黄同位体比は各地とも夏に低く,冬に高いという季節変化を示した.しかし,冬季の高い硫黄同位体比に違いが見られた.そこで高層天気図を用いた流跡線解析と東アジア地域で産出・使用されている化石燃料の硫黄同位体比から硫黄同位体比の違いを検討した.中国では北部ほど高い同位体比を持った石炭が燃料として使用されていることから,冬季北日本には中国北部からロシア極東地域で排出された高い同位体比の石炭燃焼起源硫黄酸化物が輸送され,また西南日本には朝鮮半島付近から中国中部及び南部で排出されたものが混合して,同位体比が平均化されて輸送されてくることが推定できた.
著者
細川 和久 三宅 勝 小野 斉 佐藤 邦忠 上田 晃 田村 哲 金子 五十男
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.617-635, 1977-11-25
被引用文献数
1

1.北海道根室半島およびその近隣地域で,昭和39から50年度までの間,発毛不全を主徴とする先天性ウシ奇形,59例が観察された。2.奇形は,すべて4〜7月に受胎したウシの中から発生し,かつ,放置すると長期在胎になり,子ウシは分娩後生存不能であった。3.奇形は,肉眼的には発毛不全のほか,矮小肢,球節部の熊脚状,歯肉で被われた歯,下垂体の欠如あるいは形成不全,体格矮小,組織学的には,下垂体腺葉の形成不全,副腎における髄質の欠如と皮質三層の分化不明,および皮膚毛根の発育不全などの異常を呈していた。4.この奇形は放牧地に繁茂しているバイケイソソを妊娠牛が摂取したたために発生したものと疑われたので,4頭の妊娠初期のウシに乾燥したバイケイソウの茎および葉を14日間から74日間給与したが奇形は発生しなかった。