著者
下村 登規夫 小谷 和彦 村上 文代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.391-396, 2002-06-10

片頭痛患者においてはmagnetic resonance spectroscopy(MRS)による検討で,脳内の好気的代謝に障害が存在する可能性が指摘されるようになっている。また,ミトコンドリア酵素の活性低下も認められ,ミトコンドリア遺伝子異常の報告も加わり,ミトコンドリア機能異常が片頭痛患者に存在する可能性が指摘されるようになってきた。これらのミトコンドリア機能異常のみならず片頭痛患者においては,superoxide dismutaseの低下などのように後天的にもミトコンドリア機能障害をきたす可能性が存在することが指摘されている。また,治療面ではミトコンドリア機能を改善するような治療を行うことにより頭痛発作の軽減が認められている。これらのことは片頭痛が全身的ミトコンドリア機能障害を伴っていることを示唆するものであり,今後の治療薬の開発にも関わるものである。
著者
下村 登規夫 古和 久典 高橋 和郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.8-13, 1993
被引用文献数
3

頭痛は一般の外来診療で多く認められる訴えの一つである.しかし,日本においてはその実態はほとんど把握されていないが,日常診療において,頭痛の疫学的特徴を知っておくことは重要であると考えられる.片頭痛,緊張型頭痛は機能性頭痛の中でも頻度の高いものであり,片頭痛は若年から壮年にかけての女性に多く,緊張型頭痛は中年以後に多く認められる.群発頭痛は中年の男性に認められることが多い.片頭痛は40%以上に家族歴が認められているが,緊張型頭痛でも30%程度の家族歴があり,緊張型頭痛の発症に関してもある種の素因が関与している可能性が示唆される.