著者
奥田 和子 上田 隆蔵
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.p1007-1020, 1993-12
被引用文献数
5

白ワインはやわらかい肉や白身の魚肉に用いられ,赤ワインは硬い肉をやわらかくするために浸漬(マリネ)してその後加熱するために用いられる.しかし,両ワインの使いわけや調理特性についてはまだ科学的に解明されていない部分が多い.本研究では,両ワインの使いわけ理由を明らかにした.水,白ワインおよび赤ワインを用いて牛腿肉を浸漬および煮沸した場合の肉の重量,最大圧縮応力ならびに処理液のtotal phenol contentおよびsediment量を測定した.処理後の肉の重量は,赤ワイン,白ワイン,水の順で低くなり,逆に最大圧縮応力は高くなった.浸漬後煮沸した肉の最大圧縮応力は,浸漬なしで煮沸した後の肉のそれよりも相当低かった.赤ワインの組成に近似させたモデル実験の結果から,白ワインと赤ワイン処理における最大圧縮応力の差は,主に赤ワイン中のpolypheno1(おそらくtannin)によってもたらされていることを示した.柿しぶ液(tannin acidとして0.003%)含有白ワイン処理における最大圧縮応力は,赤ワイン処理と近似し,肉および処理液の着色や渋味も観察されなかった.