著者
高橋 和郎 北川 達也
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.256-262, 1976
被引用文献数
1

最近多発した浮腫を伴う急性多発性神経炎25例につき,発生頻度ならびに成因について検討した.年次別にみると昭和48年以後年ごとに多発する傾向があり,春から初秋にかけて発症することが多く,とくに若年男性に多い.食事は全例白米食で,強化米はなく,インスタント食品の多食,高糖質,低VB<sub>1</sub>の清凉飲料水の多飲が目立つた.又発症時激しい運動をしているものが多かつた.詳細に検討した2症例において血中B<sub>1</sub>濃度はやや低値,乳酸,ピルビン酸濃度はやや高値,平日ならびにB<sub>1</sub>負荷時の尿中B<sub>1</sub>排泄量は明らかな低値を示した.さらにB<sub>1</sub>投与が特異的に症状改善をもたらす所などから,本症が脚気neuropathyであることを明らかにした.末梢神経は軸索変性を示し,とくに初期には特異な管状構造物が軸索内に多数出現した.有髄線維に比し,無髄線維の変化は軽度であつた.最近脚気が増加し始めたことは,本邦栄養食品に何らかの欠陥が生じ始めたことを示すものである.
著者
高橋 和郎 田中 和子 西川 清方 米本 哲人
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1140-1152, 1975
被引用文献数
1

8例の特異な急性多発性神経炎について臨床的ならびに末梢神経の電顕的検討を行なつた.これらの症例は下肢の著しい浮腫,疼痛をもつて始まり,上行性の運動麻痺,駆幹あるいは四肢末端の知覚障害,深部反射の低下をみる.麻痺は顔面神経に及ぶことがあり,一般に四肢末端に強い。知覚障害は比較的軽い.発症は急性あるいは亜急性で時に寛解,増悪を示し,しばしば,発熱,白血球減少,血沈促進, CRP陽性, A/G比低下など感染,アレルギーを思わせる所見を有する.同時に著しい心拡大,心雑音,時に心電図異常を認める.心臓症状は多発性神経炎の回復に先立つて軽快する.神経症状はGuil1ain-Barré症候群に類似するが,脳脊髄液は細胞数増加を示すことが多いが蛋白量は正常である。末梢神経は軸索,髄鞘共に著しい障害を示し,軸索再生,髄鞘再生の像がみられ,障害は有髄線維に著しい.再生した細い無髄線維の著しい増加がみられる.筋は軽度の血管周囲性リンパ球浸潤を示すものがあるが,筋炎という程の所見ではなく,一般に神経原性萎縮を示す.いずれも男性で1973年から1974年にかけて発症し,近年多発する傾向がある.脚気にも類似するが,要因と思われるものが見出し難く,かつしばしば感染,アレルギーを思わせる所見を有する.
著者
下村 登規夫 古和 久典 高橋 和郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.8-13, 1993
被引用文献数
3

頭痛は一般の外来診療で多く認められる訴えの一つである.しかし,日本においてはその実態はほとんど把握されていないが,日常診療において,頭痛の疫学的特徴を知っておくことは重要であると考えられる.片頭痛,緊張型頭痛は機能性頭痛の中でも頻度の高いものであり,片頭痛は若年から壮年にかけての女性に多く,緊張型頭痛は中年以後に多く認められる.群発頭痛は中年の男性に認められることが多い.片頭痛は40%以上に家族歴が認められているが,緊張型頭痛でも30%程度の家族歴があり,緊張型頭痛の発症に関してもある種の素因が関与している可能性が示唆される.
著者
島雄 満子 高橋 和郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.411-417, 1977-12-05 (Released:2009-11-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

過去の疾患と考えられており, 現在では稀とされている脚気の多発を報告し, その食生活を調査した結果から, 日本人の近時の食生活にいろいろの問題のある層があることを, 指摘した。そして現代の食生活について, 多方面からの再検討と, 栄養指導の必要性を考える。
著者
高橋 和郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.219-221, 1992-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

ニューロパシー,特にビタミン欠乏性ニューロパシーのビタミン補給療法の問題について述べた.ビタミンA, Dなどの脂溶性ビタミンについては従来より,その副作用が問題となっているが,最近ではビタミンB6過剰でニューロパシーがみられるなど,過剰投与による副作用が問題となっている.従って,補給療法にはむやみに大量,長期に行わないことに注意すべきである.
著者
生田 和良 作道 章一 中屋 隆明 高橋 和郎 纐纈 律子 奥野 良信 纐纈 律子 渡邉 洋平 佐々木 正大
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

H5N1亜型高病原性トリインフルエンザウイルス(HPAIV H5N1)は、一部の地域において致死率の高いヒト感染例が散発的に確認され、ヒトに対してパンデミックとなる懸念が指摘されている。エジプトは現在、世界的にも多くのHPAIV感染者を出している流行国の1つである。本研究においては、エジプトで飼育されている家禽からHPAIV分離を試み、得られた遺伝子配列から分子疫学調査を実施した。その結果、エジプトにHPAIVが初めて導入された2006年に比べて、2008-09年のウイルスはヒトに感染しやすいと考えられるα2,6 SA糖鎖親和性を獲得していた。