著者
中原 泉 加藤 譲治
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.61-75, 1995-12-25
参考文献数
25

かつて死病と恐れられ猛威をふるいながら,いつのまにか成書から消えていった疾病は少なくない.口腔外科の難病であったnoma (水癌)も,その一つである.水癌とは,小児の口腔粘膜に現れる進行性の壊疽性口内炎の一臨床型,と定義される.水癌の原因は定まっていないが,要するに機械的化学的刺激のため,組織抵抗が減弱した部に細菌が感染して発症する.治療法は往時,局所的に病巣を切除・焼灼し,清潔安静と滋養強壮を保つ他なく,予後不良で死亡率は70〜95%に及んだ.この魔の疾患は,栄養状態の改善,予防接種の普及,抗生物質の普遍により,昭和30年(1955)以降激減し,古典的疾患へと衰退した.

7 0 0 0 仏陀の歯相

著者
中原 泉
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.195-201, 1996-10-11
被引用文献数
2

仏教の開祖である仏陀(ゴータマ・ブッダ)は,40歯相の持ち主であったという.果して,この40本の歯はどのように生えていたのだろうか.約2500年前に生きた仏陀の伝承に依拠して,現代の口腔解剖学から,40歯の植立状態を類推した.口腔解剖学の原則から,プラス8本の永久歯は,すべて正常数を越えて形成された過剰歯であると定義する.現代日本人における過剰歯の出現傾向と出現頻度からみて,上下顎の左右側の第1切歯4本,上下顎の左右側の第4大臼歯4本,計8本が正常形の過剰歯として歯列内に生えた,と結論した.これらの過剰歯の成因については諸説あるが,復古現象による祖先がえりとみるのが,もっとも合理的であると考える.
著者
中原泉著
出版者
学建書院
巻号頁・発行日
1996

1 0 0 0 歯の人類学

著者
中原泉著
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
2003
著者
中原 泉
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.62-70, 1993-02-25

解体新書の扉絵は,いずれの西洋解剖書の図柄を模写したのか?それは長年,解体新書の残されたナゾとされてきた.その元絵はかねて,16世紀のスペインの解剖学者Valverdeの解剖書の扉絵に酷似していると指摘されていた.そこで筆者は,Valverde解剖書と解体新書の両扉絵を比較検討し,向かいあって立つアダムとイヴ像が,絵師の小田野直武によって敷写(透写)されたものであることを立証した.これによって,杉田玄白らがValverde解剖書を利用していたにも拘らず,解体新書の凡例に参考書として掲げなかった理由を明らかにした.