著者
近藤 滋 芳賀 永 秋山 正和 松本 健郎 上野 直人 松野 健治 武田 洋幸 井上 康博 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

28年度の総括班では、既に、班としてのシステムの構築がほぼ終わっているために、既存の共有装置の維持管理が主なものになる。2機の3Dプリンターは、全班員の研究に有効に使用されている。28年度に、総括班費で購入した機器は、顕微鏡用の共焦点レーザーユニット(北海道大学:999万円)と、ズーム顕微鏡(基礎生物学研究所:299万円、原子間力顕微鏡の一部として購入)である。いずれも、他の資金で購入したパーツと組み合わせることで、購入金額の節約をしている。両装置とも、3D形態の計測に必須であり、共同利用が進んでいる。班会議は北大で、5月23,24日に行った。理論系と実験系の交流を目的とする夏、冬の合宿は、9月4,5,6日と、3月28、29日に、淡路島、琵琶湖で行った。いずれも、学生の旅費の補助を総括班費から支出している。これまで、合宿は主に比較的少人数で行ってきたが、2016年度は、公募班員からの希望が多かったために、冬の合宿では会場を変えた。非常に活発な議論が行われたが、参加者が多くなりすぎたため、プロジェクトごとの議論の時間が逆に短くなり、やや、食いたりない面もあった。この点の解消が、今後の課題として残された。北海道大学の秋山は、定期的に、数学と3Dソフトの講習会を行っており、そのための実費(交通費、宿泊費)の支援を行った。その他、HPの更新に約30万円を支出している。
著者
近藤 滋 武田 洋幸 上野 直人 松野 健治 松本 健郎 芳賀 永 井上 康博 秋山 正和 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-11-06

主な活動は以下の4点である。1:7月10,11日にアメリカ合衆国カリフォルニア大学アーバイン校と合同で、3D形態形成に関するシンポジウムを開催し、同時に、今後の技術協力体制の拡大に関して話し合いを行った。アメリカ側の主催者であるKen Cho博士は分子発生学の世界的な権威であり、今後も、交流を続けることを確認した。2018年の本研究班の班会議にKen cho博士を招き特別講演をお願いすることが決まっている。また、上野研究室との共同研究も現在進行中である。2:河西通博士をHarvard Medical School のSean Megason研究室へ派遣し、ゼブラフィッシュ胚における組織の3次元構造の発生機構の研究を共同研究で行っている。これは前年度からの継続である。昨年度より、細胞レベルでの挙動を定量的に解析しており、特に、In toto imagingなどの観測技術を武田研究室に移植している。河西通博士の派遣は、2018年度で終了する予定。3:近藤班の3名が、前年に引き続き、コスタリカでツノゼミサンプルの採取を行った。今年度は、プロジェクトの目的がはっきりしており、特にヨツコブツノゼミの幼虫、ヨコツノツノゼミの幼虫、の2種に絞り、採集を行った。結果として、それぞれ70匹、200匹のサンプル採集に成功し、エタノール固定ののち、コスタリカ大学ポールハンソン教授の仲介で、日本に送付していただいている。今後の近藤班の研究は、このサンプルの解析が中心となる。4:近藤研究室の学生、松田佳祐を3D形態の計算で世界的に有名なプルシェミック研究室に約2か月滞在させ、原基の折り畳みソフトの高速化技術を学び、昨年作った展開ソフトを改良した。
著者
寺岡 宏樹 上野 直人 遠藤 大二
出版者
酪農学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)ツメガエルの約4万クローンのcDNAについてマクロアレイを行った。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p- dioxin(TCDD)は受精後27時間胚で1クローンの増加、5クローンの減少、7日胚で41クローンの増加、12日胚で14クローンの増加、42クローンの減少を起こした。しかし、cytochrome P450 1A(CYP1A6,7)を除いて、ノーザンブロット法で増減が一致したクローンを見つけることができなかった。2)ノーザンブロット法により、Ah受容体は受精後初日から既に弱いが発現し、7日で顕著な増加がみられた。AHRの発現はTCDD暴露で影響されなかったが、CYP1A6,7の他、CYP1Bでは顕著な誘導が受精後2日からTCDD濃度依存性に観察された。この他、Arntやグルタチオン転移酵素の発現はTCDDに影響されなかった。3)以上の結果から、初期発生においてTCDDであきらかな誘導を受けるCYP1AについてTCDD感受性の高いゼブラフィッシュで役割を検討した。モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(AHR2-MO)を用いて、ゼブラフィッシュで報告される二種のAh受容体の一つ(AHR2)の翻訳を阻止したところ、体幹の血流遅延・浮腫、下顎の成長阻害および中脳背側部の局所循環障害とアポトーシスなどこれまで知られている主なTCDD毒性が顕著に阻害された。AHR2-MOは毒性とともに、CYP1A誘導を阻害したので、CYP1Aに対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(CYP1A-MO)を処置したところ、上述のTCDDによる毒性が抑制された。4)最近、TCDDがヒト由来培養肝細胞で、炎症や各病態で誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ2(COX2)が誘導されることが報告された。COX2阻害剤は同時暴露した場合TCDDによる中脳静脈の血流遅延とアポトーシスを顕著に回復させた。COX2に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ処置は低濃度TCDDによる血流遅延とアポトーシスをほぼ完全に消失させた。48〜50hpf胚の頚動脈と思われる部分にCOX2 mRNAの強い発現が観察できた。TCDD処置はCOX2発現に全く影響しなかった。5)我々はこれまで、ソニックヘッジホッグ(shh)が下顎にも発現し、TCDD暴露により顕著に減少した。AHR2-MOはTCDDによるshh発現の低下と下顎の低形成を阻止した。TCDDは下顎原基のptc1と2の発現には影響を与えなかった。以上より、TCDDによる毒性発現機構にAHR2、CYP1A、COX2、Shhの各分子が関与することが示唆された。