著者
与那 正栄 室 増男 下敷領 光一 永田 晟
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.307-314, 1990-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

本研究は, 3つの静的筋力負荷強度を用いた筋力トレーニングによってEMG-RTへの影響を検討し, 反応時間短縮の機構を探ろうとしたものである.その結果は以下の通りである.(1) 最大筋力 (MVC) , 70%MVC, 50%MVCトレーニング群ともに最大筋力, 積分筋電図 (IEMG) , 平均パワー周波数 (MPF) は有意な増加を示し, EMG-RTは有意な短縮を示した.そして, トレーニング前では示されなかった最大筋力, IEMG, MPFとEMG-RTとの間の関係は, 筋力の増大に伴って負の相関関係が示された.(2) 70%MVC, MVCトレーニング群は, 50%MVCトレーニング群に比べて変化が大きかった.(3) 動作時間 (筋放電から張力の変曲点まで: motor time) は各トレーニング群ともに短縮を示したが, 70%MVC群は他の2群に比して短縮が大きかった.(4) 反応動作時の発揮張力とその筋放電量は各トレーニング群で増加を示し, 筋放電持続時間は短縮した.しかし, 50%MVCトレーニング群に比して70%MVC, MVCトレーニング群は大きく変化した.(5) 筋力トレーニングによる反応時間の短縮は, 神経性刺激の大きいトレーニング内容によって影響を受けた.そのことは筋力トレーニングによる筋出力系への影響で, 素早い反応に関与する系が刺激されたことによるものであることを示唆するものである.