著者
草野 正一 小林 剛 松林 隆 石井 公道 柴田 久雄 木戸 義行 大宮 東生 中 英男 佐々木 憲一 奥平 雅彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.299-312, 1978
被引用文献数
1

Computed Tomographyが肝疾患の新たな放射線学的検査法として登場し,その臨床応用の成果が注目されている.北里大学病院でも昭和51年9月から全身用CTの臨床応用を開始した.そこで,肝のCT診断を進める上で不可欠な肝横断正常解剖についてX線解剖学的検討を試み,肝門に連続する左矢状裂,右前裂および右後裂の特徴的構造が,肝腫瘤性病変の区域診断の指標として役立つ事を確認した.この事は,実際の肝切除例でも確認でき,新たな検査法として登場したCTが果した画期的成果と言える.次にCTによる肝悪性腫瘍診断の有用性について検討した結果,我々の使用装置,ACTA 0100,は,肝癌のスクリーニング検査法としては,RI肝スキャンより劣っていた.この原因は,装置の解像力が低かった事も原因の1つであるが,肝細胞癌の診断が困難であったためであった.この肝細胞癌の中で,形態学的に描出可能と考えられるものが,造影スキャンでも描出できなかった理由として,肝が血行動態的に肝動脈と門脈の2重支配を受け,かつ,肝細胞癌が肝動脈のみによって栄養されるhypervascular tumorである事に基因する事を推論した.
著者
浅利 靖 島津 盛一 西村 博行 新井 伸康 中 英男 大和田 隆 比企 能樹 柿田 章
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.2461-2465, 1991-09-01
被引用文献数
9

中年の男性に発生した巨大な膵のsolid and cystic tumor(SCT)を経験し,その臨床経過よりdoubling timeを算出した.また本邦報告例139例について検討した.症例は58歳男性.腹部腫瘤を主訴に入院.開腹したところ,膵体部に被膜におおわれ充実性かつ弾性軟の,24×19×8cmの腫瘤が存在し,膵体尾部脾合併切除施行.病理組織学的に,充実性で髄様増殖パターンを呈し,免疫染色では上皮系マーカーに陽性でありSCTの診断を得た.4年前の初診時の腫瘍径と今回術前の精査時の腫瘍径とからdoubling timeを算出したところ,240日とslow growingな腫瘍に分類されることを証明しえた.本邦報告例139例について検討したところ,本例は男性例としては最年長かつ最大の腫瘍径を持つものであった.術後1年経過した現在,患者は健在であり,再発も認められていない.